今日ご紹介するキーワードは「杯底毋通飼金魚(Pue-té m̄-thang tshī kim-hî.)」。
これは台湾最大の方言、台湾語の表現なんですが、一体どういう意味でしょうか?
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“AI(人工知能)の父”と呼ばれる、アメリカの半導体大手、NVIDIA(エヌビディア)のCEO黃仁勲(ジェンスン・フアン)氏が先日、5月20日から23日にかけて北部・台北市で開催された世界最大級のIT見本市、「台北國際電腦展(COMPUTEX TAIPEI 2025)」で基調講演を行うため、台湾を訪れていました。
黃仁勲氏は、幼少期を南部・台南で過ごしたことから台湾出身のスター経営者として絶大な人気を誇っていて、近年、黃仁勲氏が台湾を訪れるたびに、「誰と会うのか」、「どこのイベントに出席するのか」、「どこで食事をしたのか」とその一挙手一投足が注目の的となっています。
今回の滞在でも、まるで日本の新聞に載っている“首相動静”の様に細かく報じているメディアもありましたよ。
そんな中、メディアの取材を受けていた黃仁勲氏─。
あるインタビューでは、取材後にプレゼントが贈られました。
黃仁勲氏に、スコッチウイスキーが好きだということから台湾最高峰の「玉山」がグラスの底にデザインされた“ロックグラス”、そして台湾土産として一時期とても話題となった金魚の形をしたティーバッグ入りのお茶、“金魚ちゃんティーバッグ”のプレゼントが用意されていたんです。
なぜこの組み合わせのプレゼントだったのかというと、今日のキーワード、「杯底毋通飼金魚」という台湾の諺からとのこと。
この表現、直訳すると「コップの底で金魚を飼うな」となります。どういう意味なのかというと、「金魚が泳げるほど酒を残すな」、つまり「杯の中のお酒は残さず一気に飲み干す」という意味なんです。
台湾のお酒の席での文化では、おもてなしや友情の証として出されたお酒や飲み物を最後まで飲み干すことが礼儀とされる場面があることから、この諺はそれをユーモラスに表現したもので、もしグラスの底に飲み物が少し残っていると「そこに金魚でも住んでるの?」と冗談交じりに突っ込まれることがあるんだそうです。
このインタビュアーが黃仁勲氏に“ロックグラス”と“金魚ちゃんティーバッグ”を贈ったのは、この諺にちなんで、そして黃仁勲氏が台湾語もわかるということで、台湾文化のユーモアや、“飲み干す精神”の友情の象徴としておもてなしの意味合いがあったようです。
ちなみに、この諺がタイトルの曲があります。
作曲したのは、台湾の偉大な作曲家で合唱指揮者であった、呂泉生氏─。
他の台湾バラードとは異なり、明るく陽気な作風。そのため、戒厳令が敷かれていた当時は、お酒を飲んで喜び楽しむことを勧めるのはもってのほかだとして歌うことを禁止されたこともありました。
ただ実はこの曲は、1947年に起こった228事件以降、戦後、国民政府と共に台湾に移住してきた「外省人」と、戦前より台湾に定住している「本省人」の関係が引き裂かれ溝が深まる中、「外省人」も「本省人」も、みんなが座って酒を飲み、グラスの底にお酒を残さず飲み干すことで、お互いの心を開き、将来、平和な生活を送れるようになることを期待し、民族の融和を象徴する意味を持っている1曲なんだそうです。
今はいろんなルーツを持つ人たちが同じテーブルを囲み、みんなでグラスを傾け、笑い合うことができる台湾。
そんな飲み会の席で、誰かのグラスにお酒が残っていたら、「ほら、『杯底毋通飼金魚(グラスにお酒残ってるよ)』。そこに金魚でも飼ってるの?」なんて冗談が飛び交う、そんなユーモアある文化が今も息づいていますよ。
Rti 台湾国際放送
Rti 台湾国際放送 
