<第1セクション:招き猫が主神?「招財大賺吉の祭」>
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リスナーの皆さん、こんばんは。あと6日で二十四節気の一つで、一年で昼の時間が最も短くなる「冬至」を迎える。台湾ではこの日はあったかい「湯圓」と呼ばれるピーナッツや胡麻や小豆などの餡の入った汁団子を食べる風習がある。こちらでよく聞く言い方で「吃湯圓,人團圓(汁団子を食べれば、人々は円満になる)」というものがあるが、これは団子の「湯圓(タンユエン)」と円満、団欒を表す「團圓(トゥアンユエン)」の発音が似ていることから掛け言葉になっているのである。また、もともとは中華圏の伝統的な陰陽の考えに基づき、一年で一番夜が長い、すなわち「陰」の時間が長い冬至に「湯圓」を食べることで、「取圓以達陽氣(「圓」=「陰」を取って「陽」を補う)」ということになる。
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さて、先月の23日、24日の話になるが、台北の下町の萬華で「招財大賺吉の祭(財を招き吉を呼ぶお祭り)」という名のちょっと風変わりなお祭りが開催された。昨年に引き続き、今年が2回目の開催だったが、昨年を数倍上回る規模となった。以前紹介したこともあるが、昼呑みを銘打った「萬華世界下午酒場」のオーナー・李政道(リー・ヅェンダオ、仲間内からは「まさみち」と呼ばれる)さんが音頭を取り、建設会社忠泰グループ傘下の文化創造プラットフォーム「新富町文化市場」(萬華世界下午酒場が入居する施設全体、およびその運営団体の名称)、そして「新富町文化市場」に隣接するガチの伝統市場の「東三水市場自治会」、この三者が共同で主催する地元民による地域振興のお祭りだ。
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このお祭りには、さまざまなイベントが用意されていたが、メインイベントは11月24日に行われたお神輿の萬華市街の巡りだ。担ぎ手は地元の東三水市場の商店街の人々を中心に、台湾の在留邦人もこれに加勢していた。日本の神社のお祭りとも、台湾の道教の廟のお祭りとも違っていた。神輿の担ぎ手の掛け声からして「ワッショイ」でも「ソイヤ」でもなく、「喵(ミァオ)」という猫の鳴き声なのだ。それもそのはず、神輿に担がれているのは、なんと「招き猫」なのだ。より正確に言えば、普段は「萬華世界下午酒場」のホールに設けられた祠に鎮座している招き猫を、財を呼ぶという文脈で神様に祭り上げているということになると思う。
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一言断っておくが、彼らはふざけてこのようにしているのではない。現在、神様として崇められている存在は、過去を遡れば、実在の人物であったり、伝説上の人物であったり、はたまた日本の八百万の神のように、普段は見えない存在である竈門の神様だったり、トイレの神様だったりする。日本には狐を農業の神様・稲荷神の使い、あるいは稲荷神そのものとする稲荷信仰だってある。動物でも神様になる資格はあるのだ。ある意味では、この祭りを通して、これまでは神様としてまでは崇めることはなかった招き猫を、新顔の財神として人々によって神格化されていく過程、言い換えれば、新たな宗教の誕生の現場に我々は立ち会っていると言えるのかもしれない。
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先に述べた「萬華世界下午酒場」の李政道さんは、自身のFacebookページでこのように語っていた。「(友人の)施佩吟(シー・ペイイン)さんには、あなたアタマ大丈夫と言われ続けてきたけど、それは否定しない。たぶん頭のいかれたやつだけがこんなこと思いつくんだろうな。ーー100年後に、日本人が『どうして台湾に招き猫の廟なんかがあるんだい?』と好奇心を持ってくれたらって想像しているんだ。これまで存在していなかった信仰をみんなで一緒に創り上げられたらってね。こんなお祭りは日本にだってありゃしない。僕たちはご先祖さまたちがかつて歩んできた道を辿っていくんだ。ちょうど祖師爺(学問や技芸の流派の創始者)や観音菩薩や媽祖(航海の守り神)や様々な神様をお招き入れてきたようにしてね……僕たちは招き猫をお借りしてここを人々が集まる場所にしていくんだ。招き猫が財をもたらすこと、イベントに参加した皆さんに福をもたらすことを信じているよ」。李さんのこの言葉には、我が意を得たりという思いだ。ではここで、韋禮安さんが2020年にリリースしたシングル『貓咪共和國』をOA。
<第2セクション:「招財大賺吉の祭」の様々なイベント>
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招き猫を祀った御神輿は台北の名刹、龍山寺の境内にも招き入れられた。このこと自体が大変異例なことではあると思うが、担ぎ手や大勢の参拝客が見守る中、台北在住の太鼓奏者熊谷新之助さんが率いる和太鼓「熊組」による奉納演奏が披露され、大きな喝采を浴びていた。台湾では道教と仏教の間の神仏混淆が普遍的に見られる。観世音菩薩を本尊に祀っている、この由緒ある龍山寺とて例外ではない。本殿には観世音菩薩が鎮座されてはいるが、その脇や裏手の境内には、財神の関公(三国志の関羽)、学問の神様の文昌帝君、縁結びの神様の月下老人…様々な道教の神様も当たり前のように祀られており、多くの信者が参拝している。それゆえ、新入りの神様「招き猫」に対しても、境内への立ち入りを許し、大変寛容なのだろう。
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招き猫を祀った御神輿巡回の前日の11月23日には、「招財大賺吉の祭(財を招き吉を呼ぶお祭り)」の開幕式を兼ねた記者会見が開かれた。主催三団体の「萬華世界下午酒場」、「新富町文化市場」、「東三水市場自治会」のトップに加え、日本の国会議員に当たる立法委員の吳沛憶(ウー・ペイイー)さん、日本台湾交流協会台北事務所総務部長の柿澤未知さんら議会、公的機関の代表のほか、郷土史研究者、地元の名士、メディア関係者が40名ほどが列席する中で行われ、このお祭りの発案者の李政道さんからの主旨説明の後、来賓からも祝辞が述べられた。また、私のバンドの八得力樂團(バッテリー)も記者会見の後半で10分ほどのパフォーマンスを披露し、この祭典に花を添えさせていただいた。
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八得力樂團の出番はこれだけでは終わらない。その後、耳に掛けるタイプのハンドフリーのマイクを付け、音響設備を載せた手押し車に先導されながら、ギターや琵琶、シェイカーなどの楽器をかき鳴らし、伝統市場である「東三水市場」の端から端までを練り歩きながら演奏したのだった。これには東三水市場のお店の皆さんも大喜び。ほとんどのお店のスタッフが熱烈に手を振り歓迎してくれた。日本のチンドン屋さんにも似ているが、私たちのバンドのモットー「走唱人生(あちこち歩き回って歌う生活)」を凝縮して体現しているという風情もあり、大変面白かった。お店の方からは時間が短過ぎる、もっと歌ってほしいとの声が寄せられ、主催者からは来年も是非という言葉をいただいた。「流し」バンドでもある八得力樂團(バッテリー)の本領発揮といったところか。
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この他にも、「新富町文化市場」の周りのスペースには「樂市・樂座」と称する臨時の屋台のマーケットが出現、飲食品や装飾品、日用品が売られていた。マーケットの前方には小さなステージが設けられ、日本と台湾と香港のDJの競演による音楽が終日流れ続けていた。また、昨年は私も参加したのだが、「新富町文化市場」の室内の一角では、プロのミュージシャンに混じって音楽の心得のある一般の参加者による即興音楽のジャムセッションも行われていた。ここを歩いていると、地元の人たちに混じって、芸術文化に関心の高い友人や知り合いにも何人も出くわした。こうした層にも深く浸透し、「東三水市場」で働く人々やその家族からの信頼も勝ち取り、「招財大賺吉の祭(財を招き吉を呼ぶお祭り)」は、この2年で市民からの支持を大きく広げ、地元から愛されているお祭りへと一気に昇華していると実感した。これはもう大成功と言って良いだろう。
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この成功には、このお祭りの発案者の李政道さんの企画力・発想力が出発点となったことは間違いない。が、それに加えて、彼の経営する昼呑み酒場「萬華世界下午酒場」が、居酒屋でありながらお隣の「東三水市場」で買った食べ物に関しては、つまみとして自由に持ち込みオーケーという型破りのルールを作って、開店以来、伝統市場と密接なコミュニケーションをとりながら、共存を図ってきたきた努力の賜物だ。そして、このことにより「東三水市場」の各店舗の皆さんからの絶大な支持を受け、たとえば午後2時にはほとんど閉まってしまう伝統市場の店主たちが、仕事終わりに一杯引っ掛けに来る場所が「萬華世界下午酒場」という好循環の関係も生まれている。
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また、「萬華世界下午酒場」の大家である「新富町文化市場」の親会社の忠泰建設は、自ら美術館まで経営し、台湾の文化芸術の発展に積極的に貢献している企業でもある。そして、「新富町文化市場」は、日本統治時代はまさに伝統的な市場だった場所である。こうした歴史建造物を建設会社の本領を発揮してリノベーションした上で、台北の下町の萬華で、市民への教育講座や文化サロン、ワークショップなどの文化啓発事業を続々と企画し、新たな文化創造のプラットフォームを提供していることは、もっと評価されて良いと思う。では、ここで八得力樂團の『安通温泉行進曲(日本語版)』をOA。
<第3セクション:老舗の艋舺青山宮の生誕祭とも呼応>
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11月22日付のウェブ新聞「立報傳媒」に、次のような趣旨のことが紹介されていた。「信仰の聖地である萬華区は、毎年11月が最も賑やかな時期となる。旧暦10月20日〜22日の3日間は、艋舺青山宮のご本尊・霊安王の誕生日を祝うパレードなど一連の行事で大賑わいとなるが、この伝統的な祭りの余韻が冷めぬまま「アフターパーティー」が始まる。」(拙訳・要約)ここでいう「アフターパーティー」こそ、「招財大賺吉の祭(財を招き吉を呼ぶお祭り)」である。1856年建立され、168年もの歴史を持ち、台湾では古刹の部類に入る青山宮の伝統行事のアフターパーティーとして、この新参者の招き猫のお祭りを認識していただけるのは、なんとも有難いではないか。
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この報道は続けて「招き猫が嫌いな人などいるのか?日台情緒あふれる新潮流文化祭典」のサブタイトルでこのお祭りを評価し、「近隣に活気をもたらす市場のお祭りは、来る年の幸運を祈願するものであり、地域の豊かな文化エネルギーを象徴する芸術的な行為でもある。」と締めくくっている。
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さて、この先このお祭りはどこに向かうのだろう。「100年後に、日本人が『どうして台湾に招き猫の廟なんかがあるんだい?』と好奇心を持ってくれたら」と李政道さんは述べていたが、以前彼はこんなことも私に話してくれたことがある。「最初は店の周年行事、招き猫を御神輿で担いで練り歩くお祭り、その先は…いつかは『萬華ロックフェスティバル』を開催したいんだ」その夢が実現するまで、私も八得力樂團もとことん付き合っていきたいと思う。本日のお別れの曲は、洪申豪さん率いる台湾のインディーズロックバンド「透明雜誌(TOUMING MAGAZINE)」さんの歌で『萬華的宇宙』。
Rti 台湾国際放送
Rti 台湾国際放送 
