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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」) - 2025-04-20-台湾のワンちゃんフレンドリーな事情

  • 20 April, 2025
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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)
台北市政府産業発展局ホームページより

<第1セクション:4月11日の「國際寵物日」と「假日狗狗友善公車」の運行>

  • リスナーの皆さん、こんばんは。先々週の4月11日(金)は「國際寵物日(National Pet Day)」だった。ちょうど1年前、2024年の4月10日には、この「国際ペットデー」を前に、台湾農業部(農業省)が記者会見を行い、こちらで「毛小孩」とか「汪星人」「喵星人」と親しみを込めて呼ばれるペットの犬と猫のID登録制を設けるのと同時に、専用サイトを設置することを発表した。

  • この「寵物登記管理資訊網(ペット登録管理情報ネット)」には、ペットIDの登録、マイクロチップの管理、健康情報の集約、さらには迷いペット情報、保護犬・保護猫の里親募集情報など、ペットに関するさまざまなデータが集約されている。もともと国民や外国人居住者に対してもID管理が徹底しているお国柄とは言え、このことだけでも、台湾がどれほどペットの生活に力を入れているかがおわかりいただけるだろう。

  • そんな折、市内を移動中、前を行くバスの車体の前方と後方の路線番号や行き先をを示す電光掲示板に、「假日狗狗友善公車」の文字が表示されているのを見つけた。これは「ホリデー・ドッグ・フレンドリー・バス」という意味である。興味がそそられたので、自宅に戻ってから調べてみると、昨年9月4日付「Yahoo奇摩旅遊編輯部(Yahoo台湾旅行編集部)」に次のような記事が出ていた。

  • 「友善狗狗公車(ドッグ・フレンドリー・バス)」というのは、現在19のバス路線で飼い主とワンちゃんが一緒にバスに乗って遊びに出かけられるように配慮された輸送システム。ドッグ・フレンドリー・バスの発車時間は固定されていて、飼い主はその指定時間に合わせてワンちゃん連れでバス停で待っていれば、ワンちゃんたちのために特別に設営された場所、例えば華山公園などのドッグパークまで連れて行ってもらえる。

  • ちなみに、台北市内では、12の行政区のそれぞれに少なくとも1か所、合計約20か所の専用ドッグパークが設置されている。動物により良い生活空間を提供するため、近年ではペットパークの施設を積極的に拡張している。ワンちゃんとの楽しいひと時を公共交通機関や行政府が一体となって、このような形で積極的にサポートするのは画期的だ。

  • 「ドッグ・フレンドリー・バス」利用の際は、大型犬・中型犬・小型犬を問わず、飼い主がしっかりリードを持つか抱きかかえ、飼い主の座席の足元(おおよそ足首のあたり)に座らせれば、そのまま乗車が可能。運転手は車内放送で「ドッグ・フレンドリー・バスへようこそ。他の方のワンちゃんをむやみに構ったり触ったりしないようご協力ください…」とアナウンスし、動物の習性を知らない乗客が噛まれるなどのトラブルを防いでいる。

  • また、台北市政府動物保護処では、飼い主とペットが安全に乗車できるよう運転手に向けた専門的な研修を実施しており、運転手がペットについての知識を深め、さまざまな緊急事態に対応できるようにサポートもしている。また、バスの車内には、飼い主がいつでも対応できるように、犬用のオムツ、消毒用アルコール、ペットの糞用のポリ袋まで設置されている。まさに至れり尽くせりである。

  • 台北市政府動物保護処、台北市政府公共運輸処、バス会社の三者の協力によって、2017年1月1日から休日限定、7路線でスタートしたこのプロジェクト、8年経った今では、平日も運行されるようになり、「ドッグ・フレンドリー・バス」は19路線にまで広がっている。実はこの2017年は、台湾が公的な動物保護施設で「犬猫の殺処分ゼロ」に踏み切った年でもある。台湾の行政はいったん決断したら、その動き出しは極めて早い。

  • では、ここで潘美辰(パン・メイチェン)さんが1990年にリリースした『我想要有個家(家がほしい)』をOA。潘さんは現在の新北市の出身、幼い頃はご両親の仕事の関係で、花蓮県の客家の里、鳳林で育った。この曲は再び台北に出て来てデビュー3年目の時の転機となった曲で、当時台湾のみならず中華圏で広くヒットし、150万枚のセールスを記録したと言われている。潘さんの代表曲中の代表曲で、アコースティック・ギター版のみならず、ジャズ版なども含め、ご本人もさまざまなアレンジで何度もセルフカバーしている。本日は2003年のデビュー15周年の際にアコースティック・ギターの伴奏でレコーディングされた、マレーシア出身の柯以敏さんとのデュエット版をお聴きいただきたい。

  • 「我想要有個家 一個不需要華麗的地方 在我疲倦的時候 我會想到它(家がほしい。華やかなところでなくてもいい。疲れた時に思い出させてくれる場所なら)」というフレーズで始まるこの歌に、なぜか飼い主のいない野良犬・野良猫の気持ちを連想してしまう。

<第2セクション:民間団体「Act for Animals」「浪浪別哭」の取り組み>

  • さて、2017年に決定された「犬猫の殺処分ゼロ」政策は、保護施設の収容能力が圧迫され、過密状態が続くという予想外の新たな問題を引き起こしてしまった。また、台湾全土で野良犬・野良猫の数は約50万匹と推定されており、これはペットが遺棄されたり迷子となったり、避妊・去勢手術の実施率の低さもあって、この数字を後押ししてしまっている。

  • この問題に対処するため、政府だけではなく、NGOや民間企業でも、動物福祉教育や避妊・去勢手術の推進、里親探しの支援など、多角的なアプローチを展開している。​例えば、2019年に台湾人の徐若菁(シュィ・ルオジン)さん、イギリス人のショーン・マコーマックさん夫婦によって設立された「ACT for Animals(台灣愛克特動物重生救援協會)」は、年間約100匹の犬と60匹の猫を保護し、リハビリや里親探しを行っている。

  • この協会の活動については、『台北畫刊(TAIPEI Quarterly)』2023 冬季号 Vol.34の記事にまとめられている。創立者の徐理事長によれば、「ACT for Animals」は、台湾北部で苦しむ野良犬・野良猫や野生動物に対し、獣医による24時間体制の緊急診療を提供し、動物たちの生活を変える機会を模索し、主に保護、リハビリ、ケア、里親探しに注力する一方、故意に動物に危害を加える人たちを法で裁くことにも力を入れているという 。

  • 私の家人も話していたことだが、数十年前の台湾では路上に野良犬や野良猫がかなり多かったようだ。私も18年ほど前に、台東の原住民族のプユマ族の「豊年祭」を見に行った際に、数匹の野犬に追いかけられ肝を冷やした経験がある。徐理事長によれば、かつて多くの人々は、限られた居住空間でペットを飼うことの責任を理解していなかったという。仕事や学業のために中南部から台北に引っ越して来たものの、ペットを飼うのに適していない賃貸市場に直面した人たちによって、この状況はさらに悪化したという。

  • その一方、この20年間で状況が好転したこともあると徐理事長は続ける。行政院や地方政府の努力により、例えば台北では、郊外の一部を除き、野良犬をほぼ見かけることがなくなったという。多くの緑地が新たにドッグ・パークとして造成され、動物保護法が成立し、台北市政府動物保護処も設立された。さらに、政府とNGOなどが動物福祉教育に取り組んだ結果、多くの保護施設が誕生した。徐理事長は「私たちは、すべての動物に対する人道的な扱いにおいて、台湾がアジアのリーダーになるよう取り組んでいる」と胸を張った。

  • ところで、自宅から徒歩で10分ほどのところに、保護犬・保護猫カフェがあると聞いて行ってみた。台北、台中、台南に三店舗を展開をしている「浪浪別哭(野良ちゃん泣かないで)」である。初めて行った時には、日曜日の昼過ぎだったこともあってか、満席で40分待ちということだったので、別の日に出直すこととした。それにしても、こんなに人気があるというのは予想外だった。

  • 「ペットショップで買うのではなく、保護犬・保護猫を引き取ろう」という合言葉は台湾で聞くようになって久しい。私の周囲で犬や猫を飼っている人たちも、里親として保護犬・保護猫を引き取ったケースが半数以上だ。「浪浪別哭(野良ちゃん泣かないで)」は、譚柔さんと夫の劉憲宗さんによって2015年に台北で設立された保護犬・保護猫カフェである。このカフェは、行き場のない犬や猫を一時的に保護し、新しい家族を見つけるための「中途之家(中継施設)」としての役割を果たしている。

  • このカフェは、1階が犬エリア、2階が猫エリアとなっていて、訪問者はカフェで飲食を楽しみながら、犬や猫と直接触れ合うことができる。​これにより、動物たちの性格や相性を理解しやすくなり、里親希望者が適切なペットを見つける手助けとなっている。​また、カフェの売上の3%は、野良犬・野良猫の避妊・去勢手術のために寄付されており、地域の動物福祉活動を支援しているのが特徴。

  • 創立者の譚さんの話では、このカフェでは、台北、台中、台南の各店舗とも収容できる個体数を犬が4匹まで、猫が10匹までという原則を貫いているそうだ。というのも、飲食を提供しながら、ワンちゃんやニャンちゃんの世話もしなければならないスタッフの負担を考慮するのとともに、保護する側がキャパシティを超えたワンちゃんやニャンちゃんを受け入れてしまった結果、財政破綻を起こしたり、匂いやゴミや鳴き声など環境の悪化から近隣と衝突して引っ越しを余儀なくされたりした事例も見てきたからだ。

  • したがって、「ウチの仔も引き取ってほしい」との相談があっても、「浪浪別哭は社会的な企業であり、慈善事業ではない」との方針の下、この原則はずっと守り続けているそうだ。「まずは会社やスタッフなど自分たちの面倒をしっかり見ることができてこそ、細く長く里親探しの仕事は続けられるのだ」と譚さんは雑誌のインタビューで答えていたことがある。実は、これはどんな仕事にでも言える原則だと思う。私もエンターテイメントの世界に身を置いているが、まず自分が健康で幸せな心持ちでいられなければ、この世界で長くお客さんに喜んでいただくようなパフォーマンスはできないと常々思っている。

  • ではここで、マレーシア出身の鬼才シンガーソングライター&ラッパーの黃明志(Namewee)さん feat蕭敬騰(シァオ・ジントン)さん『流浪狗(野良犬)』をOA。この曲は人間の身勝手な飼育放棄や商業的繁殖に利用された末、捨てられて帰る場所が無くなってしまった野良犬の気持ちを痛切に物語り、身勝手な人類への痛烈な批判となっている。社会問題を正面から切り裂く姿勢は、つくづくロックだと思う。

<第3セクション:台北にアジアトップレベルの動物保護シェルター誕生予定>

  • 台北市政府動物保護処でも、飼えなくなった動物の引き取りや里親探し、大型動物の保護施設の管理など、さまざまなサービスを提供している。年間、約1万件の通報があり、犬と猫に限れば約1300匹を保護している。医療介入が必要な動物は24ある提携施設のいずれかに送られ、さらなる治療を受けることになる。

  • こうした流れを引き継ぐように、2026年7月には台北市にアジアトップレベルの動物保護シェルターが稼働予定である。この動物保護シェルターのデザイン・コンセプトは(1)親しみやすいシェルター(2)ペットの譲渡(3)命の教育(4)親子レクリエーションの4つ。またここには、700匹収容の犬舎、伝承館、マルチメディア教室、ペット用品販売コーナー、医療センターが併設され、収容能力の向上や動物福祉の改善が期待されている。

  • 2023年の統計によると、台湾全国でID登録されている犬の数は9万4,544匹、猫が13万7,652匹となっている。おそらくこの数字は今後も増え続けるだろうと思われる。保護犬カフェで時には愛くるしく、時にはゆったりと時間を過ごすワンちゃんたちを見ながら、彼らに愛のある里親さんとの素敵なご縁が待ち受けていることを願わずにはいられない。本日はドッグ・フレンドリー・バスの話を起点に、台湾のワンちゃん事情を中心についてお話してきたが、いずれペットとしては最多数派のニャンちゃん事情についてもお話しする機会があればと思う。

  • 本日のお別れの曲は、費玉清(フェイ・ユィチン)さんの『晚安曲(おやすみの歌)』をOA。この歌は、日本で言えば『蛍の光』のように、台湾では店舗などの営業終了時によく流れている歌でもあるが、ワンちゃん、ニャンちゃんたちに幸せな明日が待っていますようにとの願いを込めてお届けしたい。

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