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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」) - 2024-05-12-「立夏」夏の始まりが旬の果物

  • 12 May, 2024
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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)
夏のはじまりが旬の果物と言えば…

<「立夏」夏の始まりが旬の果物と言えば…「茘枝(ライチ)」>

  • リスナーの皆さん、こんばんは。先週の日曜日、5月5日、旧暦の3月27日が今年の立夏であった。日本の季節感では6月終わりから7月にならないと初夏という感じがしないが、台湾ではこの点は暦通りという気がする。それを演出してくれるのは、フルーツ王国の台湾では、ライチとマンゴー、特に「土芒果」と呼ばれる在来種のマンゴーの存在だろう。

  • まず、ライチといえば、唐の杜牧が七言絶句『過華清宮(華清宮に過る)』にこう詠んだことはあまりにも有名。「長安回望繡成堆,山頂千門次第開。一騎紅塵妃子笑,無人知是荔枝來(長安より廻望(かいぼう)すれば 繍(しゅう)堆(たい)を成す。山頂の千門(せんもん)次第に開く。一騎の紅塵(こうじん) 妃子(ひし)笑う。人の是(こ)れ荔枝(れいし)の来(きた)るを知る無し。)」。現代語にすれば、だいたい次のような意味であろう。長安から振り返って望めば錦の小山ようだ。山頂まで続く宮廷の門が次々と開いていく。一騎の馬が砂塵を巻き上げ楊貴妃が笑う。ライチが到着したことを誰も知る由はない。

  • ライチは台湾、ベトナム、タイ、中国などのアジアの国以外でも、アメリカのフロリダ州やカリフォルニア州、オーストラリアのクィーンズランド州、インド、南アメリカ、マダガスカル、イスラエル、メキシコでも栽培されているそうだが、台湾産のものは市場でも多く出回り、品質でも頭一つ抜けているという印象を私は持っている。

  • 私が台湾の二十四節気や年中行事を理解するのに、バイブルのように大切にしている俳人の黄霊芝さんが著した『台湾俳句歳時記』には、ライチのことをこのように説明している。「初夏に出回る果物で竜眼と同じムクロジ科。春に小花を多数着け、蜂をよぶ。果皮はつぶつぶ状を呈して釈迦の頭に似、同じ似ざまから日本ではウリ科のツルレイシを茘枝と称したりして、まごつく。百聞が一見に如かなかった頃の言語は、鮎(なまず)の字をアユと訓じたりするのと同じ。茘枝はツルレイシではない。華南産の灌木で樹形は横へ枝を張る。果は房となって垂れ、果肉は白、果汁は甘酸っぱい。唐代の楊貴妃がこれを好み、早馬で北方へ献上する使者の労を顧みなかったことから唐王朝亡国のもとをつくったともいう。よってか有名な果物。産期は短い。茘枝は古典果樹だけに豊産の烏葉仔(オオヒオアー)種以外にも小種(こたね)種の糯米糍(ツッビイチイ)ほかの希少品種があり、でも縁がないと回り合えない。不思議にも茘枝は蜂が多いと受粉を逆に妨げる由。」

  • せっかくなので黄霊芝さんが詠んだライチを季語とした一句を紹介しよう。ここではライチのことを台湾語で「ナイチイ」と読ませていることを予めお断りしておく。「茘枝(ナイチイ)の 一皮の中 女身仏(にょしんぶつ)」これはライチの皮の下には、色白で瑞々しい女身仏が宿っているようだという意味で、ライチの美味しさをこのようにたとえたのであろうが、楊貴妃がライチを好んだという故事も意識しているかもしれない。

  • 台湾のライチは5月から7月にかけて旬を迎える。台湾の行政院農業部の説明によると、台湾のライチには、(黒葉、楠西早生、三月紅、糯米糍、沙坑、玉荷包、桂味、淮荔)8大品種があるそうだ。一番多く栽培されているのが「黒葉(烏葉仔/オオヒオアー)」で、次に多く栽培されている品種は「玉荷包」で台湾中部、南部、台東が主な産地である。とりわけ台湾で開発された「玉荷包」は果実が大きく、種が小さく、したがって果肉が多く、しかも糖度が高い品種であり、日本に輸出されているのもこの「玉荷包」がほとんどである。

  • ライチの糖度は20%にも達し、100gの果汁に含まれるビタミンCは70mgにも達し、タンパク質、脂肪、リン、カルシウム、鉄などの成分も含有している。漢方薬のバイブルである『本草綱目』には、ライチには脾臓と肝臓に作用し、喉の渇きを抑え、消炎作用があり、咳を鎮める効能があると言われる。その一方、身体を熱くする作用もあり、食べ過ぎると歯茎が腫れ口内炎を引き起こすこともあるそうだ。また、ライチにはブドウ糖の生成を抑制する毒素ヒポグリシンを含むため、食べ過ぎると低血糖や癲癇の発作を起こすこともあるから、この点は注意が必要だ。インドの北部では毎年のように空腹時に多量のライチを食べた子どもが擬似脳炎の症状を起こし、時には命を落とす例もあるようだ。何事もほどほどにということと、空きっ腹ではライチを食べないということはぜひ覚えておいていただきたい。

  • ここで人気グループの告五人(Acuusefive)さんの歌で『愛在夏天(Love in Summer)』をOA。

<「立夏」夏の始まりが旬の果物と言えば…芒果(マンゴー)>

  • 続いてお話しする果物は、台湾語では「檨仔(スワイアー)」と呼ばれるマンゴーだ。これは平地の原住民である「平埔族」の言葉から来た音であると言われている。史料の記述によると、オランダ領時代に赤山堡(今の台南市六甲区や官田区一帯)に移入されたというから、この平埔族というのは、この辺りに住んでいたシラヤの民だったかもしれない。

  • マンゴーは常緑の高木で自然の状態で野放しにすると15〜18メートルくらいまで育ち、樹齢も長い。商品作物として栽培し、品種改良を重ね、接木をする中で2〜3メートルの高さに抑えられようになった。雌雄両方の花をつけるが、蜜が少ないためミツバチや蝶が受粉のために近づくことは少なく、クロバエが最も重要な受粉を仲介する昆虫となっている。このため、受粉時期にはマンゴーの木の下に、わざわざ残飯や腐敗物などを撒いて、ハエを誘き寄せているそうだ。一番の人気種の「愛文芒果(アップル・マンゴー)」については、2年前のこの番組の第1回の放送時に詳しく話しているので、ここでは繰り返さない。この時期に出回る在来種で皮が緑色の「土芒果」は、小粒で種が大きく繊維が多いため、輸出用に出回ることは少ない。だが、実は香りも良く、程よい甘さと酸味で、これぞ昔食べた懐かしの味ということで地元の台湾の、特に年配の方からは愛されている。

  • 先ほどライチの紹介の際にも引用した黄霊芝さんの『台湾俳句歳時記』には、マンゴーのことはこう紹介されている。「果物の王者とも天国の木の実とも称されるマンゴーは、栽培の歴史を四千年前にまで遡ることができると言われる。インドには釈迦がこの木の下で休んだという伝説がある。台湾へはオランダ領時代に移入され、台南県下に老木が残っている。ウルシ科の常緑大喬木で、夏、腎臓形の果実を賑やかに着け、黄熟する頃、蟻がお祭り騒ぎをはじめるほど甘く、多汁。豊産ながら北部では実が着きにくい。古くは香檨(ヒョースワイ)、柴檨(ツアースワイ)、肉檨(バアスワイ)の三種類があり、渇を癒すにこれに勝るものがないといわれた。現在は繊維が少なく、より豊産な改良種が主として栽培され、生食のほか乾果、蜜餞(みつせん)、シロップ…に製される。酸味の強い未熟果は塩漬とし、一種、薄い塩水にたっぷりと時間をかけて漬け、ふやけさせた鹹檨仔(キャムスワイアー)は下にとろけて美味この上ない。」

  • ここでも黄霊芝さんの詠んだ一句を紹介しておこう。「堪忍袋 生(な)らぬマンゴー 伐(き)り倒す」これをどう解釈したら良いのか?マンゴーの生産量が増えすぎて市場価格が下がり、それで癇癪を起こしてマンゴーの木を切り倒すというのか?あるいは世の中の巨悪をマンゴーに仮託して、その悪を切り倒すと言っているのか?何に黄霊芝さんの堪忍袋の緒が切れてしまったのか、今となっては知る由もない。

  • さて、黄霊芝さんのおっしゃる柴檨(ツアースワイ)が土芒果のこと、香檨(ヒョースワイ)は土芒果よりさらに小さく、丸みを帯び、皮も黄色味を帯びていて、こちらが台湾の本当の在来種ではないかという説もある。また1954年に、アメリカのフロリダ州から「愛文(Irwin)」、「海頓(Haden)」、「吉祿(Zill)」、「肯特(Kent)」、「凱特(Keitt)」の五種類の外来種が台湾の農業試験場に持ち帰られ、このうち1962年に「台湾アップルマンゴーの父」と呼ばれる鄭罕池さんが現在の台南市玉井区に、台湾の土地に最も馴染んだ「愛文(Irwin)」種のマンゴーをいち早く移植して育てたことから、玉井はアップルマンゴーの郷となった。60年以上前に100本導入された最初のアップルマンゴーの木は、現在も1本だけ玉井の地に残っている。

  • このほかにも台湾本土の農業の品種改良の成果としては、1966年に「凱特(Keitt)」と「懷特(white)」種の交雑により高雄市六亀区で生まれた黄色で大型の「金煌」マンゴーが、1974年から市場に出回るようになった。果肉が多いことから、マンゴーかき氷や屋台のカットフルーツで重宝されている。ちなみに「金煌」マンゴーは、この品種を改良した農民の黄金煌さんにちなんで名付けられた。現在、台湾の市場に出回っているマンゴーは、(土芒果、愛文、金煌、玉文、香水芒果、凱特、西施芒果、水蜜桃芒果、蘋果文、黑香、慢愛文、慢金煌、紅凱特、金蜜、貴妃、萬甜香、夏雪、蜜雪、海頓など)二十種類にも及ぶと言われているが、在来種や外来種の様々な掛け合わせによって、毎年新しい品種が生まれ続けている。

  • マンゴーの果肉はビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、炭水化物、食物繊維、葉酸のほか、カルシウム、リン、鉄、カリウム、マグネシウムなどのミネラルも含まれている。マンゴーには脳細胞の破壊を抑える働きがあると言われており、冷凍したマンゴーを食べると使いすぎた脳をリラックスさせる効果もあるようだ。漢方医学ではマンゴーは身体を冷やす食品で、喉の渇きを抑え目眩を止める効果があると言われている。車酔いや船酔いにはマンゴーの種を茶碗に一杯のお湯で煎じて飲むと聞くとも言われている。また、芒果に含まれるポリフェノールは、乳癌や大腸癌のリスクを低下させるとの結果も出ている。その一方、マンゴーは腎臓にとっては害となる面もあるので、急性、慢性腎炎の患者が食べることはタブーである。また、マンゴーは漆科の植物のため、果汁が直接皮膚に触れるとアレルギー反応を起こし、かぶれたり、唇が腫れ上がったりすることがある。この点は注意が必要である。このため、台湾ではマンゴーを含む製品のパッケージにアレルギー源として表示しなければならない。

  • ここでマレーシア出身の歌姫、梁靜茹(フィッシュ・リョン)さんの歌で『寧夏(静かな夏)』をOA。フィッシュさんは「情歌天后(ラブソング・クィーン)」「療癒系天后(癒し系クィーン)」などの異名を持ち、慈善活動にも熱心なアーティスト。英語の芸名「Fish」は中国語の芸名の「茹」の字が広東語の発音では「魚」と同音になるため、ここからつけられた。李宗盛(ジョナサン・リー)に認められたことが、台湾でのデビューのきっかけ。この『寧夏』という歌は、元々作曲家の李正帆さんが中国の寧夏回族自治区に行った際に、この地方の民謡を採譜したものを、後に五月天(MayDay)が編曲をし直したもので、単純に「寧静的夏天」という意味。ところが、中国ではいまでもフィッシュさんが寧夏回族自治区出身の中国人であるとの誤解があるようだ。

  • 台湾ではライチやマンゴー以外にも、桃やスモモ、スイカがこれからが旬の果物だ。そして、パッションフルーツやドラゴンフルーツ、梨、アボガド、竜眼などもこれらのフルーツに続いて旬を迎える。マンゴーも土芒果から、愛文、金煌などを経て9月の凱特まで様々な品種を楽しむことができる。個人的にお気に入りな品種は定番の愛文のほかに黒香(台湾語では烏香(オオヒョン))と呼ばれ、熟しても緑の皮のままで竜眼の香りがすると言われる品種だ。台北では出回る量が限られるが、独特の香りと適度な甘みと酸味は癖になる。台湾を訪れる方は是非フルーツ王国を存分に満喫していただきたい。

  • 本日は二十四節気の「立夏」が過ぎて、これから旬を迎えるフルーツの代表としてライチとマンゴーについて色々とお話しした。茘枝もマンゴーも今ではどちらも空輸で日本に輸出される機会が多くなったので、日本でもフレッシュで食べられる台湾フルーツの定番になっている。もう1週間ほど経つと、次の節気の「小満」となる。万物が次第に成長して、一定の大きさに達する頃で、麦畑も緑黄色に色付き始める。そして、台湾や沖縄で梅雨入りするのもちょうどこの頃となる。恵みの雨が更に今年のフルーツを豊作にしてくれることを祈りたい。

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