<第1セクション:台南の歴史とともに歩んできた「虱目魚(サッバッヒィ)」>
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リスナーの皆さん、こんばんは。台湾は四方を海に囲まれており、海沿いの地域のみならず、平地や水源が豊富な南部(台南、高雄、屏東など)を中心に淡水・海水ともに魚の養殖が盛んである。また、養殖は台湾漁業の約3~4割を占め、経済的にも重要なセクターとなっている。スーパーの鮮魚コーナーにも様々な種類の魚が並んでいる。その中でも台湾人の食卓で特に愛され続けているミルクフィッシュ(虱目魚/サッバッヒィ)、ティラピア(吳郭魚)、ハタ類(石斑魚)の三大養殖魚を中心に本日は紹介していきたい。
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ミルクフィッシュは台湾語で「虱目魚(サッバッヒィ)」と言い、台湾庶民にとっては、特に台南一帯ではソウルフードの一つ「虱目魚粥(ミルクフィッシュ粥)」として、最も馴染み深い養殖魚である。台湾のほか、フィリピンやインドネシアなど東南アジアでも広く養殖されているが、成長が早く、病気に強く、塩分濃度の変化に耐性があるため、養殖に適した魚である。身が白くて柔らかく、ミルキーな味わいがあるということからミルクフィッシュと呼ばれるようになった。漁獲量も多く安定していて、お財布に優しい魚なので、消費者の心強い味方となっている。
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台湾のミルクフィッシュの養殖の歴史は、17世紀のオランダ統治時代の台南まで遡る。台南一帯の湿地・潟湖地帯では、オランダ人が干拓を進め、塩田や魚と塩田併設の養魚池を整備した。ここにミルクフィッシュが自然に入り込み、捕獲・半養殖されていた可能性が複数の学者から指摘されており、ミルクフィッシュ養殖のルーツもこの時期にさかのぼると推察されている。
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清朝に入ると、台湾南部、特に台南の「學甲」「將軍」「七股」などの地域で本格的にミルクフィッシュの池養殖が定着する。日本統治時代には、養殖の管理技術や流通の近代化が進むが、ミルクフィッシュ自体は日本の本土ではあまり人気がなく、主に台湾内需向けであった。1960年代以降、台湾の水産業の成長とともにミルクフィッシュ養殖も拡大。近年ではフィレ加工技術や骨抜き製品の進歩により、若者や海外市場にもアピールが始まっている。
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ミルクフィッシュは、水深の浅い池で塩分濃度を調整しながら養殖されている。餌は藻類やパンくず、発酵飼料など。成魚まで約1年かけて育て、全長30〜50cm、重さ1kg前後になる。副産物として、魚の浮袋や魚腸なども利用されている。
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ミルクフィッシュは、腹身の黒い膜がビジュアル的に嫌いだとか、泥臭さを感じて苦手だという人も一定数いる。私も当初はさほど美味しいとは思わなかったのだが、食べ慣れていくうちに、独特の旨味や背側の淡白な味わいも、脂の乗った濃厚な腹身も、だんだんと美味しく感じられるようになった。今ではミルクフィッシュ料理を月に1〜2回は堪能している。台湾で見られる主なミルクフィッシュ料理は次のとおり。
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虱目魚肚粥(腹身粥)。骨の少ない腹身を使ったおかゆ。旨味たっぷりで人気。虱目魚湯(スープ)。生姜と葱を効かせたあっさりスープ。台南の朝食の定番。香煎虱目魚肚(焼き)。フライパンで開きをじっくり焼いたもの。炸虱目魚柳(フィレフライ)。骨を抜いた身を揚げたもので、若者にも人気。虱目魚丸湯(魚団子スープ)すり身を団子にしたもの。滑らかで風味豊か。魚腸/魚肚料理。ミルクフィッシュの腸や浮袋の煮込み。酒のつまみにも。
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台南市では「虱目魚文化節(ミルクフィッシュ文化フェスティバル)」なども開かれ、地域のアイデンティティとしてPR。地元の小中学校では、『虱目魚與我們的家鄉(ミルクフィッシュと私たちの故郷)』と題して、郷土史や生態系教育、食育の様々な側面から、ミルクフィッシュを題材にした教材も使われている。また、最近では「ミルクフィッシュラーメン」や「バーガー」「ピザ」など新ジャンル料理も登場し、新たなムーブメントも起こっている。
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ではここで、蕭煌奇(リッキー・シャオ)さんが、2011年にリリースし、翌年金曲奨最優秀台湾語アルバム賞を受賞した『思念會驚(su-liām ē kiann/恋しくて不安になる)』の中の1曲『阿爸的虱目魚(a-pah ê sat-ba̍k-hî/父さんのミルクフィッシュ)』をお聴きいただきたい。蕭煌奇さんは先天的に目が不自由ながら柔道二段の黒帯で、アトランタ・パラリンピックでは7位に入賞している実力者だ。歌手に転身後は華語と台湾語の両方でコンスタントにアルバムをリリースしており、金曲奨の常連で、デビュー作の『你是我的眼(君はぼくの眼)』は大ヒットし、多くの台湾の人々のカラオケの十八番となった。蕭さんとは、私も10年ほど前に2回ほどステージをご一緒させていただく機会があったが、柔道家らしく気骨があるナイスガイだった。
<第2セクション:「台湾鯛」の商標で人気の「呉郭魚(ティラピア)」>
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さて、続いてご紹介するのは、「呉郭魚/Gô-kok-hî」と呼ばれているティラピアだ。台湾では「台湾鯛」の名前で、日本でも「イズミダイ」「チカダイ」などの名前で流通していたことがあるが、淡水や汽水域に生息するアフリカ原産のカワスズメ科の魚で、マダイやクロダイなどタイ科の海水魚とは種類が異なる。しかしながら、台湾の食堂や弁当屋で「鯛魚」と書いてあれば、ほぼこの「呉郭魚」、ティラピアであると言い切って間違いない。確かに旨みがあって淡白な白身魚であり、切り身を見ただけでは、タイとティラピアの区別はつきにくい。
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ティラピアが台湾で「呉郭魚」と呼ばれるようになったのは、台湾の農業試験所や地方政府の『台灣養殖漁業發展史』などの水産史資料や第二次大戦の復員兵の口述記録によると、郭姓と呉姓の人物が、戦前南洋では広く養殖されていたティラピアを戦後に台湾に持ち帰り、台湾南部に導入・養殖したことを記念してというのが定説となっている。戦後最初に持ち込まれたのは、モザンビークティラピアだったと言われている。
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ティラピアは、成長が早く、病気に強い上、雑食性であること、塩分濃度の変化にも強く、繁殖力が非常に高いことから、1950年代に入ると、各地の池や用水路で爆発的に繁殖した。1970年代には、中国、タイ、フィリピンなど他の産地と競う中で、台湾では台湾種ティラピアの品種改良が行われ、味・形ともに向上。米国・日本・中東などへ「イズミダイ」などの商標で冷凍フィレの輸出も始まった。また、安価で栄養価が高いことから、庶民の味として台湾の食卓でもすっかり定着し、ティラピアはミルクフィッシュと並び、台湾の養殖業の両輪といえる存在となっている。
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台湾のティラピアは、トウモロコシ・大豆・パンくず・魚粉など比較て安価な配合飼料を使い、淡水の池、水路、ビニールハウス水槽など(近年は閉鎖循環型も)で養殖されている。約6〜8か月という比較的短期間で商品サイズ(500g〜1kg)に達することから、かなり生産効率の良い養殖魚である。
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その料理方法ですが、台湾では、「紅燒呉郭魚(しょうゆ煮付け)」、「酥炸呉郭魚(唐揚げ)」、「鹽烤呉郭魚(塩焼き)」、「呉郭魚湯(生姜入りスープ)」、「香煎呉郭魚排(ティラピアフィレ焼き)」などで食べられることが多いが、2年ほど前に高雄の美濃で循環型の養殖池に併設されたレストランで食べたティアラピアの「塩釜(丸ごとの魚を塩と卵白で全体を包み蒸し焼きにする料理)」は、身はふっくらとし、旨みが凝縮されていて本当に絶品だった。
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ではここで、2017に大ヒットしたTVドラマ『花甲男孩轉大人(邦題:お花畑から来た少年)』の主題歌『魚仔(hî-á/さかな)』をOA。このドラマで主演を果たし、金鐘奨の新人賞と最優秀主演男優賞も獲得したシンガーソングライターの盧廣仲(クラウド・ルー)さんが歌った名曲。
<第3セクション:輸出魚の主力:高級魚「石斑魚(タマカイ、龍虎ハタ)」>
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台湾で次に養殖の主力となっている魚が「石斑魚」と呼ばれるハタ類の魚である。ハタ科で最大2mにも達する「龍膽石斑(タマカイ)」や「點帶石斑(ヤイトハタ)」、アカマダラハタとタマカイの交雑種である「龍虎斑(龍虎ハタ)」が主な養殖種となっている。これらの品種は、成長が早く、肉質が良いため、養殖に適しており、近年では、特に龍虎ハタの養殖が増加。高級魚であるハタは、台湾では輸出額の上位を占めている。2023年のデータでは、2万トン以上の生産量があり、76.1億台湾ドルの売り上げ(国内向け、輸出合計)に達している。
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石斑魚の主な養殖地域は、屏東県、高雄市、台南市などの南部沿岸地域。これらの地域は、温暖な気候と豊富な水資源に恵まれており、養殖に適した環境が整っている。養殖面積は、2008年の約1,566ヘクタールから2012年には約2,312ヘクタールに拡大。しかし、近年では寒波や高温などの気候変動や市場の変化により、養殖面積の維持や拡大に課題が生じている。
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例えば市場についていえば、かつて台湾の石斑魚(ハタ類)は主に中国市場向けに輸出されており、ピーク時には輸出量の約90%を占めていた。しかし、2022年6月に中国が台湾産の養殖ハタ類の輸入を禁止したことにより、輸出量が激減した。この状況を受けて、台湾の政府と業界は新たな輸出先の開拓に取り組み、日本市場への進出が進められた結果、2024年10月には、台湾産の「龍虎ハタ」が日本への輸出許可を取得し、2025年2月には初めて日本への出荷が行われた。これにより、台湾産ハタ類の市場の多様化が進みつつある。
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市場多様化のほか、台湾の政府は以下の対策を講じている。養殖技術の向上:水質管理や疾病予防の技術を強化。加工品の開発:冷凍フィレや加工食品の開発により、製品の付加価値の向上。ハタ類の養殖業は、台湾の水産業において重要な位置を占めている。今後も、持続可能な養殖と市場の多様化を進めることで、さらなる発展が期待されている。
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最後に台湾でよくお目にかかるハタ類の料理についても触れておこう。まずは、お祝いの宴会料理の王道、「清蒸石斑(ハタの姿蒸し)」。最も一般的かつ伝統的な調理法で、魚を丸ごと一尾、ねぎ・生姜とともに蒸して、上から醤油ベースのたれをかける。魚本来の甘みと柔らかい身を活かす調理法で、台湾では一番好まれる調理法だと思う。続いて「三杯石斑魚(ハタの台湾風土鍋煮込み)」。「三杯」は、ごま油・醤油・米酒を同量ずつ使う台湾定番の味付け。「九層塔(台湾バジル)」を加え、香ばしく煮込む料理。石斑の切り身を使って土鍋などで提供されることが多い。
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台湾の養殖魚としては、このほかにも「鱸魚(スズキ)」や「鰻魚(ウナギ)」、「香魚(アユ)」、「海鱺(スギ)」なども挙げられる。これらの魚たちについては、機会があれば、いずれまたお話したい。本日は、2019年にリリースされた李善霓(リー・シャンニー)さんのシングル曲で『魚仔的夢(hî-á ê bāng/魚の夢)』をお聴きいただきながらお別れ。
Rti 台湾国際放送
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