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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」) - 2023-06-25-台湾の「原住民」ミュージシャン名鑑② 阿努、阿洛

  • 25 June, 2023
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<第1セクション【海の恵みとともにアイデンティティを歌う「阿努」】>

  • 本日は「台湾の原住民ミュージシャン名鑑」の2回目、最初に紹介するのは、漁師をしながら音楽創作活動を続けるアヌーさん。アヌーさんは本名を阿努·卡力亭·沙力朋安(Anu Kaliting Sadipongan)と言う。花蓮県豊浜郷の港口集落 (Makota’ay)の出身。1996年に生まれ故郷を離れ、いったんは台北での生活を体験するが、、都会暮らしが長くなるにつれ、自分の人生に疑問を感じるようになった。
  • アヌーさんは28歳となった2005年に、時代の変遷とともに失われゆく原住民族としてのアイデンティティを取り戻す決意をし、港口集落に戻理、仲間たちと共同での音楽や芸術創作の傍ら、集落の文化の継承と民族語の普及に力を注ぐようになる。また、集落の先輩らとともに狩に出たり、漁に出たり、集落の伝統行事に顔を出したりするうちに、少しずつアミ族としての誇りを取り戻していったという。
  • そして、長年の努力が実り、2014年第25回金曲奨で最優秀原住民語歌手賞を受賞。また、アルバム『Cepo’混濁了』もこの年の金曲獎最優秀原住民語アルバム賞にノミネート。パフォーマーとしての知名度が一気に上がった。
  • ここでアルバムのタイトルにも使われているCepoとは、アミ語で昔の港口集落のこと。ここで150年ほど前に悲しい事件が起きた。当時大港口集落は、海運と貿易の集積地として栄えていた。そこに目を付けた清軍は、清朝末期の1877年に、台湾統括部隊を東部に差し向け、水尾(現在の瑞穂郷)から大港口に向けて道を切り開こうとしたところ、地元のアミ族の戦士たちから激しい抵抗に遭った。そこで、清軍は和議を装い、最大抵抗勢力であった大港口集落の精鋭を宴に招いて懐柔しようとした。宴もたけなわの時に、清の軍隊は騙し討ちをかけて約100名もの大港口集落のアミ族の青年を殺害したというのが事件の顛末である。
  • この事件は大港口集落のアミ族の人々の集団記憶となり、現代まで語り継がれている。私もアヌーさんから直接この話を聞いた。遠くを見つめるように、静かに話すその語り口や彼の歌う歌からは、怒りや悲しみを乗り越え、和解、融和に向けての一種の祈りにも似たメッセージを受け取ることができた。アヌーさんのソロアルバム『Cepo’混濁了』はそのような思いで作られた作品なのだ。           
  • アミ族の人は自身のことを「邦查」(pangcah)と称す。これはアミ語で「人」を指す。世代間の文化断層を目の当たりにし、自身の母語であるアミ語での音楽創作を続けるアヌーさん。音楽を通じより多くの人に原住民の問題に関心を持ってもらいたいと願っている。
  •  2019年暮れに製作し、翌年の金曲奨にノミネートされたアルバム《認真生活laloken ko orip(真面目な生活)》では、現代に生きる台湾原住民が現実の世界で向き合う様々な困難をいかに乗り越えるかがテーマとなっている作品。拝金主義、消費社会、国家主義、西側社会の築いた現代社会から、現実に抗い、自由を手に入れるか。自然や自分に立ち帰ることによって、人間の本質に回帰できるのではないか。こうした問いを投げ掛け続けている。
  • アヌーさんの2013年のファーストアルバム『cepo’混濁了』より、『你混濁了(mangota’ to kiso、お前は濁っている)』をOA。

 

<第2セクション【アミ族「三金」の歌姫】>

  • 続いてご紹介しますのはアロさん。アロさんの本名は、阿洛·卡力亭·巴奇辣(Ado' Kaliting Pacidal)さん。アロさんはアヌーさんと同じ港口集落の出身のアミ族のシンガーソングライターで、俳優、そしてテレビ番組の司会者でもあります。以前は漢名で林佩蓉と名乗っていたが、2004年末にアミ族の民族名に改名。
  • 2013年には、ソロアルバムの『太陽月亮』が第24回金曲奨の最優秀原住民語歌手賞と最優秀原住民語アルバム賞にノミネート。また、2015年に主演した映画『太陽的孩子』で第52回金馬奨の最最優秀新人俳優賞にノミネート。さらに、2016年には原住民族テレビ局の番組『吹過島嶼的歌(島を吹き抜けた歌)』で第51回金鐘奨の最優秀教育文化番組司会者賞を受賞し、「三金(金馬、金曲、金鐘)」と呼ばれる台湾の映画、音楽、テレビの芸術賞総なめにする偉業を達成。2020年には2枚目のソロアルバム『氣息(息遣い)』で再び第31回金曲奨の最優秀原住民語歌手賞と最優秀原住民語アルバム賞に加え、年間最優秀アルバム賞にもノミネート。
  • アロさんが主演した『太陽的孩子』(Wawa No Cidal)について紹介。この作品は2015年に上映され、鄭有傑さんとレカル・スミさんが共同でメガホンをとっている。俳優はほとんどが地元のアミ族の方々。『太陽的孩子』は2015年台北映画祭の観客賞を受賞。第52回金馬獎国際映画祭では最優秀改編脚本賞、最優秀新人俳優賞、最優秀オリジナル映画楽曲賞にノミネートされ、主題歌の『不要放棄』が最優秀オリジナル映画楽曲賞を受賞。
  • この作品は勒嘎·舒米監督のお母様の舒米.如妮(Sumi Dongi )さんの実話が元ネタ。舒米監督のお母様も豊浜郷の港口村港口集落のアミ族。集落の青年が都市に出てしまい、村の過疎化が進む中で、集落の棚田が荒廃。挙げ句の果てには土地がブローカーの手にわたり観光ホテルに建て替えられようとする。それに対する葛藤が一つの軸。もう一つの軸は、舒米監督は34歳で故郷に戻り、「花蓮石梯坪水棚田復興計画」の発起人となって、仲間たちと自然に優しい農法で米を収穫し、「海稲米」としてブランディングしていく物語。
  • アロさんの歌で、セカンドアルバム《Sasela’an 氣息》から『回家吧孩子(Pinokay to ya wawa ako )』をOA。
  • アロさんの音楽には、歴史の記憶や南の島の命の息遣いが織りなされていまる。このアルバム『Sasela’an 氣息』は太平洋島國の文化概念の中では、時間は必ずしも真っ直ぐには進まず、お互いの島を行き来しながら、クネクネとしたベルトのように編まれていくとアロさんは考えている。台湾を起点に太平洋諸島に向かって、7年の歳月をかけてアロさんは歌と踊りに溢れる島々を探索し、南の島々に対するアイデンティティや考えを熟成させていった成果。
  • 本日は花蓮大港口集落の同郷のアミ族のお二人のシンガーソングライター、アヌーさん、アロさん、そして同じく同郷の映画監督のレカル・スミさんをご紹介。御三方は同郷というだけではなく、いったん都会で暮らす中で原住民アミ族、パンツァとしての誇りや自覚を取り戻し、漢人風の名前を捨てて自分の民族名を名乗り、芸術を通じて自分たちの文化や歴史を啓蒙し続けている点に注目。
  • 今週も今月の歌『念念四重渓(懐かしの四重渓)』をバッテリーの演奏でお聴きいただきながらお別れ。

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