<第1セクション:フルーツ王国に異変、バナナの価格が高騰>
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リスナーの皆さん、こんばんは。今年の冬は寒かった。加えて、3月に入っても台北市内で10度近くまで気温が下がることがあり、雹が降ったり、山間部では雪も散らついたりしている。台北で暮らし始めてから18年が経つが、こんなことは初めてだ。最近のニュースで私の目に止まったのは、台湾では一年を通じて価格の優等生と言われてきたバナナ「香蕉」の高騰だ。フルーツ王国・台湾で今何が起こっているのか?
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話は8か月前まで遡る。昨年は台風の当たり年だった。この数年間は台風が台湾に近づくことはあっても上陸には至らず、そのまま進路が北に逸れていく、つまり日本の方角に向かっていくことがほとんどだった。ところが、2024年は台風3号(GAEMI、ケーミー)が7月21日に、18号(KRATHON、クラトーン)が10月3日に、21号(KONG-REI、コンレイ)が10月31日にそれぞれ台湾に上陸。1年に3つ以上の台風が上陸するのは2008年以来、実に16年ぶりのことだった。そして、10月下旬に勢力の強い大型台風が上陸したのは、観測史上初めてのことだった。これらの台風が中南部のバナナの産地を直撃した。
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他の一般的な果樹とは異なり、バナナは「草本(そうほん)」に分類される巨大な草である。バナナの「幹」に見える部分は、実は「偽茎(ぎけい)」と呼ばれる葉が重なり合ったもの。バナナは地下に「塊茎(かいけい)」と呼ばれる部分、地下茎を持っており、これが生きている限り新しい芽を出し続ける。一方、地上の偽茎は約1〜2年で花を咲かせ、実をつけた後に枯れる。枯れた偽茎の代わりに、新しい芽「吸芽(きゅうが)」が成長し、次のバナナを実らせることになる。したがって、バナナの個々の偽茎が枯れても、地下茎が生き続ける限りは実がなる多年生の植物である。そして、台湾のような温暖な地域では、概ね8か月ほどで収穫できるようになると言われている。
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ところが、台風の強風にさらされると、巨大な草であるバナナは樹木のように屈強ではない。ことごとく倒れてしまい、実がなるはずの地上部分の偽茎は枯れて腐ってしまう。大雨が続くと地下茎も流されたり、根腐れしてしまうこともあるだろう。今、市場に出回っているバナナはちょうど昨年の台風3号の大きな被害から生き残ったものが、改めて芽を出し実を付けた時期のものであるため、そもそもその絶対量が限られる。したがって、市場価格が高騰しているということらしい。
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3月10日付けの中央社の日本語ニュース『フォーカス台湾』には、「台湾でバナナ価格高騰 台風の影響で生産量激減 産地では警察が窃盗警戒」のタイトルで次の記事が掲載されていた。
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「台湾でバナナの価格が高騰している。昨年、複数の台風が台湾を襲った影響で、生産量が激減していることが背景にある。主要産地の一つである南部・高雄市旗山では、市警察局が民間と協力し、夜間のバナナ園での窃盗を警戒している。」とのことだ。バナナ園に盗みが入るというのは、尋常な事態ではない。いったいどのくらい価格が上がったというのだろうか。
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『フォーカス台湾』の同じ記事によれば、3月3日~9日の1週間の台北市第一青果卸売市場のバナナの平均価格は、キロ当たり105.4台湾元(約473円)だったそうだ。前年同期の平均価格は40.4元(約181円)だったということだから、ほぼ2.5倍だ。高雄市旗山区農会(農協)の担当者によると、昨年は度重なる台風の被害で、旗山などの産地では、現在の生産量は平年の約2割ほどまで落ち込んでいるということだ。生産量がこれだけ落ち込んでしまえば、市場価格が高騰するのは避けられない。
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また、高雄市政府警察局旗山分局によると、3月7日には同市内の農園で、被害額約5000元(約2万2400円)のバナナの盗難が発生したそうだ。警察は「バナナの盗難防止のため、管轄区域内の主要バナナ産地を対象に夜間照明設備や監視カメラの設置を支援し、深夜の巡回を強化した他、警察を支援する民間防衛組織、義勇警察や地元農家などと共同で、バナナを守る『見回り隊』を結成し、警備に当たっている。」とのことだ。バナナにボディーガードがつく時代が来るとは、予想だにしなかった。
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なお、旗山区農会の担当者の発言として、「バナナ栽培の復旧には7〜8カ月かかる。農業部(農業省)農糧署の姚志旺副署長は、バナナの価格が比較的安定するのは5~6月ごろになるだろうとの見通しを示している。」とのことだ。どうりでコンビニエンスストアのお弁当やおにぎり、サンドイッチのコーナーにいつも並んでいたバナナが消えてしまったわけだ。しばらくの間、バナナは高級品と化し、庶民の口からは遠のきそうだ。
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ここで、台湾中南部のバナナの産地に今年は台風が余り襲来しないことを願いつつ、董事長樂團/The Chairmanさんの演奏で『眾神護台灣/The Gods Bless Taiwan』をOA。董事長樂團さんは、先月から今月初めにかけて、台湾の文化部(文化省)の派遣で「Brilliant Taiwan 豐台灣」と題する春節文化訪問団のアジアツアーの一員として、東京、大阪、沖縄でも公演を行ったばかりだ。リスナーの皆さんの中にも彼らのステージをライブで観た方もいらっしゃるかもしれない。
<第2セクション:サツマイモよ、君までも…>
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最近価格が高騰したのはバナナだけではない。サツマイモの値上がりも半端ではない。実は一昨年の2023年10月の台風「コイヌ(小犬)」が雲林や台南などの主要な産地を直撃し、大きな被害をもたらした。その結果、収穫量が激減、価格が急騰し、過去10年間で最高値を記録した。例えば、「紅心地瓜」と呼ばれる台農66号の場合、2023年1月初めの卸売価格は1キログラムあたり約10.3元だったが、12月には34元まで上昇し、1年で3倍にまで高騰したことがあった。
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そもそも生産量が落ちているところに、冒頭でも述べたとおり今年の冬は寒かった。そして、3月になってもまだその寒さを引きずっている。度重なる寒波の到来で、サツマイモが収穫期の3月になっても大きくならないのだ。産地の台南市新化の農民は「こんなことはかつてなかった。サツマイモがお箸や楊枝の太さにしかならないんだよ」と三立テレビの取材に答えていた。8割ほどのサツマイモが寒さの影響をもろに受けてしまったと嘆く。当然品薄だから、サツマイモの値段は高騰する。というより、サツマイモの価格は一昨年から高止まりが常態化している。一昨年と昨年の台風に加えて寒波続きのこの冬の気候は農家にとってはまさにトリプルパンチだ。
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凍えていたのはサツマイモだけではない。花蓮県の南部、台東に隣接する玉里の三民地区では、養殖の「呉郭魚(ティラピア)」の20%が凍え死んでしまい、200万元(約900万円)の被害が出ている。もともと暖かいところに生息する魚ゆえ、寒さにはめっぽう弱い。今年の寒さは文字通り彼らの骨身に沁みたことだろう。玉里鎮役場は「漁業自然災害調査報告及び救済作業規程」に基づき、台湾の農業部に現金の補助や低利貸付などの救済措置を求める方針という。
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ところで、このティラピア、元々はアフリカや中近東が原産と言われる。台湾では最もポピュラーな養殖魚の一つで価格も比較的安く、淡白で癖もなくタイに似た美味しい白身魚だ。もともと日本でも「イズミダイ」の名前で流通していたが、最近台湾では改良種が「台湾鯛」のブランド名でも売られている。しかし、種としてはカワスズメ科の淡水魚で、「タイ」の名が付いていても鯛とは異なる。ちなみに、台湾でこの魚が「呉郭魚」と呼ばれるようになったのは、日本統治時代に台湾籍の日本兵だった呉振輝さんと郭啓彰さんがシンガポールから引き上げる際にこの魚を台湾に持ち込み、その後広く養殖されるようになってから、この先人たちの功績を記念して後世の人たちから付けられたからだそうだ。
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ではここで香港の四大天王の一人劉德華(アンディ・ラウ)さんが歌った『冰雨』をOA。凍えて大きく育たなかった「地瓜」サツマイモと「呉郭魚」ティラピアに捧げる哀悼の歌としたい。
<第3セクション:禍福はあざなえる縄の如し、イチゴ農家には追い風>
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寒さで凍える農作物や魚がある一方、冬の果物イチゴにとっては寒さは追い風となる。同じく3月10日の三立テレビの映像では、台南市帰仁のイチゴ農園にやって来た観光客は「こんなに寒いのに3月になってもまだイチゴが採れるなんて」と驚いていた。というのも、イチゴの収穫はこの辺りでは例年は2月いっぱいで終わりを告げるからだ。だが、今年は寒いからこそ、イチゴの収穫期が逆に延びているのだ。農家の張さんはこのように説明してくれる。「気温が30度を超えない限り、イチゴは花を付け実が成り続けるんだよ」。雨が少なく寒い方が、イチゴの生育にはむしろ適していたのである。
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イチゴが台湾に持ち込まれたのは、日本統治時代の1910年代と言われている。この頃には、日本の農業技術が盛んに台湾に導入され、イチゴの栽培も試みられた。日本の品種を使って栽培が広まり、台湾の気候条件に適応した品種も開発された。とは言え、もともと台湾より寒い気候の日本にルーツのある台湾イチゴ。寒さに強いのはDNAが記憶しているということか。
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「禍福はあざなえる縄の如し」というが、本当にそのとおりである。一つの現象でも望ましい面とそうでない面が混在し一体化していることは、現実的にはよく起こりうることだ。調子が良くても浮かれず、逆に悪くてもめげずに、目の前にあることを一つ一つ淡々と進めていこう。寒さが味方となったイチゴ農家も、仇となったサツマイモ農家やティラピアの養殖家も、あなたも私もお天道様には逆らうことはできないのだから。
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本日のお別れの曲は、滅火器/Fire EXさんの演奏で『晚安台灣(おやすみ台湾)』をお聴きいただきたい。「おやすみ台湾、明日また陽が上れば良いことあるさ」とサビで繰り返されるこの曲を、この冬大変な思いを強いられた方々への応援歌としてお届けしたい。どうか今年は気候に恵まれて、バナナが豊作で、サツマイモやティラピアが大きく育ちますように!
Rti 台湾国際放送
Rti 台湾国際放送 
