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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」) - 2024-10-06

  • 06 October, 2024
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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)
「双十節」メインビジュアルの推移(写真提供:中央社)

<第1セクション:台湾の国慶節「双十節」>

  • 本日が10月初めての放送。台湾の10月の行事として、まず脳裏に浮かぶ行事が、毎年10月10日に行われる「双十節」と呼ばれる「国慶節」、建国を祝うイベント。月と日の数字のいずれも10で、二つの10が重なる日なので、「双十節」と名付けられた。1911年10月10日のこの日に、武漢市の中心地区である武昌で「武昌蜂起」が発生した。これが発端となり、孫文が率いる勢力が「辛亥革命」を起こし、2か月後にアジア初の共和国となる「中華民国」が建国されることとなった。したがって、この日に中華民国の建国を記念して祝うこととなったという歴史的経緯がある。一方、これとは別に台湾では1月1日が「開国記念日」とされており、この点は少々ややこしいのだが、大々的に祝賀行事を行うのはこの「双十節」の方である。

  • 台湾はご存知のように、国家そのものの名称ではなく、国家としての中華民国が実際に領有する地域を指す。だが、民主化以降の30年で台湾アイデンティティーが浸透する中、蔡英文前総統が2019年の「双十節記念式典」の挨拶で、「中華民国台湾」という言い方が、台湾に住む人々にとっては最も多くのコンセンサスが得られる、最大公約数の概念であると初めて公の場で打ち出した。すなわち、中華民国=台湾であり、台湾も中華民国もどちらも同じアイデンティティーである、ひいては中華民国は独立した主権国家であり、したがって台湾もまた然りという考え方だ。今年の5月20日に就任し初めての「双十節」を迎える頼清徳総統もこの考えを引き継いでいるが、中国からの軍事的、経済的、認知戦の圧力が高まる中で「双十節記念式典」ではどのような挨拶になるのか注目したいと思う。

  • さて、一昨年の2022年の話になるが、京都橘高校の吹奏楽部の生徒が「双十節記念式典」に招かれ、見事な演奏を披露し、そのコスチュームの色から「オレンジの悪魔」旋風と呼ばれる一大ムーブメントを起こしたことは記憶に新しい。日本の全国マーチングコンテストで3年連続で金賞を獲ったという実力通りのパフォーマンスは、多くの台湾の人々を虜にした。また、京都橘高校の吹奏楽部は、その年の12月には再び総統府晩餐会に招かれ、創立120周年を迎えた台北第一高級女子中学(北一女、台北第一女子高校)の生徒たちとの国境や言葉を超えた交流や合同パフォーマンスも行った。

  • 台湾の「双十節」では、日本の超党派の議員団「日華議員懇談会(略称:日華懇)」所属の国会議員が出席をすることはあっても、民間の高校生のグループが参加し、ここまで注目されたのは前代未聞のことだった。京都橘高校の生徒たちが民間大使として残した足跡は極めて大きかった。昨年の2023年も「エメラルドナイツ」の愛称で親しまれる東京農業大学第二高校吹奏楽部の生徒が「双十節記念式典」に参加した。前年の京都橘高校の「オレンジの悪魔」ほどの旋風は起こらなかったものの、こうした日本の若い世代が台湾の風に触れ、国際交流を経験する道筋がつけられたのは、今後の台湾と日本の国際関係の健全な発展にとって大きな財産となったと思う。

  • 今年の「双十節」では、個人的にもう一つ注目していることがある。毎年、「双十節」の前日、もしくは数日前に、各都市の持ち回りで「國慶晩會」と呼ばれる前夜祭が開催されている。今年は台北市が担当で、昨年オープンしたばかりの「台北大巨蛋(台北ドーム)」で行われる。今年の目玉は何と言っても江蕙(カン・フイ/チァン・フエイ)さんの復帰だ。「歌后(歌謡界のクィーン)」、「二姐(2番目のお姉さん)」の愛称で親しまれた江蕙が、突然引退を発表したのが2015年のことだった。当時は『祝福(チョッホッ)』と題したコンサートツアー中だった。ツアーの最中に体調の異変に気付き、治療が必要になったことが引退の理由だったそうだ。「手術と度重なる化学療法のプロセスでは、肺閉塞や大きな出血が重なり、何度も命の危機に瀕した」と先日9月10日になって、ご本人が初めて明かしてくれた。

  • 江蕙さんは9歳から歌手として活動を始め、デビューから60枚ものアルバムをリリース。台湾語歌謡の世界では「金曲獎」を13回獲得した記録保持者であり、超絶な人気を誇る歌手だった。多くのファンたちが江蕙さんの復帰を待ち望んでいたことは想像に難くない。ここで江蕙さんの歌で『祝福』をOA。2015年に芸能活動を休止する前のコンサートツアーのタイトル曲でもあるが、今年の「國慶晩會(双十節前夜祭)」で復活を果たした江蕙さんを心から祝福したい。

<第2セクション:旧暦9月9日は「重陽節」>

  • 話は変わるが、旧暦の9月9日は五節句の一つで「重陽節」と呼ばれる。今年は10月11日がその日に当たる。重陽節は中国、香港、マカオ、台湾、ベトナムにおいて伝統的な祝日である。重陽節を祝うようになったのは、諸説あるが紀元前後の後漢から、3世紀前半の三国志の魏のころと考えられている。日本では、菊が咲く季節に当たることから菊の節句とも呼ばれている。

  • 陰陽思想では奇数は陽の数であり、一桁の陽数の最高位である九が重なる日であることから「重陽」と呼ばれる。奇数の重なる月日は陽の気が強すぎ、本来は不吉とされ、それを祓う行事として節句を過ごすようになった。旧暦5月5日の端午節、7月7日の七夕の節句なども、奇数の重なる月日であるが、先ほど述べたように、九は一桁の数のうち最大の「陽」であり、特に負担の重たい節句と考えられていた。しかしながら、時代が下るに連れ、陽が重なることを吉祥とする考えに転じたため、後世ではこれらの節句はいずれも祝い事となった。

  • さて、重陽節は祖先の墓を訪れて敬意を払う日である。香港やマカオでは、一族全員が先祖代々の墓を訪れ、墓を綺麗にして捧げものをする風習が残っている。菊の花を飾ったり、菊の花びらを浮かべた酒を酌み交わしたりて邪気を祓うとともに、長寿を願ってこの日を祝っていた。また前夜、菊の花の上に綿を被せて、朝露を染み込ませ、身体をぬぐうなどの習慣もあったそうだが、現代ではほとんど行われなくなってしまった。

  • また、中国古典文学者で弘前大学名誉教授の植木久行さんの解説によれば、重陽節の由来は、梁の文学者の呉均(ごきん、469-520)が表した志怪小説集で、最も早い時代に屈原(くつげん)と端午を結び付けた作品である『続斉諧記(しょくさいかいき)』の記述がよく引用されるという。それによると、後漢の有名な呪術師の費長房(ひちょうぼう)は弟子の桓景(かんけい)にこのように言った。「9月9日、きっとお前の家では災いが生じる。家の者たちに「茱萸(しゅゆ、木の実の一種カワハジカミ)」を入れた袋を提げさせ、高いところに登り、菊酒を飲めばこの禍は避けることができる」。桓景はその言葉に従って家族とともに高い丘に登り、夕方、家に帰ってみると、鶏や牛などが身代りに死んでいた、というものである。この逸話には、重陽節の行事の三大要素(登高、茱萸、菊酒)が描写されている。

  • 後世では、重陽節は収穫が一段落した晩秋の行楽日となる。高いところに登る風習は山や丘のほか、高楼や寺塔の場合もあり、各地にこの「登高」の名所を生んだ。この頃に芳醇な赤い実が熟す「茱萸(カワハジカミ)」の一房を髪に刺すと、邪気を避けられるという。その実を浮かべた「茱萸酒(カワハジカミ酒)」は菊の花を浮かべた「菊酒」とともに、唐・宋の時代に愛飲された。北宋以後、菊の種類の飛躍的な増加とともに、展覧会が開かれるようになり、重陽節は菊花を愛でる日ともなった。重陽節に菊の花を愛でる習慣は日本にも伝わった。

  • ここで、重陽節をテーマにした余天さんの『九月九日的酒(9月9日の酒)』をOA。元々は中国で浙江省出身の陳少華さんが、1994年にリリースしたアルバム『九月九日的酒』のメイン曲として歌ったものだ。台湾では現在は立法委員(国会議員)となった余天さんが同名のアルバムで1996年にリリースしている。この曲は以前、私もこの時期になるとカラオケでよく歌った。サビの「走走走走走啊走 走到九月九 家鄉沒有烈酒 沒有問候(行け行け行け行け9月9日まで歩いて行け 故郷には強い酒は無い 挨拶も無い)」のインパクトが強くて、今でも歌詞を見なくても歌えるほどだ。

 

<第3セクション:芸術の秋は「Art Taipei台北国際芸術博覧会」>

  • さて、10月は台湾でも芸術の秋である。今年で第 31回を迎える「ART TAIPEI 台北國際藝術博覽會」が、今年も10月25日から10月28日まで台北世界貿易センター第1パビリオンで実施される。ART TAIPEIは、8か国から130を超える選りすぐりのギャラリーが一堂に会し、優れた芸術家やその作品を海外の収集家や一般市民に向けて披露するビジュアルアートの祭典である。毎年台湾とアジアのアートシーンの未来を占う国際イベントである。

  • また、「推しのMIT新人特別ブース」では、毎年文化部(文化省)に選出された8名の優秀な若手アーティストを、ギャラリー協会と商業ギャラリーが協力して応援している。今年はMIT17周年特別ブースで、国際アートシーンに羽ばたいた台湾青年アーティストの回顧展も実施される。

  • これとは別に、富邦美術館では、8月24日から11月11日まで「ファン・ゴッホ展:光を求める道」が開催中である。ゴッホと言えば自画像や「ひまわり」「星月夜」などの作品が思い出されるが、今回はオランダのオッテルローにある「クレラー・ミューラー美術館」所蔵の初期から後期にかけての25作品が、台湾で見られる数少ないチャンス。この時期に台湾を訪れるゴッホのファンの皆さんも、ぜひ訪れてみてほしい。

  • 旧暦の9月と重なる今月は、「九降風」と呼ばれる大陸からの季節風が吹き始め、夏の間は台湾の北中部に生息している渡り蝶、ルリマダラが、高雄や台東といった台湾南部に向かって、150キロ以上、時には300キロ近くもの旅を開始する季節でもある。このルリマダラのことを歌った八得力樂團の『蝶の河』をお聞きいただきながら本日はお別れ。

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