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ようこそT-roomへ - 2020-10-07_台湾の人々のナショナル・アイデンティティについて

  • 07 October, 2020

 私が台湾にやってきてまもなく15年になりますが、外国人の私の目から見て、この15年間の大きな変化の一つといえるのが、台湾の人々、特に若い世代のナショナル・アイデンティティの変化です。ナショナル・アイデンティティという言葉は、いろいろな解釈がありますが、ここでは自国に対する意識という意味で使いたいと思います。シンプルにいいますと、いわゆる「台湾」意識、台湾アイデンティティの高まりです。

 本日は、財団法人「台湾シンクタンク」と、大手紙聯合報によるアンケート調査をもとに、台湾の人々のナショナル・アイデンティティや、意識せざるをえない中国大陸に対する見方などについて、ご紹介していきたいと思います。

 まずは、先月の24日に「台湾シンクタンク」が発表した、「国家正常化推進」に関するアンケート調査の結果についてご紹介しましょう。この「台湾シンクタンク」は、与党・民進党に立場が近く、台湾主体の考えをもつ団体であることも考慮する必要はありますが、近年の台湾アイデンティティーの高まり、定着ぶりが裏付けられる結果となりました。

 まずは、ナショナル・アイデンティティについて、全体の62.6%が「自分は台湾人」だと答えました。一方、「自分は中国人」だと答えた人はわずか2%でした。そして32.6%の人は「いずれでもある」と答えました。

 また、仮に「台湾人」と「中国人」の二者択一をしなければならないとしたらどちらを選ぶかという問いに対しては、86%の人が「台湾人」と答え、「中国人」と答えた人はわずか6.3%でした。

 この結果について「台湾シンクタンク」の董思齋(とう・しさい)副執行長は、台湾では三度の政権交代を経て、ナショナル・アイデンティティが固まりつつある。つまり、台湾アイデンティティーが国民のコンセンサスを得ているということだ、と指摘しました。

 また、国際的な組織、活動へ参与する際、どのような名称で参加すべきか、という問いに対しては、51.2%が「台湾」、33%が「中華民国」、そして9.7%が「中華台北」つまり「チャイニーズタイペイ」と答えました。また、「台澎金馬個別関税領域(通称TPKM)」と答えた人も2%いました。台澎金馬というのは台湾のほか、離島の澎湖、金門、馬祖の頭文字をとったもので、WTO(世界貿易機関)にはこの「TPKM」の名称で参加しています。なお、中国大陸が度々、意図的に使う「中国台北」という名称を選んだ人は0.6%でした。

 この結果について、董・副執行長は、台湾内において、台湾アイデンティティーがコンセンサスを得ているのと同時に、対外的、国際社会においても多くの人が「台湾」として認められたいと考えている、と指摘しました。

 ただ、「台湾」名義か、「中華民国」名義かという選択は、自身が「台湾人」か「中国人」かという設問ほど、開きはありませんね。

 続いては、海外の敵対勢力及び安全保障に関する議題です。我が国にとって、海外の敵対勢力はどの国・地域かという問いに、63.8%の人が中国大陸と答えました。2番目は大きく差が開いてアメリカで6.1%でした。続いて韓国が0.8%、日本が0.3%、北朝鮮が0.2%でした。なお、意見なしも28.2%いました。

 「台湾シンクタンク」は、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなど民主主義の先進国では、専制的な国・地域による干渉を排除しなければいけないという立場で一致していると指摘、その上で、我が国も同様に、敵対勢力によるハイテク情報通信産業の発展への干渉を排除することを憲法に加えることを支持するか、と問いました。

 これに対し、38.7%の人は強く支持する。30.5%はまあ支持すると答え、支持は7割近くに達しました。一方で、あまり支持しないは9.8%、全く支持できないは5.9%でした。

 「台湾シンクタンク」の董・副執行長は、これから5Gの時代を迎えるにあたって、インターネットのアクセス権は、国民の能力引き上げ、国家発展推進の重要事項であると指摘、国際社会も、デジタルインフラ建設の安全性を国家の安全保障の重要な一環とみなしている、と述べました。そして、蔡英文・総統も、5月20日の中華民国総統就任式典で、台湾は自らを保護し、また世界に信頼される情報セキュリティ産業のサプライチェーンを構築する、と述べたと強調、憲法改正あるいは、関連の条文を憲法に加えて、国策とするべきだ、と訴えました。

 また、私立東呉大学法律学部の胡博硯(こ・はくげん)教授は、台湾アイデンティティは、10年前、20年前に比べて大きく高まっている。しかし、現行の憲法においては、その定義がなされていないと指摘、台湾の国際社会参与へのニーズ、海外の敵対勢力による武力統一の脅威などを考慮し、憲法を改正するべきだと訴えました。

 さて、「台湾シンクタンク」の調査結果では、台湾アイデンティティの高まり、中国大陸への警戒感がはっきりとみえた中、大手紙聯合報の調査は興味深い結果となっています。聯合報は、中国大陸とは対立よりも融和路線といえますが、ご紹介しましょう。

 聯合報では長年に渡って、中国大陸の当局、そして中国大陸の人々に関する印象を聞く「台湾海峡両岸関係年度大調査」を行っています。今年の結果が9月28日に発表されました。

 まず、中国大陸当局に対する印象について、「よくない」と答えた人は、昨年の61%からさらに5ポイント増え、調査開始以来最高の66%となりました。また「よい」と答えた人は、過去最低の21%となりました。

 人々が、マイナスイメージを抱く理由は、専制的、集権的というものが26%、強権的な姿勢が19%でした。   

 一方、中国大陸の人々に対する印象について、「よい」と答えた人は、昨年の53%から7ポイント増え、過去最高の60%に、「よくない」と答えた人は25%と過去最低となりました。つまり、当局に対する印象は悪化した一方で、中国大陸の人々に対する印象は改善したわけです。

 この一年、両岸間において、具体的に中国大陸の人々のイメージを改善させる決め手となる出来事があったようには思えませんが、聯合報のスタンスを差し引いても、「当局と一般の人たちは別」という考える人が少なくないということがいえます。これは、台湾の人々の一種のバランス感覚といえるかもしれません。

 台湾アイデンティティが定着する中、中国大陸の脅威も高まっており、蔡英文・総統は非常に難しい舵取りが求められます。両岸問題は、双方のみならず、アメリカや日本の役割も大きいといえるかもしれません。

 

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