History page of Radio Taiwan International (Rti)
close
Rti台湾国際放送公式アプリをインストール
開く
:::

馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」) - 2023-10-08-交通部観光署『凰金遊程 Golden Years』南投ツアーに参加して

  • 08 October, 2023
  • 按讚加入馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)粉絲團
馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)

<第1セクション:南投県鹿谷で茶摘み・茶揉み体験>

  • アフターコロナの現在、どこの国でも自国へのインバウンドや国内旅行に大変躍起になっている。もちろん、台湾も例外ではない。先日、台湾から日本への観光客の数が大幅に増えているのに対し、日本から台湾にやって来る観光客の数は伸び悩んでおり、両者の差は5倍以上にもなっているとの報道が先日あった。コロナ禍前の2019年には、台湾から日本への観光客が500万人強、反対に日本から台湾への観光客がおよそ200万人弱だったから、もともと2.6倍だった格差が、今では5倍にまで広がってしまったということだ。この原因には様々な要素があるが、主なものとして日本国内の景気の低迷で消費力が落ちている加え、台湾元から見た日本円の為替レートがコロナ禍の前後で30%も下落してしまったこと、航空会社のフライトの本数が以前の水準までまだ回復していないことが挙げられる。台湾から日本へ旅行に行くのはよりお手軽に、日本から台湾に来るのはかなり割高となってしまい、先ほどお話しした相互の観光客の格差に拍車をかける結果となっている。

  • このような状況の下、台湾の行政院(政府)は、今年の9月15日に交通部傘下の「観光局」を「観光署」(日本語では「観光庁」)へと格上げした。タレントの川口春奈さんをイメージキャラクターとして迎えたり、台湾への観光客に抽選で5,000元(およそ25,000円)が当たるキャンペーンを実施したり、あの手この手で呼び水となる企画を繰り出している。その一環かどうかは定かではないが、『凰金遊程 Golden Years』と銘打ち、「樂齡族」と呼ばれる55歳以上のシニアを対象とした南投県でのメディア向け体験ツアーに参加する機会を先月いただいた。このツアーでは、南投県鹿谷郷での茶摘み・手揉みの製茶体験、杉林渓森林生態リゾートエリアの散策、台湾「原住民族」のブヌン族の集落見学などが含まれ、1泊2日の日程だった。

  • 南投県は台湾では唯一海に面していない県で、日本統治時代には「新高山」と呼ばれていた台湾最高峰の玉山や観光地の阿里山連峰、台湾最大の人造湖、日月潭などを思い浮かべる方も多いだろう。今回森林浴のために足を運んだ杉林渓は、実は阿里山との直線距離は10キロメートルほど。近年は良質の高山茶(海抜1,000メートル以上の高地で採れるお茶)の産地としても知名度を上げている場所でもある。今回茶摘みと手揉み製茶体験で訪れた「山中茶學」のブランドで売り出している「東龍製茶」さんは、その杉林渓の手前の鹿谷郷にある。鹿谷も「凍頂烏龍茶」の原産地として、国内外に知られている。

  • こちらの農園では、「金萱茶」の茶葉を摘ませてもらった。ミルキーな香りがすることで人気の茶種だ。新芽の上の方の3枚ほどを親指と人差し指で摘んでは抜いていく。抜いた茶葉は竹製の腰籠にどんどん入れていく。そして、集めた茶葉を今度は竹ザルに移して広げ、天日干しをし、続いて陰干しをし、発酵を進めていく。手揉みの作業はこの後になる。今回のワークショップでは、時間の関係で、すでに前日にこの乾燥の工程を終えた茶葉が参加者に配られた。手のひらの中心を使って、一定の方向に回転させながら、茶葉が丸まり少し粘りが出るくらいまで手で揉み込んでいく。お茶の爽やかな香りが作業場に漂う。現代では乾燥もこの揉みの作業も全て機械が肩代わりしているのが現状だが、伝統的な工法を学び体験することで、お茶に対するある種の情が湧いて来るから不思議だ。台湾も含む華語圏では「飲水思源」という熟語があり、「水を飲むときにはその源に思いを馳せよ」と言うことだが、これをもじって「飲茶思源」という言葉を思い付いた。お茶を飲むときには、お茶の産地の風景やお茶の農家の方々の苦労や愛情にまで思いを寄せると、さらに味わいも深くなることだろう。

  • 南投県出身の歌手で、俳優としても大活躍の李千娜(ナナ・リー)さんの歌をお聴きいただきたい。9年前のアルバム『愛 到站了』から大ヒット曲の『心花開』をOA。

 

<第2セクション:杉林渓でマイナスイオン浴>

  • 昼食で名物の『甕缸雞(weng-gang-ji / ang-kng-ke)』と呼ばれる甕で蒸し焼きにした鶏の丸焼きをいただいた後、県道151号を上り、さらに渓頭から杉林渓公路を遡って「杉林渓森林生態リゾートエリア」へと向かう。ここは元々木材を運ぶための狭い林道が通っているだけの道だった。登山者の安全なルートを確保するため、林業を本業とする杉林渓会社が組織した阿里山・渓頭公路開発会社と政府と共同で観光バスが通れる公路を開発をすることになっていた。ところが、1978年から1980年にかけて行われた第一期工事を終えたところで、政府がこの計画から降りてしまい、第二期、第三期工事が店晒しになる危機に陥った。それでも、林業しか経験がなかった杉林渓会社は計画を敢行し、現在の「杉林渓森林生態リゾートエリア」までの公路を完成させ、森林や生態系と共存する形で、国立公園並みのクオリティのリゾート観光事業をこの地で成功させることとなった。

  • このリゾート地の目玉は何と言っても「松瀧瀑布(松瀧岩の滝)」だ。野球場の半分がすっぽり入りそうなくらいの大きな山洞の傍に高さ30メートルの滝が流れ落ちる様は、文字通りの絶景だ。マイナスイオンの濃度も、台湾でも屈指の濃さ。多いときには1立方メートル当たり19万個のマイナスイオンで満たされると聞く。滝壺から流れる渓流の水には全長数センチから10センチほどの「苦花魚」の群れが悠然と泳ぎ、海抜1,600メートルの澄んだ空気に包まれ、「台湾油杉」や「水杉」と呼ばれる落葉樹のメタセコイアの林、銀杏、楓、桜もあって、四季折々の木々の美しさを愛でながらの森林浴はまさに至高のひと時だった。これからの晩秋にかけては紅葉が見頃になるだろう。

  • 宿泊した杉林渓大飯店は施設は素朴だが、華やか過ぎず、森林の風景とも上手に溶け合っていた。スタッフも熱心でいつかまた再訪したい、そう思わせてくれる場所だった。唯一残念だったのは、夜に天気が崩れてしまい、スケジュールに入っていた星空を観察できなかったこと。だが、これは次回の楽しみにとっておくこととしよう。

  • ここで2021年の台湾映画で馬志翔さん、陳嘉樺(S.H.EのElla)さんが主演した「聽見歌再唱」の挿入歌の『拍手歌』をお聴きいただきたい。これはブヌン族の合唱曲。

 

<第3セクション【ブヌン料理とブヌン「八部音」】>

  • 翌日、私たちはいったん杉林渓から山を下り、玉山登山の入山許可や登頂証明書を発行する水里まで引き返し、そこから再び濁水溪を遡って信義郷の地利村を訪れた。ここはブヌン族の居住地だ。村のインフォメーションセンターで歓迎の儀式を受けた後、ブヌン族風味の料理の昼食を摂った。調理法は極めてシンプルだが、地物の鮎や小ぶりの苦瓜、南瓜などの新鮮な食材、レモングラスのような香りの「馬告(山胡椒)」や甘い柑橘系の香りのする「刺葱(烏山椒)」等のハーブをふんだんに使った創作料理が振舞われた。その後、村内の達瑪巒(Tamazuan)集落に向かい、「達瑪巒文化藝術團」によるブヌン族の伝統的な歌や踊りなどを見学した。

  • 歌い手・踊り手は平均年齢70歳くらいではないかと思われる高齢者ばかりだった。村の過疎化が進み、若いパフォーマーが集まらないという事情があることは直ぐに見てとれた。それでも、「布農八部合音」と呼ばれるハーモニーは聴きごたえがあった。もともとは祖先と交信をするための儀式の際に歌われるものだと聞いている。先日録音した音源があるので少しだけお聴きいただきたい。

  • 実は以前、台東県の別のブヌン族の集落(歌手で社会運動家の那布さんの本拠地の巴喜告Pasikau集落)を訪れた際に、彼らの歌う「八部合音」の輪の中に混ぜてもらったことがある。その時に一種のトランス状態になり、天から降り注ぐ音色のシャワーに包まれ、何とも不思議な気持ちとなったことを覚えている。そして、外部の人間をこのように迎え入れてくれた那布さんと集落の人たちには今でも感謝している。

  • さて、今回私が参加したツアーは前半にも述べたとおり、『凰金遊程 Golden Years』と銘打ち、「樂齡族」と呼ばれる55歳以上の壮年からシニアを対象としたものだ。日本にも数十年前に、「フルムーン旅行」という名のシニアのパック旅行があったことを思い出した。やや年齢層が高い層をターゲットにするのであれば、全体的なスケジュールの流れや食事の内容などをもう少し改善する工夫はあるとは思うが、台湾の自然の美しさや文化の多様性の新たな側面を知るのには、大変貴重な機会となった。関係の皆さんには心より感謝したい。

  • 台湾に多くの日本の皆さんにご旅行に来ていただきたいとの思いを込めて、バッテリー樂團が花蓮県玉里鎮の安通温泉のために書いた『安通温泉行進曲』(日本語版)を最後にお聴きいただきながらお別れ。

Program Host

関連のメッセージ