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台湾ソフトパワー - 2019-05-14 南安小グマとタイワンツキノワグマの保護に取り組む女性ら

  • 14 May, 2019
台湾ソフトパワー
2018年7月の初めに台湾東部・花蓮の南安滝の歩道で見つかった、親とはぐれた小グマ(右)が9ヶ月の保護生活を終えて野生に返された。写真は小グマが獲物を狩る練習をするために用意された鶏(左)と仲良くなった小グマ(写真:台湾黒熊保育協会のフェイスブックより、CNA)

去る4月30日に、一匹の子熊が政府と保護団体の協力のもとで、9ヶ月の保護生活を終えて、野生復帰ができました。このことで、絶滅危惧種の野生動物の保護に再び注目が集まっています。今週はこの小熊と台湾黒熊保護協会について、お話させていただきます。

事の発端は去年の7月に、台湾東部、花蓮県にある南安の滝の近くに、親とはぐれた小さい黒熊が目撃されたことです。この子熊は絶滅危惧種と指定されている「タイワンツキノワグマ」です。タイワンツキノワグマは和名「ツキノワグマ」のアジアクロクマの亜種で、台湾固有種です。現在、野生のタイワンツキノワグマの生息数は200~500頭しかいないと推定されています。今回目撃された子熊は生後3、4ヵ月とみられ、まだまだ母熊に離れてはいけない子供なのに、ずっと母熊の姿が見当たらないので、台湾黒熊保育協会と森林管理の行政機関である行政院農業委員会林務局の協力で保護されました。

台湾黒熊保育協会の張富美・理事長は黒熊の保護について、「台湾の原住民族は山に神様がいることを信じていて、『森に熊がいなければ、山も魂を失ってしまう』とまで言った」とタイワンツキノワグマの重要性を説明しました。

張富美・理事長は、10年前、台湾南部にある屏東科技大学で野生動物保護の研究、特にタイワンツキノワグマの保全活動に取り組んでいる、「黒熊のお母さん」と呼ばれる、黄美秀・教授に出会いました。黄美秀先生は、タイワンツキノワグマの生息状況に対する理解を深めるため、一人で山に登り、3年間かけて調査を行いました。この間に出会った15頭のタイワンツキノワグマのうち8頭が掌や指を失っていました。タイワンツキノワグマの危機を目の当りにしたことで、黄美秀・教授や張富美さんたちが2010年に台湾黒熊保育協会を作りました。

台湾黒熊保育協会は、絶滅の危機に瀕しているツキノワグマを保護するために作られた、世界初、しかも世界唯一の非営利組織です。野生タイワンツキノワグマが自然生息地で繁殖でき、永遠に存続できることを宗旨としています。

その発起人の一人、黄美秀・先生は、台湾において初めて人工衛星記録器を使って、ヘリコプターでタイワンツキノワグマの追跡に成功した人で、15年間ずっとタイワンツキノワグマの保護に取り組んできました。2010年に、タイワンツキノワグマを研究し続けた成果が評価されて、「IBA国際クマ協会主席賞2009」を贈られ、アジアにおける初めての受賞者になりました。また、黄先生は2006年から今日に至ってIUCN国際自然保護連合において種の保存委員会委員兼アジアクロクマ専門家チームの共同議長を務めているほか、2009年からもIBA国際クマ協会の理事を兼務しています。

こんな黄先生が今回保護された子熊のためにも骨を折りました。保護された当初、子熊の体重はただ5キロぐらいでした。貧血で体が弱い子熊の世話をするため、24時間体制で、3人の獣医師が交代で世話をしていました。エサの準備も大変苦労しました。子熊の標準必須エネルギーの三倍を基準値として、毎日百個以上の果実を採集し、子熊のエサにあてました。黄美秀先生は、台湾最南端、屏東県の屏東科技大学から、子熊がいる台湾中部、台中市にある山を行き来していました。

しかし、子熊の世話には膨大な費用がかかります。黒熊保育協会は資金に悩まされました。最初は募金しても足りないかもしれないと心配しましたが、40日間で台湾元450万元あまり、およそ日本円1600万円以上集め、目標金額を大幅に上回りました。お金だけではなく、物資の寄付もありました。子熊のエサに使えるフルーツや、採りたてのタケノコなどが次々と送られてきて、中には宛名を子熊の愛称「南安小黒熊」にした小包もありました。

協会の張富美・理事長は、「ある時、子熊のエサとしてハチの巣が送られてきた。子熊は最初食べ方がわからなくて、ミツバチに刺されたばかりだったが、それでも巣の中にあるハチミツの誘惑に耐えられず、何回もチャレンジしてからやった食べるコツをつかめた」とエピソードを披露してくれました。張・理事長は、この子熊のことで長年取り組んできた絶滅危惧種の保全活動が花を咲かせたとは予想もしなかったと喜びました。

保護された時、体重がわずか5キロだった子熊は、9が月経って、体重43キロ、体長120センチに成長しました。野生に戻るための生存や捕食の訓練もしっかり受けました。

子熊には個体識別のための耳標(じひょう)と、成長に合わせて伸びられる衛星発信機能付きの追跡用首輪が装着されました。発信機から定期的に送られてくる情報を通して、黄美秀先生と台湾黒熊保育協会が1年間の追跡を行う予定です。この一年間、花蓮林区管理処と原住民族卓渓集落によるパトロール隊も、子熊が無事に成長できるように生息地のパトロールを続けています。小熊の保護と野生復帰を成功させて、黒熊保育協会はこれからも台湾における絶滅危惧種の保全活動に取り組み続けます。

(編集:林蕙如/王淑卿)

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