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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」) - 2024-02-11-「龍年」の台湾の年越しと「回娘家」

  • 11 February, 2024
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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)

<第1セクション【今年は「龍年」、合言葉は「生意興龍」】>

  • リスナーの皆様、「新年快樂!」「恭喜發財!」、旧正月明けましておめでとうございます。台湾では本日が旧正月の二日「初二」となる。日本では新暦の元旦から干支が変わるが、台湾では旧暦の元日、すなわち昨日が「龍年(辰年)」の始まりということになる。華人の多く住む地域では、これまでは辰年に出生率が上がる傾向にあった。と言うのも、龍が天に昇る姿を連想させるこの年は、伝統的に縁起の良い干支とされ、親たちがこの年に合わせて出産しようとしたからだ。ところが、現在の少子高齢化の潮流には、伝統文化や習俗も太刀打ちできないようで、辰年だからといって、これまでのように出生者数が急増することとはならないようだ。もちろん、先行き不透明な経済に対する不安や、新型コロナのダメージから回復し切れていないことも、この動きと連動している部分はあるだろう。しかし、やはり辰年には威勢の良い「生意興龍(隆)(=商売繁盛)」、「龍(栄)華富貴(=栄華富貴)」となってほしいものだ。

  • 台湾の皆さんは、「諧音(シエイン)」と呼ばれる、こうした同音異義語の掛け言葉で遊ぶのが好きだ。旧正月の新年の年賀状(最近はSNSでのやりとりが主流だが)には、こうした「吉祥語」と呼ばれる言葉が並ぶ。台湾華語で「龍(ロン)」の発音に近い言葉では、先ほど紹介した「隆盛、隆起」の「隆(ロン)」や「栄光」の「栄(ロン)」が好まれる。また華語の「龍(ロン)」の発音が台湾語で「全ての、いずれも」を表す「攏(ロン)」に近いことから「好運龍(攏)吼力(幸運がどんどん来ますように)」、「錢錢龍(攏)總來(お金がジャラジャラ入りますように)」などの言葉が好まれる。台湾語はより具体的、直接的な言い回しが多いようだ。

  • この掛け言葉の言葉遊びは台湾のお節料理、年越し料理の「年菜」でも、縁起を担いで使われる食材や調理法にこだわるところにも表れている。例えば「鶏」は、と大吉の「吉」の華語の音がともに「ji」であることから、特に縁起が良いとされる。また台湾語で「鶏」は「ケェ」と読み、「家」と同じ発音になる。このため、鶏肉を食べることは「起家(家や事業を起こす)」、「家運隆昌」に繋がると考えられているため、よく使われる。そして、丸鶏の方がより好まれ、頭から尻尾まで使うことで「一家団欒」「美滿幸福」を表すことは、昨年もこの時期の放送でご紹介した通り。

  • また、お頭付きのまる1匹の魚の蒸し物や焼き物なども台湾の年越し料理の定番だが、これも華語の「魚(ユィ)」が「余(ユィ)」の音に通じることから、「年年(魚)余(年毎に余裕ができる=お金が儲かる)」という願掛けということだ。日本のお節料理でも、「めでたい」からお頭付きの「鯛」が好まれたり、「まめ(達者)に暮らす」ら「黒豆」が添えられたりするが、これと通じるものがあるのは、東洋世界に共通する思想が底流にあるのではないかと想像すると、実に楽しい。ただ、「武士は喰わねど高楊枝」と見栄を張って、お金儲けという言葉に一種の後ろめたさを感じる傾向にある日本人に比べて、華人社会では、お金儲けは善である、というか究極の人生の達成目標である。したがって、新年の挨拶で最も好まれるのは「恭喜發財」の四文字となる。

  • ここで香港の「四大天王」の一人、劉德華(アンディ・ラウ)さんの歌で『恭喜發財』をOA。 

 

<第2セクション【旧正月二日「初二」は嫁の里帰り「回娘家」】>

  • さて、旧正月の二日目は「初二」と呼ばれ、華人社会の伝統家庭では「回娘家(嫁の里帰り)」と言って、大晦日や元日を嫁ぎ先で過ごした嫁が実家に戻る日とされている。また、娘婿も一緒にやって来ることからこの日を「迎婿日(婿を迎える日)」と言われることもある。昨年、2023年1月23日付の「聯合新聞網」の記事からの引用になるが、以下「回娘家」の起源について解説していきたい。この習俗には大きく二つの説が存在する。一つは、明朝の初代皇帝である朱元璋(洪武帝)の時代から始まったとされる説である。

  • 昔話風に。「昔々、明の洪武帝の4番目の娘に安慶という名の姫がおった。安慶姫はどうしたことか、品行の悪いことで有名な欧陽倫という男に嫁いでしまった。嫁ぎ先での暮らし向きに恵まれなかった安慶姫は、年越しの際に、自分の姉や妹たちが実に楽しそうに過ごしているのを見て負い目を感じ、皇帝と皇后の住まいである皇宮にこっそりと戻ったそうな。そして両親である皇帝と皇后に向かって、正月を実家である皇宮で過ごさせてほしいと頼み込んだんじゃ。ところが、それまでの中国の伝統的な習俗では、一度嫁いだ娘は、夫に付き従い、嫁ぎ先に留まって新年を迎えるのが慣しだったんじゃ。これは皇室とは言え、破ってはならぬ暗黙の掟だったんじゃな。そこで父親の洪武帝は直ぐに娘の安慶を嫁ぎ先へと送り返したんじゃが、どうしたことか、元日の朝早く安慶姫は皇宮に舞い戻って来たんじゃ。これには父親の洪武帝も大激怒。娘に「羊跪乳,媳敬婆(子羊は跪いて乳を飲み、嫁は姑を敬う)」と「天經地義(疑問の余地のない道理、絶対普遍の真理)」との書を贈り、先ずは舅と姑に新年の挨拶をしてから、実家である皇宮には正月の二日に出直すようにと命じたそうな。これを受けて、下々の民も洪武帝のやり方に倣い、正月二日に「回娘家(嫁の里帰り)」する習俗が広まったんだとさ。」

  • もう一つの説は、民間の言い伝えから来たとするもの。こちらも昔話風に。「昔々、あるところに娘がおった。父親の反対も顧みず、親子の縁を切ってまで貧乏な夫の元に嫁いだんじゃ。その後は、父親がこの世を去るまで実家に戻ることは無かったそうな。ところが、娘のことをずっと気にかけていた母親が娘と娘婿を実家に呼び、豪勢な料理を囲んで大団円の宴席を儲けたそうな。この話が後世に伝わって、だんだんと正月の二日に「回娘家(嫁の里帰り)」の伝統が形作られていったんだとさ。めでたし、めでたし。」

  • 旧正月は台湾やその他の華人社会では、一年で最も大切な家族団欒の節気だが、現代の若い夫婦の間では、旧正月は一体どっちの実家に帰るのかで揉めることも少なくないと聞く。しかし、伝統的な習俗に従えば、嫁いだ女性は旧正月二日以外の、大晦日、元日、四日、五日は全て実家に戻ることは、厳格にタブーとされてきた。このタブーを破ると福が逃げていき、実家が廃れるとの固定観念があったからとされる。ただし、逃げ道も用意されていて、嫁いだ娘がどうしても正月二日以外の日に実家に戻らなければならない時には、「油」を持って帰れば良いというものだ。これは「油」と遊ぶの「遊」の華語の発音がともに「ヨウ」であることから、いやいや「私は実家に戻ったのではなく、ただ油を売りにふらっと立ち寄っただけよ」ということになり、許されるらしい。こんなところにも、同音異義語の言葉遊びが顔を出すのは面白い。

  • 旧正月二日に、嫁が実家に戻ってはいけないという以外にも、この時期の伝統的なタブーはまだある。娘が3年連続して実家に戻らなければ、もうその娘は二度と実家に足を踏み入れてはならないというものもある。海外に暮らすなどして物理的にどうしても帰れないこともあるだろう。その場合はどうするのか?大丈夫、しっかり対策も用意されている。旧正月二日に戻れない時には、自分の身代わりに普段着ている服を実家に送れば良いのだそうだ。なるほど。これは道教の廟などで本人が厄除けに行けない時も、同じようにその人が身につけている服におまじないを掛ける風習にも通じる。

  • 旧正月中のタブーはまだある。旧正月中は昼寝をしてはいけないというものだ。この時期に昼寝をするとその一年の運気が下がると言われている。とりわけ、嫁に行った娘が「回娘家(嫁の里帰り)」した際には、絶対に昼寝は御法度という。これを破れば、怠け癖がついてその一年の活力に影響するばかりでなく、一家全員の運勢にも影響を及ぼすと言われる。昼寝以外にも、旧正月中は洗濯、掃除、ゴミ出しもタブーとされる。これは福や運気を洗い流したり、掃き出したり、捨て去ったりしてはならないということだそうだ。

  • 旧正月のタブーをもう一つだけ、紹介しておこう。「紅包」と呼ばれるお年玉や手土産を渡す際には、偶数でなければならないというものだ。これは華人社会には「好事成雙(対に成ることが良いこと)」とされ、お年玉は200元、600元、800元、2000元、6000元、8000元というように偶数の金額で渡すのが基本だ。しかも「六」は華語では「流」と同じ「リウ」という発音で、物事がスムーズに流れることに通じ、「八」は「發」に近い音(広東語ではともに「ファッ」)で「發財(お金が儲かる)」ことに通じることから好まれる。日本でも「八」は「末広がり」で縁起の良い数字とされることにも通じるように思う。偶数でお金を包むのは結婚式の際のご祝儀も同じである。

  • 旧正月の二日に「回娘家(嫁の里帰り)」をすることは、一つの伝統的な習俗であり、文化の継承という点では、大切にしなければならない面もあるとは思うが、現代の社会の枠組みや生活スタイル、価値観と合わなくなってきた部分も多いと思う。いつであろうと家族が顔を合わせ、お互いの平安を喜び会える機会を作れることが、一番の幸せなのではないかと私は思う。伝統と現代の相剋はここにも現れている。

  • ここで伝統的なお正月らしい歌をお聴きただきたい。周小春(チョウ・シァオチュン)さんの歌で『拜年(新年の挨拶)』をOA。

 

<第3セクション【今年の旧正月は海外脱出組が続出】>

  • さて、伝統的には、旧正月は実家で家族とともに過ごすのが一般的ではあるものの、今年は海外で過ごす人も多い。今年1月31日付の「風傳媒(The Storm Media)」の報道では、桃園空港の旧正月の期間の輸送量は116万人・回に達する見込みで、これは新型コロナが流行する前の2019年時点の9割ほどにまで回復する数字だという。日本の各地にも今、家族連れやカップルの多くの台湾人観光客の姿が見られるはずだ。日本の皆さん、街で台湾の方々を見かけることがありましたら、暖かく接していただければと思います。日本を旅行中の台湾の皆さんは、寒さ対策をしっかりしていただいて、ぜひ最後まで健康に楽しい旅行を続けていただき、たくさんの思い出を持ち帰って欲しいと思う。

  • その一方、海外旅行の回復に伴い、昨年まで堅調だったこの時期の国内旅行は少なからず打撃を受けているらしい。私の定宿にしている台湾中部の温泉ホテルも、今年は旧正月時期の予約は伸びず、その煽りということになってしまうのかもしれないが、昨年まで旧正月の元日から四日まで八得力樂團にお声が掛かっていたそのホテルでの新春ライブのステージも、今年は見送られることとなった。その代わり、今年の旧正月の二日と三日、すなわち今日と明日は桃園のテーマパークでの新春ライブのチャンスをいただくことができた。いずれにしても、今年も春も早よからお仕事をいただけたのは、大変有り難い。辰年の今年も音楽、演劇、文筆、そしてこのラジオ番組に全力を注ぐ所存。今年もご視聴のほどよろしくお願いしたい。

  • 旺福樂團(Won Fu)さんの『親一下!清心好過年!(キスしよう!スッキリとした気持ちで新年を迎えよう!)』をお聴きいただきながら、お別れしたい。

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