リスナーの皆様は、先日まで行われていた、テニスの世界4大大会、オーストラリアン・オープンはご覧になりましたか。
女子のシングルスでは、日本の大坂なおみ選手が見事優勝を飾り、4大大会4勝目を挙げました。持ち前のパワフルなサーブ、ストロークに加え、この1、2年はフットワーク、さらにはメンタル面も強化され、厳しい場面を迎えても自分からは崩れることのない安定感を感じさせました。
さて、日本では優勝した大坂選手が話題となっていると思いますが、台湾では、準々決勝でその大坂選手に敗れたものの、35歳にして自己初となるベスト8入りを果たした台湾女子テニス界のエース、シエ・スーウェイ選手が話題となっています。このシエ選手、プレースタイルも、その生き方も、テニス界においては、異色の存在といえるんです。
まずは、シエ選手のプロフィール、ここまでの歩みをご紹介しましょう。シエ選手は1986年、台湾北部、新竹市生まれ、今年1月に35歳になりました。台湾で二番目に多いエスニックグループ、客家の出身です。7人兄弟の4番めで、上に姉と2人の兄、下に弟と妹がいます。7人きょうだい皆、テニスの経験があり、弟の政鵬(せいほう)選手、妹のシューイン選手は現役のテニス選手です。
お父さんのスパルタ指導を受け、めきめきと実力をつけたシエ選手は、ジュニア時代から天才少女として知られ、2001年、15歳でプロに転向すると、最初の大会で予選から本戦のベスト4まで進出、世界をあっと言わせました。
その後、お父さんとの対立で、拠点を日本に移した時期もありましたが、その後、和解、2005年にグランドスラム大会初出場を果たし、その後、シングルス、ダブルスでツアーレベルで活躍するようになります。2007年には、同じく中華民国台湾のチュアン・チジャン選手と組んで出場した中国大陸北京の大会で、ツアー大会でダブルス初優勝を果たしました。その後、スランプに苦しみますが、2011年の年末に就任したオーストラリア人のポール・マクナミーコーチの指導もあり復活を果たします。2012年、シングルスでツアー初優勝を含む2勝をあげ、2013年2月には世界ランキングも台湾女子選手として過去最高となる23位となりました。翌2013年は、ダブルスでも大ブレイク、中国大陸のポン・シュアイ選手とのペアは四大大会のウインブルドン選手権、WTAツアー選手権などグレードの高い大会を含む年間5勝をあげ、世界ランキング1位に上り詰めました。
慢性的な故障をかかえつつ、シエ選手は30代に入っても安定した成績を残しており、シングルスでは2018年、日本、広島の大会で6年ぶりに優勝、ダブルスでは、一昨年、2019年ウインブルドンで優勝、昨年も年初もオーストラリアン・オープンで準優勝に輝き、目下のダブルス世界ランキングは1位です。
ただ、シエ選手が話題になるのはコート内ばかりではありません。思ったことははっきりと口に出す性格で、これまで幾度も中華民国テニス協会と対立、国別対抗戦などの出場をめぐる混乱は一度ではありません。東京オリンピックも、こうした対立の結果、出場権獲得の為の試合出場数が足りなくなり、参加機会を逃すこととなりました。ただ、オフコートのシエ選手はとてもコミカルで、試合後のインタビューは毎回、メディアやファンの話題となっています。この年令まで第一線でプレーしているシエ選手を、「天才肌」と一言で表してはいけないのでしょうが、プレースタイルも含めて、型破りな魅力をもつ選手です。
(ジングル)
先ごろのオーストラリアン・オープンでは、準々決勝で大坂選手に2-6、2-6のストレートで敗れたものの、2人のシード選手を破り、35歳にして自己最高となる四大大会シングルスベスト8進出を果たしたシエ選手は、男子顔負けのパワーテニスが主流の女子テニスにあって、完全な技巧派です。フォアハンド、バックハンドともにダブルハンドである為、相手選手はギリギリまでコースが読めません。また、ベースラインより前に立って、上手く面をつくり、まるで壁のように相手の強烈なショットを角度を変えて打ち返したり、かと思うと、逆回転のスライスやドロップショット、さらに頭を越すロブなど様々なショットを織り交ぜて、相手を混乱させます。
今大会の対戦では圧勝も、過去何度も苦戦している大坂選手は、シエ選手との対戦前、「どんなプレーをしてくるのかわからず、与しにくい相手だ」と話しました。でも、彼女のプレーを見るのは面白いし、もしテニスのテレビゲームだったら彼女を選ぶと答えました。そんな選手なんです。
シエ選手の強さの秘密などこにあるのでしょう。ポール・マクナミーコーチはWTA(女子テニス協会)のインタビューに、シエ選手のコンタクト力の高さを評価、常にラケットのスイートスポットでボールを打つ為、ラケットのストリングが全く切ず、かつて、3年もの長い間、同じラケットを続けていたというエピソードを紹介しました。そして「私はずっと、彼女がベスト8、ベスト4まで進める能力があると信じていた。ついに彼女は成し遂げてくれた」と賞賛しました。
そして、マクナミーコーチが、シエ選手の今大会の快進撃を支えた一人として名前を挙げたのが、数年前から交際しているフランス人ボーイフレンド、フレデリック・アニエールさんの存在です。シエ選手が標準中国語で「温柔哥」、「優しいお兄さん」と呼ぶアニエールさんはもともと不動産業に従事していましたが、交際後はパリで一緒に暮らしながら、遠征にも同行、孤独な戦いになりやすいテニスにおいて、精神面をサポートしています。
シエ選手は大会を終えた後、自身のフェイスブックファンページで、「アメイジングな経験」と振り返った上で、マクナミーコーチやアニエールさんへの感謝と共に、パリのコーチや、慢性的に苦しめられていた臀部の怪我を直してくれた理学療法士へのお礼の言葉を記しました。
ダブルス世界1位、そして、シングルスの世界ランキングも今大会のベスト8で、大会前の71位から50位に上げたシエ選手、間違いなく世界のトップクラスの選手でありながら、実はラケット、ウェア、シューズなどのスポンサーが一社もついていないんです。シエ選手自身は、マネージメント会社と契約しておらず、そうした契約について話す時間がないからと説明しています。スポンサーにとっては、決して「お利口」なタイプの選手ではないかもしれませんが、応援する企業、出てきてほしいですね。
テニスファンからしますと、プレースタイル、その言動も含めて魅力的な選手であること間違いないシエ選手。これからも、見るものをワクワクさせるプレーをみせてもらいたいと思います。
Rti 台湾国際放送
Rti 台湾国際放送 