文化部は先ごろ、今年(2021年)の「國家工藝成就獎(国家工芸功労賞)」を発表しました。
この「國家工藝成就獎」とは、長年に渡り、工芸技術において絶え間ない努力をし、かつ卓越した業績と貢献をした人に敬意を表するために授与するものです。
これまで30年以上に渡って工芸分野に携わり、積極的に工芸品の創作に取り組み、工芸品の材質や技法を深く研究し、工芸品の技術を伝承し、人材育成に取り組み、工芸文化の交流や推進、普及に多大な貢献をした人を表彰しています。
15回目となる今年(2021年)の「國家工藝成就獎」に選ばれたのは、廟の装飾「剪黏」の職人、陳三火さん。
今年は合計21名のベテラン職人たちが業者からの推薦や自薦によって集まり、その中から審査委員会による審査が行われました。
この「剪黏」とは、台湾に伝わってきて既に400年以上の歴史をもつ伝統工芸で、彩も鮮やかな陶器を必要な形に刻み、作品の表面に一つ一つ丁寧に貼って、建築物に花や蝶などの装飾を作り出す、廟の屋根などにみられる装飾です。「剪(切って)」、「黏(貼る)」という製作過程から「剪黏」と呼ばれています。
その「剪黏」作品を台湾各地の伝統的な廟で製作している陳三火さん。
台湾には「囝仔人尻川三斗火(子どものお尻には三つの炎がある。子供は寒さを恐れないという意味)」という諺があり、中国には「新官上任三把火(新任の役人は3本のたいまつを燃やすほどのエネルギーがある。着任早々の役人は改革に熱心という意味)」という格言があって、どちらにも、“三”と“火”という字が入っています。
陳三火さんの名前を見ると、大きく燃え盛る炎を思い浮かべずにはいられず、彼は“火”に関わる仕事をすることが宿命づけられているかのように思えます。
「火師」と呼ばれる陳三火さん。性格は非常に明るく、名前についての話題になると、「昔は父親が何でこんな名前を付けたのかと文句を言っていたが、後にこれは運命で、この『剪黏』で食べていくんだと思った」と語っています。
1949年、台湾南部・台南の麻豆の職人の家に生まれた陳三火さん。父親は、絵の職人で、子供にそれぞれ違った伝統工芸に従事してもらおうと考え、陳三火さんは、元々は木彫りを学んでいました。
あるとき、陳三火さんは父親が廟で塗装作業をするのに付き添い、装飾用のガラスを切るのを手伝ったりしました。その時、兄の師匠がガラスを切っているのを見て、その職人技のすばらしさに魅了されました。それ以来、「剪黏」との縁が生まれました。
陳三火さんは中学を卒業後、兄の後を追って廟の「剪黏」芸術を学び、洪坤福一派の4代目となりました。
*****
職人としてデビューしてからは陳三火さんは、100以上の廟の建設に携わっていて、例えば、台湾中部・台中市豊原にある「豐原慈濟宮」や、台湾南部・台南市にある「台南玉皇宮」、台中市大甲にある「大甲鎮瀾宮」、台湾中南部・雲林県にある「北港朝天宮」、台南市麻豆にある「麻豆三元宮」、そして今年(2021年)に作品が完成する台南市新営の「新營真武殿」など、台湾全土で彼の精巧な「剪黏」作品を見ることができます。
ただ、陳三火さんは、かつては新しい廟がどんどん建設されていて、また古い廟の修復もあり、仕事を受けきれないほどだった。しかし、80年代に入ると廟の建設は飽和状態となると、時間と労力を必要とする「剪黏」に変わって、安価で簡単で壊れにくい素材の装飾が台頭してきたと振り返ります。「以前は見積もりが高めでも廟は私を探してきた。しかし、その安価で壊れにくい素材の装飾が台頭し、「剪黏」は稼げなくなり、斜陽産業になってしまった。一度は陶磁器の『交趾陶』製作に転身しようかともかんがえたが、これまで培ってきた技術を手放すことは難しく、様々な葛藤があった」と語っています。
そして2002年に、台湾で1999年に発生した921地震によって損壊した「豐原慈濟宮」の修復を行った際、割れた花瓶を見てふとこれから「剪黏」を作ろうと考え、最初のダルマの作品を作りました。それ以来、廃棄された陶器の欠片を素材として、独自の工芸作品を製作しています。
伝統的な「剪黏」は、色鮮やかな磁器をカットした後、漆喰に張り付け、必要な形にトリミングしていくのですが、工芸センターによると、陳三火さんは、“切る代わりに叩く”技法で、独創性と、環境にやさしい技術を生み出し、古い花瓶や、酒瓶、陶器の鍋などの器が自然に壊れたあとの破片を素材として使用するなど、伝統的な「剪黏」に新たな道を開きました。
そして2007年には、國立臺灣工藝研究發展中心(国立台湾工芸研究発展センター)が主催する、台湾の優れた工芸家の認定制度である「台灣工藝之家(台湾工芸の家)」に認定され、2015年には台南市より「藝術貢獻終身成就獎(芸術貢献終身功労賞)」を受賞。2016年には「第22屆全球中華藝術薪傳獎(第22回 世界中華芸術遺産賞)」を受賞、そして2020年には文化部が「剪黏」を「重要伝統工芸」に認定し、その保存者として、陳三火さんが国家伝統工芸初の「剪黏」の「人間国宝」となりました。
現在も現役で制作活動をされている陳三火さん。廟を訪れたらぜひその作品をじっくりとご覧になってみてくださいね。
Rti 台湾国際放送
Rti 台湾国際放送 
