南北に細長く、さつまいものような形をした台湾本島は、中南部・嘉義県と東部・花蓮県を通る北緯23.5度地点の北回帰線を挟んで、北部が亜熱帯、南部が熱帯に属しています。そんな、年間を通じて比較的温暖な気候に加え、島全体に様々な標高の山が連なり複雑で入り組んだ地形であるため、多様な自然環境が形成されています。希少価値の高い植物や動物の数は世界有数で、台湾に生息する15万種以上の生物のうち、4分の1は他にはない貴重な固有種と言われており、日本ではみられない植物や動物もいます。そのため「北半球を代表する生態系の縮図」、または「世界屈指の自然の宝庫」なんて呼び名まであるほどです。
今回は、そんな、日本には生息していない貴重な生き物のうち、ある可愛らしい動物についてご紹介します。
その名前「カニクイマングース」といいます。初めて聞いた人はなんだか、「カニクリームコロッケ」と聞き間違えてしまいそうな名前ですが、その名の通り「カニ」を主食とするマングースなんです。
この「カニクイマングース」をご紹介する前に、そもそも「マングース」とはどんな動物なのかについて説明すると、全長50cmから60cmの小型の肉食ほ乳類のことです。日本には、元々は生息していませんでしたが、1910年に猛毒を持つハブや野ネズミ退治のため、バングラデシュから沖縄県に持ち込まれたのが始まりです。その後1979年には鹿児島県の奄美大島にも同様の理由で持ち込まれました。実は私が先ほど可愛らしいとお伝えしたマングースの一種、「カニクイマングース」は、現在台湾で「保護すべき種」の一つに指定されているほど、大切に保護されている動物です。
台湾では「野生動物保護法」に基づき野生動物に対する保護レベルが3段階に分けられています。それによると、最も絶滅の危機に瀕している、保護すべきだとされているレベルが一番高い動物を「絶滅危惧種」に指定しており、その次のレベルとして、「特定の場所にしか生息しない、または生息している数が少ない動物」に対し「貴重で希少な種」に指定しています。
その次に、「個体数はまだ希少と言える基準に達してはいないものの、その絶滅が危ぶまれている動物」を「保護すべきその他の野生動物」として指定しています。
今回のテーマ、「カニクイマングース」はこの3番目のレベルに分類されているのです。その原因として、元々は山間部にある渓流付近の岩穴や洞窟、また、その付近の湿った森林を生息地としているのですが、人間による土地開発や環境汚染により、そのすみかがどんどんと減ってしまっているためです。
現在では、台湾にいるマングースの中で唯一、保護すべき種に分類されています。
ではそんな、貴重な「カニクイマングース」、まだ具体的な特徴を説明していませんでしたのでここでご紹介。
生息地は台湾のほか、中国南部、東南アジア、インドの北西部などです。
大きさは大体犬と猫の中間くらいで、細身の体に小さな丸い顔と小さな耳、尖った尻尾があり、非常に可愛らしくイタチのような見た目です。また、体全体に茶色から灰色を混ぜたような色をした、触り心地は硬いものの見た目がふわふわとした毛が生えているのですが、これは川で泳いだり潜ったりして餌を捕食するのに役立ちます。
その見た目から、「藁を編んで作った雨具である蓑(みの)のようなマングース」や「膨らんだ尻尾の狐」という別名でも呼ばれています。
マングースは泳ぎが苦手な種類が多いのですが、例外的にこのカニクイマングースは泳ぐのも潜るのもとても上手で、カニだけでなく魚や貝類も捕食します。しかもカタツムリや昆虫、蛇までも食べ、そのキュートな見た目に反して肉食なんです!そんな大胆なカニクイマングースですが、周囲にとても敏感で、足も速いため、その姿を直接観察するのが困難で、よく川付近に残された足跡や、甲殻類や昆虫の残骸といった捕食の痕跡を見つけることでその生存を確認されています。足跡で生存確認なんて、可愛らしい方法ですね。人間による汚染が少ない小川や森林であれば生息している可能性があるので、もし運良くその姿を見られれば、その場所は「健全な生態系があり自然豊かな場所」ということになります。
最近では台湾南部・嘉義県東部に位置する、嘉義県最大の村、「阿里山郷」の竹林の中で、その元気な姿が確認されました。
見つけたのは、主に阿里山のある一帯に多く暮らしている原住民族「ツォウ族」のある一人のハンターです。そのハンターが定期的に行っている自然の中でのパトロールをしていた際に、幸運にも竹林の中からひょいと顔を覗かせたカニクイマングースを見つけ、撮影することに成功したのです。
このことに対し農業部林業及び自然保育署嘉義分署は、「阿里山のある地域が、完全性の高い生態系を有した場所である事を証明する発見だ」と喜びの声をあげています。一方で、近年、カニクイマングースの生息地が人間の開発によって徐々に減少していることに対する警鐘も鳴らされています。そんな中、農業部の同署は人々に対し、森林などの生息地の保護に注意を払い、生態系への影響を減らすために、野生動物に遭遇したら「触らない、干渉しない、餌を与えない」の3つの原則を守ることを強く求めています。
これまで、南部の嘉義県の他にも、台湾各地でカニクイマングースの生存が確認されています。例えば、台湾の北部から中部にかけて位置する、台湾で2番目に高い山「雪山(せきざん)」にある国立公園「雪霸国家公園(せっぱ-こっかこうえん)」や、東部の山間部に位置する太魯閣国家公園といった高い山にある国立公園。さらには、北部の新北市に位置する、人が住んでいるような標高が高くない山間部でも確認されています。しかしこういった人が住んでいる場所では自動車などによる野生動物の衝突死が多く発生しており、2011年から2020年の過去10年間では220匹のカニクイマングースの衝突死が確認されています。そのため近年、政府はドライバーに対して注意を促す動物警戒標識を設置し、市民に通行時の減速を呼びかけています。これによりカニクイマングースだけでなく、他にも様々な野生動物を保護することにも繋がるのです。
*私からの一言
これからも、このような野生動物を保護するための取り組みが全土で進められていくことを願います。
Rti 台湾国際放送
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