昨年(2020年)末、台湾のあるドキュメンタリー映画が、日本の東洋大学が主催する「観光短編映画祭」で「最優秀作品賞」を獲得しました。
この「東洋大学観光短編映画祭」は、東洋大学がイタリアのベネチア大学と協力し開催した初の「観光短編映画祭」で、いま地球上にある自然、人、生活、食、アート、建築、スポーツ、そしてゴミなどさまざまなものや事象について、独創的なアプローチで映し出した映像作品を広く国内外から募り、インターナショナル・コンペティションを開催。「持続可能な観光」をテーマにした最高の映画、新しい持続可能な観光を提案する映画、新しい映像スタイルによって観光の新規開拓を実現しうる映画に賞を与え、入選作品を上映するというものです。
今回、世界115か国からあった2,675のエントリー作品の中から、台湾の女性映画監督、曾馨瑩さんが撮影した短編映画「宜蘭在遠方(英語タイトル:Yilan, a teste of Home)」が最優秀作品賞に輝きました!宜蘭は台湾北東部にある地方自治体です。
この短編映画「宜蘭在遠方(Yilan, a teste of Home)」は、ヨーロッパのバスク料理=スペインとフランスの間に居住するバスク人の間で作られ、発展してきた料理の専門家であるAndoni Munduateさんや、2人のミシュランの星付きレストランのシェフなど、ヨーロッパからやってきた3人が台湾北東部・宜蘭県に足を運び、地元の文化や、若者のUターン問題などについて理解を深めながら、異文化との共鳴の中、“ふるさとの味”に舌鼓を打つというもの。
曾馨瑩さんによると、最初はCulture Labの徐千捷さんが、2018年に宜蘭で行われたCulture Labのイベントの際、招待に応えヨーロッパからやってきたAndoniさんらの訪問記録を撮りたいと思っていたそうで、友人を通じて記録の仕事を引き受けたんだそうです。
ただ、曾馨瑩さんは以前はドラマものが得意で、マニュアル通りの固定観念にとらわれた撮り方はしたくはなかったそうで、代わりに人々の後を追い、Andoniさんがお茶園を訪れたとき、英語がわからない男の子と交流をしていたことだったり、Uターンで故郷に帰ってきた青年がおじいちゃんが残した文化の記憶を継承するためだけにAndoniさんを市場に案内したり…など、「忘れられないエピソード」を記録していったそうです。
2018年末に撮影が完了。編集には1年ちかくかかりました。
そして完成した映像は、シェフを見るドキュメンタリーではなく、宜蘭の食材、それを生かした料理、そして料理を含む食と、地域を作り出すそこに生きる人々が主役。
宜蘭という地域の力を改めて発信しようとする若い人たちが、ここを訪れたシェフを、地元で生き、生活し続けている人に紹介する─。
海外から訪れた人、地元に住む人、Uターンで戻ってきた青年、それぞれ立ち位置の違う人々の心の動きや空気の変化を鑑賞者は体験することができる作品となりました。
昨年(2020年)に偶然、東洋大学の「観光短編映画祭」のことを知った曾馨瑩さんは、持続可能という概念と、「Uターンしてきた青年」の価値観が近いのではないかと思ったそうです。もっと言うと、実は台湾はこのような概念は世界でも「先を行っている」と考えているそうです。
このドキュメンタリーの中で、宜蘭の土地には、故郷の伝承と革新のために夢を追い求めて戻ってきた青年たちが多くいることが映し出されています。外国人にとって、100万の年収を捨て、都会を離れ、田舎に戻ってくる理由が理解できないのでとても新鮮に映るようですが、実は、これが将来持続可能な発展のきっかけの一つになるかもしれないと考えました。実際に、これにはAndoniさんたちだけでなく、日本やイタリアの審査員にも新鮮な感覚を与えました。
作品の中では、強烈にメッセージを投げかけたりはしていませんが、曾馨瑩さんは、世界に、台湾では「Uターンしてくる青年たち」がいるというエピソードを見て欲しいとしています。
また、作品のタイトル「宜蘭在遠方」の「遠方」は、Andoniさんたちがやってきた台湾までの物理的距離もありますが、英語タイトルの「a teste of Home」は離れた故郷との心の距離を表現。「自分を形作ってきた土地を見つけ出す旅路を疑似体験する映画でもある」と評価されています。
ちなみに、曾馨瑩さんは、2013年に台湾の公共テレビ(公視/PTS)で放送されたドラマ「第三十一首籤」で監督を務め、台湾のテレビ・ラジオの番組賞「金鐘獎(ゴールデン・ベル・アワード)」のショートドラマ部門で最優秀監督賞にノミネートされたこともあり、また2018年にはドイツ・ベルリン「Women cinemakers magazine」で国際女性映画製作者として紹介されたこともある注目の人物です。
ただ今回、曾馨瑩さんは、まさか受賞するとは思ってもみなかったそうで、知らせを受けたときは涙があふれてきたそうです。
先週末(2/6)には、世界有数の超高層ビル、台北市のランドマークでもある「台北101」で特別上映会が行われましたが、今後はさらに多くの映画の巡回公演や座談会を開いて、さらに多くの宜蘭の物語を伝えたいとし、賞を獲得したことによって、世界の人々に台湾の物語、宜蘭の物語を見てほしいとしています。
Rti 台湾国際放送
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