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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」) - 2024-10-27-LGBTQの権利の道標となった台湾

  • 27 October, 2024
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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)

<第1セクション:アジア最大の LGBTQの祭典「Taiwan LGBT+ Pride」>

  • リスナーの皆さん、こんばんは。毎年10月の最終土曜日に、台湾では「台灣同志遊行(Taiwan LGBT+ Pride)」と呼ばれるアジア最大のLGBTQの祭典が毎年開催されている。第22回を迎える今年は、昨日10月26日(土)に台北市政府前広場を会場に実施され、性の多様性のシンボルである虹色の旗をはためかせながら、世界各地からの参加者が思い思いの装いでパレードに繰り出した。今年のTaiwan LGBT+ Prideのスローガンは、「邁向共融,交織共生 Embrace Inclusion(排除無き社会に向かい、共生を織りなす/社会的一体性の受容)」であり、昨年のスローガン「看見多元(多様性が見える)」から、皆が手を携えて「共融」、すなわち「国籍、年齢、人種や民族、宗教/ 信仰、性別、婚姻状況や社会的経済的地位を含むあらゆる条件で誰もが排除されない」社会へとさらに一歩踏み出そうというものであった。

  • 現在ではジェンダー平等の問題では先進国となった台湾でも、かつては同性愛がタブー視された時代が長らくあった。容姿を盗撮されたり、カミングアウトを無理強いさせられたり、メディアに晒されて職を失ったり、家族から追い出されたりすることもあった。また、個人の性的嗜好、性別のアイデンティティー、気質などを取り上げられ、嘲笑やイジメの対象となることも少なくなかった。実際に「バラの少年」事件と呼ばれる痛ましい出来事が2000年に起こった。見た目や言動が女性っぽいという理由で同級生から執拗なイジメを受けていた当時中学校3年生だった葉永鋕さんが、トイレで血だらけになって倒れているのを発見され病院に緊急搬送されたが助からなかったという事件が発生した。自殺や他殺の証拠は見つからず、急性疾患による昏倒で頭部強打し大量出血したことが原因と判断されたものの、後に「バラの少年」と呼ばれるようになった葉永鋕さんのこの事件を契機に、台湾の「教育部(教育省)」ではこれまでの「両性平等教育法」を改め、2004年に「性別平等教育法」を施行した。これが、その後の台湾のジェンダー平等意識の向上へと繋がっていった。

  • こうした流れと呼応するように、ジェンダー平等問題で苦しんできた人々の受け皿となる形で活動してきた団体が一堂に会する形で、2003年に第1回Taiwan LGBT+ Prideも開催されるようになったのだった。そして、年を追うごとにパレードの規模が拡大。2012年には「台灣彩虹公民行動協會(台湾レインボー市民行動協会)」も設立し、イベントの事務を担当するようになった。毎年、ジェンダー平等問題に関心を持つ数百名のボランティアによって、このイベントの運営が支えられている。初年度にパレードに参加した人数は千名程度だったが、現在ではアジア最大のLGBTQの祭典に成長し、台湾で同姓婚姻特別法が成立した2019年には、台湾の国内外から20万人が参加したとも言われている。

  • 上述の通り、台湾は2019年にアジアで初にして唯一同性婚が認められることとなった。転機となったのは、2016年12月に民進党の立法委員が同性婚合法化の為の民法改正案を提出し、蔡英文前総統がSNSで「全ての愛は平等」とコメントして同性婚に対する支持を表明。その後の世論調査で同性婚の合法化を支持するとの回答が71%にまで上昇し、同性婚の法制化に向けての機運が高まった。続いて2017年5月24日、台湾の最高司法機関の司法院大法官会議(憲法裁判所に相当)は、同性婚を認めていない現在の民法の規定は憲法に違反しているとの判断を示し、同性婚の法制化を2年以内に行うよう言い渡した。これを受け、2019年5月17日、立法院(国会)は同性婚の権利を保障する特別法を可決、5月24日に施行され、同日に婚姻届の受理が始まった。この法改正により、台湾はアジア初の同性婚合法化がされた国となったのである。

  • ここで先ほど述べた「バラの少年」こと葉永鋕さんの事件を追悼する形で作られた蔡依林(ジョリーン・ツァイ)さんの『玫瑰少年(バラの少年)』をOA。台湾の民主化もそうだが、ジェンダー平等についても、多くの尊い命の犠牲の上に今日の姿があるということを今一度心に深く刻みたい。

<第2セクション:国立映像文化センターの企画展「ニエズたちの空ーー台湾同性愛映画セレクト」>

  • Taiwan LGBT+ Prideに呼応し、また同性の婚姻合法化5週年を記念する形で、「國家影視聽文化中心(国立映像文化センター)」の企画による「孽子們的天空:台灣同志電影選(ニエズたちの空ーー台湾同性愛映画セレクト)」が10月10日〜26日まで開催された。1986年の台湾が未だ戒厳令の時代に、同性愛のテーマを台湾で初めて扱った『孽子(ニエズ)』(虞戡平 Yu Kan-Ping監督)のデジタルリマスター版をはじめ、制作時代の異なる同性愛関連の5作品が上映された。

  • 孽子(ニエズ)は、1983年に白先勇さんの同名の小説が原作で、本来は妾の子という意味だが、この作品の場合、「罪の子」とでも訳したら良いだろうか。戒厳令当時に同性愛を志向する人たちが置かれた境遇を象徴する悲哀に満ちた言葉となっている。この映画は1970年代の台北を舞台に、当時は社会的に厳しく抑圧されていた同性愛者たちの生き様を赤裸々に描くとともに、父と子の対立と和解に至るまでの道のりを示した物語である。当時は映像を管轄する政府部門の新聞局による検閲で21箇所が問題視されカットされた一方、第1回ロサンゼルスLGBT映画祭のオープニング作品に選ばれるほど、完成度・評価の高い作品だった。台湾の人にとって『孽子(ニエズ)』は、2003年に放送され、翌年の「金鐘奨」の6部門に輝いたテレビドラマのバージョンの方が馴染み深いかもしれない。

  • このほか今回の企画で上映された作品は、ベルリン国際映画祭でグランプリに当たる金熊賞を獲得し、「金馬奨」でも5冠(作品・監督・脚本・助演男優・助演女優)に輝いた李安(アン・リー)監督の代表作の一つ『囍宴(邦題:ウェディング・バンケット)』(1993)。ニューヨークのマンハッタンでアメリカ人の恋人と暮らすゲイの台湾青年が、自分がゲイであることを知らない両親を欺くため、芸術家の女性の友人と偽装結婚を図ろうとするラブコメディー。それから、父親と息子を軸に同性愛グループの家族の様相を描いた蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の『河流(邦題:河)』(1997)、私生活でも伴侶である劉芸后(ホゥホゥ・リウ)さん、周美玲(ゼロ・チョウ)さんの共同監督により、女性の視線からゲイバーに出入りする人々の模様を描いたドキュメンタリー『私角落(英題:Corners)』(2001)、台湾のBL映画の先駆的作品の陳映蓉(DJ チェン)監督の『17歲的天空(邦題:僕の恋、彼の秘密)』(2004)と、映画を通じて台湾のジェンダー平等の運動史を見て取ることもできる錚々たるラインナップだ。

  • 国立映像センターでは、もはやジェンダーの多様性が異端視されなくなった台湾において、「孽子們的天空:台灣同志電影選(ニエズたちの空ーー台湾同性愛映画セレクト)」という企画展を通じて、「孽子/ニエズ」たちが、暗く抑圧された社会の片隅から、どのように一歩ずつ抜け出して空に向かって羽ばたいていったのか、観客の皆さんの先導役を果たすとともに、台湾のジェンダーの平等に新たな一章を刻めることを願っていると述べている。ここで先ほどご紹介した『17歲的天空(邦題:僕の恋、彼の秘密)』の主題歌で洛客班(Rock Bang)さんが歌った『我想你的快樂是因為我(君が楽しいのは僕がいるから)』をOA。

 

<第3セクション:日台合作舞台劇『奇蹟的歌舞伎町(ミラクルライフ歌舞伎町)』>

  • このほかにも、台湾には同性愛映画の系譜と呼んでいいほどこのテーマを扱った作品は多い。直ぐに思いつく話題作だけでも、楊雅喆監督の『女朋友。男朋友(邦題:GF*BF )』(2012年)、柳廣輝監督の『刻在你心底的名字(邦題:君の心に刻んだ名前)』(2020年)、鄭有傑監督の『親愛的房客(親愛なる君へ)』(2020年)が挙げられる。さまざまな産みの苦しみはあったが、ジェンダーの平等に先駆的で、多様性に寛容な台湾社会が、こうした作品を次々に生み出している背景にあると思う。こうした映画を受け入れ、鑑賞してくれる観客、市民があってこその作品という側面も見逃すことはできない。

  • 台湾で最近観た舞台で同性愛を背景に描かれた作品を最後にご紹介したい。演劇ユニット「亜細亜の骨」が手掛ける日台コラボレーションの舞台『奇蹟的歌舞伎町(ミラクルライフ歌舞伎町)」が、今月12〜13、19〜20の4日にわたって彰化県・員林の「彰化劇場芸術節」と桃園市の「桃園鉄玫瑰芸術節」の演目としてそれぞれ上演された。戦後の新宿・歌舞伎町の復興を担った台湾華僑の物語である。

  • 10月7日付の中央社の報道を引用すると、「原作は台湾の作家、林孟寰(リン・モンホワン)さん。演出を担当する亜細亜の骨の山崎理恵子さんと共に歌舞伎町で実地調査や台湾華僑へのインタビューを行い、完成させた。歌舞伎町の発展に関わった台湾華僑の功績を紹介する書籍「台湾人の歌舞伎町――新宿、もうひとつの戦後史」から着想を得た。歌舞伎町にある架空の高齢者施設「ミラクルライフ歌舞伎町」を舞台に、そこで暮らす南部・嘉義出身のトランスジェンダー女性の物語を描く。日台のキャスト5人が30人以上の役柄を演じ分ける。」東京では昨年10月に上演されたこの舞台。台湾の上演に当たっては、台湾の観客が理解しやすいように、日本の戦後復興当時の時代背景を説明するシーンを新たに書き下ろしたそうだが、私が観劇した桃園の公演でも台湾の観客から絶え間なく笑いと拍手が起こり、台湾と新宿・歌舞伎町の数奇な関わりに驚きの声が寄せられていた。日本人も台湾人も十分楽しめる内容となっていた。

  • アジアの骨には、私も2017年の「台北藝穂節(台北フリンジフェスティバル)」で行われたプロジェクトで参加したことがある。別役実さん作の舞台の脚本『受付』のリーディングを日本語と華語の両言語のそれぞれのバージョンで演じるという内容だったが、役者として大変良い勉強となった。アジアの骨さんの今後の活躍には、プロジェクトに関わったことのある者としても大いに期待したい。本日のお別れの曲は、盧廣仲(クラウド・ルー)さんの歌で『刻在我心底的名字(僕の心に刻まれた名前)』。映画のタイトルは『君の心に刻まれた名前』だが、主題歌は『僕の心に刻まれた名前』となっている。心を惹かれ合う二人の、君と僕というそれぞれの立場からの心情を映画と音楽が重なることで、Call & Responseのような関係になっていることにも注目したい1曲だ。

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