中華民国台湾には6つの直轄市を含め、22の地方自治体、県及び市があります。このうち、中央政府の所在地であり、政治、経済、文化の中心地といえるのが台北市です。
22の地方自治体のうち、人口が最も多いのは台北市をドーナツのように取り囲む北部の新北市でおよそ403万人です。続いて中部の台中市がおよそ282万人、そして3位は南部の高雄市で276万人、台北市は4位で、およそ260万人となっています。
あれ、台北市が人口トップではなかったのか、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。そうなんです。台北市単独の人口は、自治体別で4番目なんです。ただ、台北市の面積はおよそ272平方キロメートルと、トップ3の県市とは桁が一桁違い、人口密度は圧倒的にトップとなっています。
しかし、この台北市の人口が、昨年2020年の1年間、この27年間で最大の減少幅となり、過去23年で最も少なくなったこと、この1月には260万人の大台を割ったたことが話題となっています。本日の「ようこそT-ROOMへ」では、台北市の人口減少について、その理由なども掘り下げてご紹介したいと思います。
まずは、細かいデータをご紹介いたしましょう。内政部の人口統計によりますと、2020年末、台北市の人口は260万2418人でした。2019年年末の人口と比較しますと、4万2623人の減少となり、この減少幅は1993年の4万2828人減に次ぎ、この27年間で最大となりました。そして、260万2418人という人口自体が、1997年以降では最少となりました。
また、台北市政府民政局の統計によりますと、2021年1月の台北市の人口は259万7635人と、ついに260万人の大台を割り込みました。 この5年間で比較しますと、人数でおよそ10万7000人、割合ではおよそ4%の減少となりました。
また、直轄市である台北市には12の区がありますが、この5年間ですべての区で人口が減少しました。なかでも、市の東部、台北市政府や台北のランドマーク、高層ビルの台北101がある信義区が6.3%減、そして市の西部、台北の下町エリアで、海外の観光客にもおなじみの龍山寺がある萬華区が6.0%減と、この2つ区で、減少幅の大きさが目立ちました。
続いては、この台北市の人口減について、様々な立場の人の見方をご紹介していきましょう。まずは、台北市政府の見方です。台北市政府民政局人口政策科の呉重信・科長は、台北市の人口は減少しているものの、台北市民の生活の足、台北MRTの利用者数及び出勤時間の車両の数を見る限り、日中、台北市で働いたり、生活をしている人口は減少していないと指摘、台北市の人口減の最大の要因は、交通網の発展にあると述べました。
呉・科長はさらに、各MRTの路線網、台湾の在来線、台湾鉄道の利便性向上により、台北、新北、基隆、桃園のいわゆる「北北基桃」、「ほくほくきとう」の共同生活圏が形成されつつある、と指摘しました。そして、台北市は周囲の県市に比べて、居住コストが高いことは確かであるとした上で、多くの人が、通勤、通学コストをかけても、台北市の周辺で暮らすようになった、と分析しました。実際に、民政局の統計によると、台北市から流出した人口の多くは、新北市の汐止(せきし)、新店、三重など、交通網が発達したエリアに移住している、ということです。
呉・科長はまた、2020年の台北市の人口減少は、新型コロナウイルスの影響もあるとして、過去、台北市では、海外から帰国した市民による社会増加人口が、毎年約2万人あまりに達したが、昨年はパンデミックの影響もあり、多くの人々が台湾に戻ってこれず、この結果社会増加人口も例年より1万人少なかった、と指摘しました。
こうした台北市の見方とは少し異なる立場の人たちの声をご紹介しましょう。まずは不動産会社です。大手不動産販売の「グレート・ホームリアリティー」企画研究室のマンディー・ラン副プロジェクト・マネージャーは、台北市の人口減少について、3つの原因を挙げました。その原因とは次のとおりです。
1つ目は、「台北市の不動産価格が高止まりしており、購入できない人々が周囲の自治体へ移住している」、2つ目は、「老朽化して安全性が下がった建物の再建を再開発につなげていくことは容易でなく、仮にうまく行ったとしても新たな建物の価格は非常に高く、購入側の選択肢が少ない」、そして3つ目は、「他の自治体の社会福祉の充実。例えば、北部の桃園市の子育ての為の補助は、台北市よりも充実している」というものでした。
続いては学者の見方です。私立、銘伝大学の都市計画、防災学部で教授を務めた陳亮全(ちん・りょうぜん)氏は、台湾全体の人口も減少しており、台北市の人口が減少すること自体は正常な減少だとした上で、台北市は居住コスト、育児のコストが共に高く、若者が台北市で暮らしていくのは困難だ、と指摘しました。
市議会議員の声も紹介しましょう。国民党の游淑慧・議員は、こうした不動産価格の高騰、さらに物価の上昇のほか、台北市で勤務している人たちの賃金が近年減少していることを指摘し、これも人口減少の大きな要因だ、と述べました。
共通しているのは、生活コストの高さという点ですね。ただ、これらの指摘については、台北市政府側の耳にも届いているようです。
中盤でご紹介した台北市政府民政局人口政策科の呉重信・科長は、台北市は、国家の首都にあたる都市であり、本来、医療や交通など各種のインフラコストを負担せざるを得ない為、居住コストは高くなる、と説明した上で、台北市では、居住コストを下げ、若い人たちの定住を促進する為、低価格の社会住宅の建築や青年創業基地の設置などの政策を進めていると強調、直ちに効果が出るものではないが、今後も引き続き努力していくと述べました。
実は私駒田も台北市民です。台湾最大の都市である台北市はコンパクトでありながら、様々なものが揃っています。生活コストの高さは確かですが、それを呑み込める都会ならではの魅力がある事は間違いありません。また、台北市のアパートの家賃は、日本の東京などに比べると半分から三分の2くらいで何とか暮らしてはいけます。ただ、いざ購入となると、中古のアパートでも日本円で1億円近くするなど、不動産価格の高騰ぶりは常軌を逸しています。
ここまで高騰した不動産価格をすぐに下げることは難しいでしょうが、不動産バブルの結果、再開発が行われず、老朽化した建物にない多くの人々が住んでいるという事も事実です。こうした防災の面からも、市政府ならびに中央政府の思い切ったアクションが期待されるところです。
Rti 台湾国際放送
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