≪トーク①:“冬病夏治”、夏の「三伏貼」 ≫
日本は梅雨明けが待ち遠しい頃でしょうか。
南国・台湾はもうすっかり夏モード。連日、日中は35℃前後まで上がり、暑い日は体感温度が40℃近い日もあります。あまりに暑い日は、北部・台北でも昼の14時過ぎ頃に突然スコールのように2~3時間ほどまとまった雨が降るのですが、ここでしっかり降ってもらわないと夜になってもずっと暑いので大変です。
そんな暑い台湾では、この時期になると、「中醫」と呼ばれる東洋医学の病院では「“三伏貼”がいついつから始まりますよ~」というお知らせをよく目にするようになります。
この「三伏貼」、一体何かというと、「三伏の日」に身体の特定のツボに漢方薬を張り付ける治療です。お灸の一種ともいえ、東洋医学特有の治療方法のひとつです。
この「三伏の日」の“三伏”とは、日本でも季節の挨拶などで見かけたことがあるかもしれませんが、夏の暑さが厳しい時期を表す言葉です。陰陽五行説に基づく選日のひとつで、“三”とあるように、 “初伏”、“中伏”、“末伏”の3つの日があります。
“初伏”は夏至が過ぎた後の3回目の庚の日、“中伏”は夏至が過ぎた後の4回目の庚の日、“末伏”は立秋後、最初の庚の日とされています。
そのため、毎年同じ日というわけではありません。
この「三伏の日」は“陽の気”が最も旺盛な日であり、さらには身体の陽の気も旺盛で、漢方薬がツボや経絡に浸透して直接病に届くのでより効果的に“邪気”を払えるとされています。
台湾では、「冬病夏治(冬の病は夏のうちに治す)」という言葉があって、東洋医学では、アレルギー性の病気と肺には関連があるとして、“陰陽”の“陽の気”が最も旺盛な夏の日を利用して、身体の血管を広げ、血流を良くし、“陽の気”を補うことで冬に起こりやすいアレルギー性鼻炎や気管支喘息を予防する効果があるとされています。
なんでも、早くは南北朝時代にこの「三伏貼」を利用した治療の記録があるそうで、中でも中国南方の荊楚地方の年中行事を記した古い書物「荊楚歲時記」に「8月14日、人々は朱色の水を額につけた。これを“天灸”という」という記載があるそうです。
そして、明朝時代に李時珍によって書かれた薬学著書「本草綱目」にも、「天灸治療法は、マラリア、気管支喘息などの病気に比較的満足いく効果が得られた」と紹介されています。
そんな伝統的な治療法である「三伏貼」。今年(2021年)は、初伏が7月21日、中伏が7月31日、末伏が8月10日となっています。
では、どんな漢方薬をどこに貼るのかというと、基本的には、白芥子、細辛、乾薑、附子、薑汁などを一定の割合で混ぜて薬を作ります。配合などは病院によって違うそうです。
その漢方薬を、首の後ろから肩甲骨の内側にかけてのツボに貼ります。この貼るツボの位置もその人の体質などによって効果的な位置が違うそうで、お医者さんの経験から他にも、のどの少し下あたりや、腰、おへそ回り、腕などに貼ることもあります。
そしてその漢方薬が取れないようにガーゼやシートを貼って、大体4時間から6時間ほど貼ったままにしておくと、内蔵機能を調整して“陽の気”を高め、寒さへの抵抗力を高めることができるそうです。
ちなみに研究では、3年継続することで喘息やアレルギー性鼻炎に80%以上の効果が見られたそうです。
なお「三伏貼」を貼っている間は、効果が下がるのを防ぐため、生ものや冷たい食べ物を食べたり、冷たい水に浸かるのはNGです。暖かい水(お白湯)をたくさん飲んで、エアコンの冷風にもなるべく当たらないようにした方がいいそうです。
私も1度だけ体験したことがあるのですが、貼る漢方薬自体は指先に乗る程度の大きさで、それほど大きくはないのですが、数か所のツボに貼るため、それを覆うガーゼやシートが体の広い範囲をカバーするので、かなり見た目は仰々しい感じになります。まるで大けがしたかのようにも見えるので自分でもびっくりしましたが、もし夏場に首の後ろやのど元にガーゼやシートを貼っている人を見かけたら、もしかしたらその人は「三伏貼」をしたところかもしれません。
≪トーク②:暑い夏を乗り切る“健康習慣”「刮痧」 ≫
夏の台湾では、「三伏貼」のガーゼを貼った人の姿だけでなく、背中が真っ赤になっている人の姿もよく見かけます。
真っ赤と言っても日焼けというわけではありません。一見すると、まるで叩かれた痕のように見えてびっくりしますが、これも夏場の“健康習慣”のひとつ「刮痧(カッサ)」の痕なんです。
この「刮痧」の“痧”の字は、体の中に気と血が滞っている状態のことで、それを“刮る”という意味です。
日本でも一時期、“美容カッサ”が流行りましたが、台湾では「刮痧」は“美容”目的というよりも、夏場に身体の中にたまっている“熱”や“湿気”を取り除いて、筋肉をほぐし、滞りを取り除き血行を良くするために行います。
方法は、マッサージ用のオイルや乳液などを塗った皮膚を刮痧用のマッサージの道具を使って“刮る(擦り)”ます。繰り返し擦ると、血流やリンパの流れが滞っている悪いところほど皮膚が赤黒くなります。
街で見かける、背中が赤くなっている人は、その痕なんです。
マッサージのお店などでもしてもらえますが、なんと自分でできるという人も多く、家族でお互いに「刮痧」をしたりするという人もいますし、病院や自治体のホームページでも“自分で「刮痧」をする方法”というのが紹介されていたりします。
中には東洋医学のお医者さんも、“「刮痧」の道具がなければ縁の丸いレンゲなどを使うといい”と説明していて、台湾の友人に聞くと、本当に“レンゲ”や“コイン”、茶器の“茶杯”を使ってやる人も多いと話していました。
それほどに身近ですので、夏場になると「刮痧」をする人が本当に多く、街中でもよく“背中が真っ赤”な人を目にしますが、これは「刮痧」の痕ですので驚かないでくださいね。
皆さんも、もし夏場、暑い台湾に遊びに来てちょっと熱さにやられてしまったときには、「刮痧」で“熱”を出してもらってみてはいかがでしょう。
なお、「刮痧」の後は、風にあたらないようにし、保温に気を付けないといけないそうです。なんでも「刮痧」の後は、皮膚の汗腺が開いているので、もし冷たい風にあたると邪気が開いた毛穴から直接体に入り込んでしまい、「刮痧」の効果に影響してしまったり、風や寒さによる新たな病気の原因にもなるとされているそうです。
「三伏貼」もそうでしたが、冷気は身体にとって“邪気”という考えなんですね~。
暑い夏はつい涼しい場所や、冷たい食べ物や飲み物を求めますが、暑い土地だから冷たいものをとって体を冷やすのではなく、身体を冷やさずに夏を乗り切る昔からの習慣があるんですね。
Rti 台湾国際放送
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