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リスナーの皆さん、こんばんは。本日は「台湾に根を下ろした日本歌謡」シリーズの第11回、1990年代前半にカバーされたヒットソングを3曲をお届けしたい。1990年代の台湾は李登輝総統の下、民主化が大きく推し進められた時代だ。1987年まで続いた戒厳令下で放送や教育の場で禁止されていた日本語の使用も解禁され、J-Popや日本のTVドラマ、漫画、アニメーション、ファッションなどのサブカルチャーが、怒涛のように台湾に流入し始めた時代でもある。TVドラマの主題歌となったJ-Popが多くカバーされたのもこの頃だ。
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最初にご紹介するのは、岡本真夜さんのデビュー曲で1995年にシングルリリースされ、TVドラマ『セカンド・チャンス』の主題歌になった『TOMORROW』。この曲が主題歌となったTVドラマの『セカンド・チャンス』は、1995年に放送され、田中美佐子さんと赤井英和さんが主演。シングルマザーとシングルファーザーが出会い、互いに惹かれ合いながら、周囲の反対を押し切って結婚するまでのコメディーで、平均視聴率が16.7%の人気ドラマだった。主題歌の『TOMORROW』も、日本では出荷数が200万枚のメガヒットを記録し、岡本真夜さんは、この曲でこの年の紅白歌合戦で初めてTV出演も果たしている。また岡本さんは、芸能関係の記者たちが選出し、その年に傑出した活躍した芸能人に贈られる第33回ゴールデン・アロー賞の新人賞も受賞。そして、『TOMORROW』は翌年の春の甲子園選抜高校野球大会の開会入場行進曲ともなった。
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台湾では吳佩慈(PACE)さんが『閃著淚光的決定(光る涙の決心)』のタイトルで、1998年にリリースされたファースト・アルバム『All My Pace』の2曲目に収録している。吳佩慈(PACE)さんは台北生まれ、1998年にデビュー。デビューした年には徐懷鈺(シュィ・ホァイユィ)さん、マレーシア出身の李心潔(アンジェリカ・リー)さん、陳綺貞(チアー・チェン)さんと四人組のユニット「少女標本」を結成し、香港に進出したこともある。2000年代に入ると、吳佩慈(PACE)さんは俳優や司会者としても活躍したが、その後は中国に活動の拠点を移し、2014年には芸能界引退を表明している。吳佩慈(PACE)さんの代表曲となった『TOMORROW』の北京語カバー曲『閃著淚光的決定(光る涙の決心)』をOA。
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余談になるが、2010年に開催された上海万博の30日間のカウントダウン曲に選定され、香港のスターのジャッキー・チェンさんやアンディ・ラウさんまでレコーディングに参加した『2010年等你來(2010年はあなたを待っている)』が、岡本真夜さんの『そのままの君でいて』を盗作したのではないかとの疑惑が持たれた事件があった。『2010年等你來(2010年はあなたを待っている)』の作曲者である穆森(ムー・セン)さんは自作であると主張したものの、上海万博の事務局から岡本さんの所属事務所に対し「そのままの君でいて」の楽曲使用申請があり、岡本さん側がこれを受諾したことから、「万博事務局側が事実上盗作を認め、正式に岡本さんの曲の使用手続きを踏んだ格好」と当時日本のメディアは報じた。この件はその後、中国国内のメディアでは、SNSも含めて箝口令が敷かれた。万博事務局としては、国際イベントでの中国のマイナスイメージが広がるのを避けたかったのだろう。岡本さんは「世界中が注目するイベントである上海万博に協力させていただける機会をいただき、とてもステキなお話で光栄です」と大人のコメントを残している。
<『君がいるだけで』の北京語カバー曲『只要你和我』>
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次に紹介するのは、1992年に米米クラブさんがリリースした『君がいるだけで』。この曲『君がいるだけで』も、1992年に放送されたトレンディドラマの『素顔のままで』の主題歌。このドラマは女性同士の友情を描いた作品で、脚本はトレンディドラマの騎手・北川悦吏子さん。安田成美さんと中森明菜さんのダブル主演で、視聴率は毎回ほぼ25%を超え、最終回では31.9%にも達するほどの人気ドラマだった。台湾と香港でも『難得友情人(得難い友だち)』のタイトルで放送された。『君がいるだけで』は人気ドラマの主題歌だったことも後押しして、米米クラブのシングルの楽曲としては最高のセールスの289.5万枚を記録した。この曲は元々は、ボーカルのカールスモーキー石井(石井竜也)さんの妹で米米クラブのダンサーチームのMINAKOさんとサックスの金子さんの結婚を祝福するために作られたそうだ。そして、1992年のレコード大賞ポップス・ロック部門の大賞を見事に受賞している。
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この曲の北京語のカバー曲『只要你和我(君と僕がいればいい)』を歌ったのは、台湾と日本にとどまらず国際的に活躍する俳優の金城武さんである。金城さんは日本人の父親と台湾人の母親を持つミックスであり、祖父が沖縄出身。日本語、北京語、台湾語、広東語、英語を操るマルチ・リンガル。小中学校は台北日本人学校に通っていた。台北アメリカンスクール在学中の高校生の時にスカウトされ、当初は歌手としてデビューした。『只要你和我(君と僕がいればいい)』も1993年にリリースしたセカンド・アルバムのタイトル曲。1994年に香港のウォン・カーウァイ監督に見出されて『恋する惑星』に出演したことから頭角を表し、国際的な俳優へと成長していった。金城さん本人も「ウォン・カーウァイ監督が歌手から俳優への転身のきっかけをつくってくれた」と語っている由。日本でも1998年に人気ドラマの『神様、もう少しだけ』に出演したことで爆発的知名度を得ることとなった。ここで『君がいるだけで』の北京語のカバー曲『只要你和我(君と僕がいればいい)』を金城武さんの歌でOA。
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2008年のジョン・ウー監督の『赤壁(レッドクリフ)』以降は、極端に仕事をセーブしている金城さん。特にこの数年は、2019年に台湾のお茶メーカーのCMに出演して以来、ほとんど公の世界に顔を出さなくなってしまったのは、多くのファンも残念に感じていることだろう。2021年以降は、それまで拠点としていた台湾からも離れて、どこかの外国でひっそり暮らしていると聞いた。50歳となり円熟味を増したであろう金城さんを銀幕でまた観たい気持ち半分、セミリタイアをしたのなら、このままそっとしてあげたい気持ち半分。
<『ラブストーリーは突然に』の北京語カバー曲『愛情故事』>
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本日最後にご紹介する曲は小田和正さんの歌った『ラブ・ストーリーは突然に』。この曲も言わずもがなであるが、1991年に放送されたトレンディドラマの金字塔『東京ラブストーリー』の主題歌だった。この主題歌の誕生に際して、こんなエピソードが残されている。小田さんが主題歌の依頼を受けた際、ドラマのプロデューサーからはオフコース時代の「Yes-No」に似た切ない感じの曲が欲しいとのリクエストがあったそうだ。しかし、当時ラブソング歌うことに辟易していた小田さんはそのリクエストに応じず、結果として最初に提出した曲は没となった。プロデューサーから作り直して欲しいとの依頼を受けた小田さんは、「1週間もらえれば、ぐうの音も出ないような曲を作る」と宣言し、改めて作り直したのがこの曲だったそうだ。確かにぐうの音も出ない名曲である。
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この曲とのカップリング曲『Oh!Yeah!』は270万枚のセールスとなり、シングルCDの当時の売上記録を更新した。この年の2年前に解散したオフコースのイメージが強かった小田さんだったが、この曲をきっかけにソロでも小田さんが類稀なるヒットメーカーであることを世間に認めさせたと評価されている。この曲が主題歌となったドラマ『東京ラブストーリー』は、『101回目のプロポーズ』と並んで台湾の人々が最も多く観た、あるいは今でも語り継がれている作品かもしれない。柴門ふみさんの漫画が原作で、主演は鈴木保奈美さん。この作品以降、レコード会社からテレビ局への主題歌のタイアップの売り込みが強くなったそうだ。
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台湾でこの曲を北京語にカバーしたのは辛曉琪(ウィニー・シン)さん。タイトルは『愛情故事』、ラブ・ストーリーである。辛さんは台中の豊原生まれ。バラードを歌わせたらピカイチで、「療傷歌后(癒しのクィーン)」の愛称を持つ。1987年にデビューするが、スターダムに上り詰めることになったのは1994年にリリースされた5枚目のアルバム『領悟(気付き)』が50万枚のセールスを記録し、6枚目のアルバム『味道(匂い)』も連続ヒットしてからだろう。アルバムタイトル曲にもなった『領悟(気付き)』と『味道(匂い)』は、私も30年前によく聴いていた。
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本日は1990年代前半の日本の大ヒットTVドラマの主題歌で、台湾でカバーされた楽曲を中心にお話ししてきたが、J-Popや日本のドラマが台湾でも広く受け入れられるようになった理由は、冒頭でもお話ししたように、民主化へ進んで行った当時の台湾の大きな時代背景があった。哈日杏子(ハーリーきょうこ)さんが、「哈日族(ハーリーズー、はにちぞく)という言葉を生み出して、台北の西門町に日本の「可愛いもの」が溢れ出したのもちょうどこの頃だった。
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そのほかに、もう一つ日本のサブカルチャーが台湾に浸透していく際に重要な役割を果たしたのが、1996年に開局した日本番組専門TVチャンネルの「緯来日本台」の存在だろう。このチャンネルは日本のNHKの朝の連ドラや大河ドラマ、民放各局の人気トレンディ・ドラマ、バラエティ番組を実に隈なく、そして毎日シャワーのように大量に流し続けた。現在は様々な国際的なネット上の配信プラットフォームに取って代わられた部分も多いが、緯来日本台が無かったら、ここまで台湾に日本のサブカルチャーは根を下ろしていなかったかもしれない。本日のお別れの曲は、辛曉琪(ウィニー・シン)さんの歌で『ラブ・ストーリーは突然に』の北京語のカバー曲『愛情故事(ラブ・ストーリー)』をOA。
Rti 台湾国際放送
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