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馬場克樹の「とっても台湾」-2023-2-26_台北散歩日和:双連市場界隈にて

  • 26 February, 2023
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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)
高山娃娃菜

<第1セクション【YouBikeで双連市場、そして台北市文昌宮へ】>

  • 2009年に台北市内の15か所のレンタルステーションからスタートした自転車のシェアリングシステムYouBikeは、現時点(2003年2月7日時点)で1,245か所にレンタルステーションが拡大。30分以内の利用であれば20元、MRT(地下鉄)やバスとの乗り継ぎでは割引もあり、多くの市民の足の一部に。
  • 自宅からYouBikeで10分ほどの双連市場に足を運ぶ。双連市場は、主に露天の行商が農水畜産物を売っている伝統的な朝市。道教の学問の神様、文昌帝君が祀られている台北市文昌宮を中心に、250メートルほどの民生西路45巷沿いに南北に展開。「北に孔子、南に文昌」という言葉があるが、台湾でも文昌帝君は広く信奉されている。日本の天神様のような存在で、旧暦の正月はもちろんだが、大学入試や高校入試等の受験シーズンには、特に多くの参拝客が。
  • さて、文昌帝君に合格祈願する際には、三種の野菜をお供えする決まりがある。すなわち、大根、台湾セロリ、ネギ。なぜか。台湾語では大根のことを「菜頭(ツァイタウ)」と呼んでいる。この発音が「幸先の良いスタート」を意味する「好彩頭(ホォツァイタウ)」の発音に通じるから。台湾セロリは台湾華語で「芹菜(チンツァイ)」と呼ばれるが、「芹(チン)」の字が「勤労(チンラオ)」の「勤(チン)」の字と同音であることから、受験勉強に勤しむようにとの意味が。ネギも同じように「葱(ツォン)」の台湾華語の発音が「聡明(ツォンミン)」の「聡(ツォン)」に通じることから、賢くなるようにとの願いが込められた。
  • 台湾にはこのような同音異義語の語呂合わせによる決まりごとが実に多い。たとえば、商売繁盛の祈願でパイナップルが供えられるのは、パイナップルの台湾語「鳳梨(オンライ)」が、裕福や繁栄を意味する「旺来(オンライ)」と同音だから。ただし、病院ではパイナップルのお供え物は禁物。病院が繁盛するということは、つまり病人が増えることになり、これは憚られる。同音異義語にまつわるタブーには、時計をプレゼントの品としてはいけないというのもある。時計を送るを意味する台湾華語は「送鐘(ソンツォン)」であるが、これは葬送を意味する「送終(ソンツォン)」と同音になってしまうから。傘、扇子、靴、鏡、はさみなども離別や破滅を想起させる言葉に通じてしまうという理由から、恋人や結婚をする友人などに贈るのはNGである。
  • 王識賢さんの台湾語の歌で『腳踏車』をOA。

 

<第2セクション【正月蔥、二月韭、そして高山娃娃菜】>

  • 文昌宮への合格祈願の参拝客は、先ほどの三種の野菜とともに、受験票のコピーを文昌帝君にお供えする。続いて文昌帝君をはじめ、その廟に祀られているすべての神様に線香を供え、神界の貨幣となる紙銭を燃やす。そして参拝が終わったあとは、お供え物の大根、台湾セロリ、ネギは自宅に持ち帰って調理し、有り難く胃袋に納めるというのが台湾の流儀。台北市文昌宮は門前が生鮮市場なので、いつでもこの三種の野菜がそろっている点が強み。
  • 先述の合格祈願の三種の野菜のうち、冬が旬の大根とネギと並んで、この時期に台湾の家庭の食卓に上る野菜の代表にニラがある。台湾の農作物の旬に関する諺に「正月蔥、二月韭、三月莧(ヒユナ)、四月(空芯菜)、五月匏(葫蘆)、六月瓜(絲瓜)、七月筍、八月芋、九芥藍(カラシナ)、十芹菜、十一蒜、十二白(白菜)」というものがある。冬場のニラは特に甘い。
  • 八百屋の露店を一軒一軒吟味しながら巡ると、ある露店に冬から春先の一時期だけ出回る、今がまさに旬の「高山娃娃菜(カオシャンワーワーツァイ)」が並んでいた。「娃娃(ワーワー)」とは赤ちゃんのこと。ミニ白菜も「娃娃菜」の名で呼ばれてはいるが、双連市場で売られていたのは、中国の四川省原産で1,500メートル以上の高山で育つ「抱子芥菜(パオズジエツァイ)」とも呼ばれる品種のもの。
  • 台湾では高山茶の産地としても名高い南投県梨山、水蜜桃の産地でもある桃園市拉拉山などで栽培されている。娃娃菜にはいくつもの緑の炎状の突起があって、見方によってはややグロテスクな形状。台湾ではこれをスライスして炒め物にして食すことが多い。しかし、私は娃娃菜をさっと湯がいてからスライスし、わさび醤油でいただくのにハマっている。シャキシャキした食感と甘みとほろ苦さが混ざった独特の味わいは格別。まさに大人の味。日本酒のアテにもちょうど良い。
  • 1斤(台湾の1斤は600グラム)弱の大きさのものを露店商から50元で仕入れ、私は再びYouBikeにまたがって自宅に向かう。この日、この娃娃菜が刺身の如くスライスされ、わさび醤油とともに我が家の食卓に上ったことは言うまでもない。
  • デュオユニットの動力火車(Power Station)さんの歌で、高山娃娃菜の産地の梨山のことを歌った『梨山痴情花(Li Shan Flower)』をOA。

 

<第3セクション【萬華下午酒場の日本酒試飲会に参加】>

  • 2月7日のことだが、「萬華下午酒場」で行われた日本酒の試飲会に参加。開業が1596年、400年以上の歴史を誇る東京で最も古いの酒蔵、豊島屋本店さん。創業者の初代豊島屋十右衛門さんが白酒の醸造を始めたところ、江戸中の評判となり、雛祭りに白酒を供える習慣は、何とここから始まったとのこと。もうすぐ雛祭りだが、白酒にこんな秘話が。
  • また、日本語と中国語のバイリンガル落語家の戴開成さんによる古典落語『花見酒』も会場では披露。辛口でキレの良い純米酒、芳醇で余韻が楽しい純米大吟醸酒、ワインのような香りと味の爽やかな純米吟醸酒と言った様々な日本酒を、社長の吉村俊之さんの解説を聞きながら味わう。ちなみに、こちらの蔵元のお酒は、明治神宮や神田明神の御神酒としても奉納されているとのこと。
  • 吉村社長によると、400年の間には倒産の危機が3回あった由。すなわち、明治維新、関東大震災、東京大空襲。明治維新の際にには顧客の中心だった武士への売掛金が回収できなかったそう。それでも、これだけの期間暖簾を守り続けることができたのは、家訓である「不易流行」の教えを守り続けたから。「不易」とはいつまでも変わらないこと。品質、信用を守ること。一方、「流行」とは変わること。時代の空気を取り込んで変化すること。相反する二つのことを調和するバランス感覚の大切さを説く。「不易流行」は俳人の松尾芭蕉の言葉。
  • 今月の歌、私の作品で『百年の恋』をお聴きいただきながらお別れ。

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