先日、台湾の企業家が、母親の「手尾錢」を使って、台中市消防局に消防装備を寄贈したというニュースがありました。
なんでも、2021年に放送された、消防士たちの活躍と共に人間模様を描いたドラマ「火神的眼淚(Tears on Fire)」を見て、各県市の消防局は経費の問題で、古い装備を使い続けていたり、不十分であることが多いということを知り、昔から慈善事業を行っていた母親の精神を受け継ぎ、母親の「手尾錢」160万台湾元(日本円およそ680万円)に、自身で200万元(およそ850万円)プラスして、母親の名義で装備を購入して寄贈しました。
このニュースを見て、「手尾錢」とは一体何だろう?と調べてみたところ、この「手尾錢」とは、台湾のお葬式の習慣の一つで、亡くなった人が、生前、手元に残していったお金のことを言います。
また、亡くなった人が残していった物や、生前よく使っていたものは「手尾物」と言います。
「手尾錢」は「遺産」、「手尾物」は「遺品」といったところでしょうか。
この“お金”の方、「手尾錢」には、台湾語で「放手尾錢,富萬年」という言葉があって、「亡くなった人が子孫に財産を残し、子孫の末永い繁栄を祈る」という意味が込められているそうです。ですので、その金額がいくらかを気にするのではなく、感謝の気持ちが大切なんだそうです。
そして、“亡くなった人が手元に残していったお金”ということだけでなく、葬儀の際に、棺の前で、亡くなった人の手にお金を握らせたり、袖口やポケットに小銭を入れて「手尾錢」とし、それをその場にいる家族に分けるという儀式を行ったりするそうです。
最近では、事前に亡くなった人の家族が赤い封筒に紙幣や硬貨を入れたものを準備し、葬儀の際に、祈祷師がまずはよい話を述べた後、先に準備しておいた赤い封筒を亡くなった人の手の上を通し、その場にいる家族に手渡すことが多いようです。
もちろん、葬儀が終わってから「手尾錢」を遺族が残りの親戚に分配したりする場合もあるそうです。
では、この「手尾錢」をもらったらどうしたらいいのかと言うと…
●赤い布で包んで、赤い紐を7回巻いて縛り、枕の下か枕元に置いておく。
こうすることで亡くなった親族が、子孫のために財産の道を切り開くという意味があるそうです。
中には、その方法をとって、夢で見た一組の数字で宝くじを買ったら当たった!なんて話もあるんだそうです。
●財布に入れて「錢母」と呼ばれる金運アップのお守りとする。
「手尾錢」の紙幣をお財布の内側に入れておくことで、お金を生み出し、お金が返ってくるという意味があるそうです。
間違っても使ってしまわないように、他のお札とは別にしておきましょう。
●ズボンのポケットに入れて、そのズボンを丸めて、クローゼットへ入れる。
ズボンの中国語は「褲子」で、倉庫の“庫”と発音が似ている事から、“金庫”の象徴とされています。
財運の良くない子孫の運を変えるのにもいいと言われているそうです。
●銀行に預ける
銀行に預けておいて、いつか家を買ったり、投資をするなどで必要な時に、幸運を祈って、「手尾錢」の中から1枚か2枚取り出すことで、金運アップの「錢母」として富を生み出すことができるとされています。
●家の中に祀る
もし「手尾錢」を身に着けていたら落としたりしてしまうのではないかと心配なのであれば、家の中に祀るといいとされています。
ご先祖様の加護があれば、後世の子孫の富が絶え間なく続くといわれているそうです。
●愛のある寄付をする
亡くなった人の大切な気持ちを愛に替えて、社会で必要としている人の助けとして分かち合うのもいいとされています。また、これは亡くなった大切な人の“福”の積み重ねととらえることもできるとされています。
最初にご紹介した起業家の方は、まさにこの“愛のある寄付”として「手尾錢」を使われたんですね。
ちなみに、昔から伝わる民間信仰にはタブーもつきものですが、「手尾錢」にタブーはあるのかというと、基本的にはないそうです。
ただ、「手尾錢」を悪いことに使ったり、ギャンブルや、酒、タバコなどを買って自身を傷つけたりしては、亡くなった人の“福”を無駄にしてしまうことになるので、しないようにとされています。
また、「手尾錢」は使い切ってしまってもいいのかどうかというと、ご紹介したように、「手尾錢」は亡くなった人が貯めてきた“福”ですので、ちゃんとした用途、例えば、家を買うとか、車を買う、投資するといった目的に使うのであれば使い切ってもいいんだそうです。
「手尾錢」とは、私たちのもとを去ってしまったけれども、大切な財産や心遣いを「手尾錢」という形に変えて後世に伝えるという、亡くなった方の家族や子孫に対する思いがたっぷりと詰まったものなんですね。
Rti 台湾国際放送
Rti 台湾国際放送 
