≪トーク①:コロナ禍に台湾で行われてきたマスク販売方法≫
新型コロナウイルスが世界で猛威を振るい始めてから1年以上が経ちました。国によっては少しずつワクチンの接種も始まっていますが、未だに収束の兆しが見えてきません。そんな中、予防策として特に重要とされているのが、手洗いと消毒とマスクの着用。中でもマスクは、一時期は世界的に入手困難となり、混乱が生じました。
台湾ももちろん例外ではなく、店頭からサージカルマスクが消え、「マスク着用の重要性を言われても手に入らない」と混乱が起こりかけましたが、昨年(2020年)の2月6日、台湾では政府が「実名制」によるサージカルマスク販売を始めました。この「実名制」によるサージカルマスク販売とは、「口罩實名制(マスクの実名制販売)」と呼ばれるシステムによって、政府が買い上げた国産サージカルマスクを、日本でいう保険証にあたる「全民健康保險卡(健康保険カード)/通称:健保卡(健保カード)」を使って、「健保特約薬局」と呼ばれる政府と契約を結んでいる薬局で決まった枚数だけ購入できるようにしたものです。
これによって、買い占め問題がなくなり、みんなが平等にサージカルマスクを手に入れることができるようになりました。
このシステムの導入が成功した背景には、元々、台湾の保険が全国民加入対象で平等に受診する権利を享受できる制度であったことと、保険証のICカード化が行われていたことがあります。
台湾では1995年から「全ての人が適切な予防、治療、リハビリなどの保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる」、UHC=ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現しています。
また、2003年からはその「健康保険カード」を全面ICカード化し、その中には個人の基本的な情報や、病歴、服薬の履歴などが紐づけられていて、カードリーダーを使用してICチップを読み取ると、クラウド上に記録されている個人の情報にアクセス・閲覧できるようになっています。
これは大きな大学病院でも、街の小さな診療所でも、そして、中醫と呼ばれる中国伝統医学の病院でも、この「健康保険カード」1枚で全ての情報がわかるようになっています。
それらのベースがあったうえで、さらに今回、政府が国産マスクの輸出を禁止し、全てを買い上げ、特約薬局で「健康保険カード」を使って購入できるようにしたことで、マスクの購入歴をクラウド共有システムに記録し、重複購入を防ぐという仕組みです。
そしてさらには、今、日本をはじめとする世界からも注目を集めている、唐鳳(オードリータン)デジタル担当大臣が中心となり、販売拠点でのマスクの在庫が3分ごとに自動更新されるマップをわずか3日で開発。これによりいつどこで入手可能かという最新情報が開示されたことが安心感につながり、パニックになるのを免れました。
その後、政府はインターネットやアプリでマスクを予約購入し、コンビニやスーパーなどで受け取れる「eMask 口罩預購系統(eマスク予約購入システム)」も開発しました。
このインターネットやアプリで予約購入ができるようになる際、年配の方やデジタルに疎い人たちから心配の声も上がりましたが、全てをデジタル化するのではなく、引き続き薬局でも買えるようにしていて、使えるところはデジタル化して無駄を省き、必要なアナログ部分は残すのと同時に、こんなに簡単に予約購入ができますよという説明や、家族に予約購入の方法がわからない人がいたら手伝ってあげてねと呼びかけも積極的に行ってきました。
一方、使う側も年配の方でも「よくわかんないけど便利になるなら試してみようかな」と、子供や孫たちに聞いてやってみる人もいたようです。
なお、この「健康保険カード」は、居留証を持つ外国人も加入対象となっているため、私たちも台湾の人たちと同じようにマスクを購入することができました。
これは台湾に住む外国人にとって、安心材料の一つとなったことは言うまでもありません。
現在は、マスクの生産量も増え、安定供給できるようになっていることから、「健康保険カード」を使わずとも薬局やスーパー、コンビニエンスストアなどで購入できるようになりましたが、「eMask 口罩預購系統(eマスク予約購入システム)」は現在も利用可能となっています。
≪トーク②:中興大学開発“AIの計算で在庫を調整するシステム”に注目≫
ところで台湾では、2019年末に新型コロナウイルスの感染が広がり始めるとすぐに政府がマスクの供給情報プラットフォームを立ち上げましたが、そのオープンデータを利用して、より便利に利用できるよう、様々な企業や団体、個人がアプリやシステムを作っています。
台湾中部・台中市にある中興大學土木学部の楊明德・主任率いる「AIPal」チームと、彰化県にある大葉大學経営学部の陳怡萍・准教授が協力し、政府のマスク供給情報プラットフォームを利用して開発した「最佳口罩配置AI模式(ベスト・マスク配置AIモード)」が、台湾の科学技術人材の育成などを目的に設立された団体、財団法人中技社の「AI創意競賽(AIクリエイティブ競技会)」で、昨年(2020年)第2位に輝きました。
この「最佳口罩配置AI模式」は、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し始めていた初期の昨年2月中旬から3月末にかけて、実名制マスク販売が行われた49日間の統計を使用し、当時、マスクが品薄だという薬局があった一方、台中市内で27万4,540枚のマスクが1日以上薬局に残っているということに気付き、過去7日間の数字を基に、AIによる計算で、どのくらいの受け取りの需要があるのかをはじき出し、マスクの在庫を減らし、改善することで流通をスムーズにするものです。
研究チームは、年配者や新興エリアで幼児が比較的多い所の薬局ではマスクの供給が需要を下回っており、サラリーパーソンが多い場所では在庫が多いことを発見。その時のマスクマップは在庫がある場所を見ることができるだけだったため、政府がまだ行っていない配達調整の手助けができると考えたそうです。
政府が開放している、人口データや毎日の気象データ、在庫数や感染者数などをデータベース化し、台中にある635の販売薬局の過去7日間の受け取り数や速度などから翌々日のマスクの需要を予測することで、マスクの滞留量を50%近く減少させることに成功しました。
中興大學の楊明德・主任は、このシステムが全国の薬局に適用できれば、将来、もしまた疫病などの災害が起こったときに必要なものを必要なところに送ることが可能だとしています。
これらマスクの販売・管理方法を通じて、台湾のデジタル分野の力強さを感じられます。
Rti 台湾国際放送
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