新型コロナによって、今やマスクが欠かせないアイテムとなりましたが、それによって不便になってしまっていた人たちがいます。それは、聴覚に障害のある人たち。
聴覚障害の方のコミュニケーションと言えば主に「手話」ですが、コミュニケーションをとる際に、口元や表情も見ながら相手の言いたいことや感情を読み取ることから、このコロナ禍でマスクの着用が必須になったことで、口の動きや表情が読み取れず、コミュニケーションに困難が生じやすくなっています。
そのような問題から、台北市にある身体障害者の支援団体「蒲公英聽語協會(たんぽぽ・ヒアリング&ランゲージ・アソシエーション)」の謝莉芳・理事長が衛生福利部食品薬物管理署を通じて、マスクメーカーに透明のマスクの需要について訴えたという話題を、昨年(2020年)、このコーナーでも紹介したことを覚えていますでしょうか。
最初は謝莉芳・理事長自ら海外から透明のマスクを買ったりもしたそうですが、それらの透明マスクに防護効果はなく、「防護効果がある透明なマスクが必要である」と訴えたところ、台湾マスクの管理を担当している、経済部工業局の王麗珠・副組長が自ら協力を名乗り出てくれ、また紡織産業綜合研究所もこの件をとても重視し、マスクのナショナルチームメーカーである桃園の「台湾康匠(チャンプ・マスク)」の陳勇志・総経理に声をかけ、さらには新北市の鶯歌にある「權和機械(NCM)」も共に参加し、透明マスクの研究開発が始まりました。
昨年(2020年)の7月には「台湾康匠」が手作りのサンプルを公開、蒲公英聽語協會の子供たちに実際に試してもらい、それを元に改良を重ねました。
昨年、紹介したときには、この透明マスクの製造設備はまだ設計段階とのことでしたが、ついに量産体制が整い、最初の製品が先ごろ台北市内にある蒋介石・元総統のメモリアールホール・中正記念堂の敷地内にある、國家兩廳院(ナショナルシアターとナショナルコンサートホール)、蒲公英聽語協會、そして聴覚障害の学生が多く通う台北市立「啟聰學校」に合計2万枚あまりが寄付されました。
「蒲公英聽語協會」の子供たちなどに実際に試してもらい改良を重ねたマスクは、プリーツタイプではなく、立体タイプで、顔をしっかりと覆うことができる医療用マスク。
「台湾康匠」の陳勇志・総経理によると、この透明のマスクには、「安くて、快適で、美しい」という3つの大きな特長があります。不織布のマスクの口元がポリエチレンの透明フィルターとなっていて、この透明フィルターは喋ったときなどに飛沫などで曇らないような設計。また、伸縮性に優れたマスクのゴムとなっていて、長時間つけていても圧迫感を感じない設計となっています。
透明マスクの寄付を受けた蒲公英聽語協會の謝莉芳・理事長は、「この透明のマスクは最大限に活用することができると思っている」と語っていますが、確かに、口元も表情も見えることで、聴覚障害のある方もコミュニケーションがとりやすくなるだけでなく、聴覚障害がない方でも、例えば受付や飲食店の接客など、人と接する仕事をしている人もこの透明マスクで口元が見えることによって笑顔が見え、マスクをしていながらにしてより親切な接客をすることができ、コミュニケーションの上で距離感をなくすことができます。
しかもこの透明フィルターの部分が、まるで笑っているかのような形になっていて、優しい雰囲気となっていますよ。
近年、インクルーシブ劇場を推進している國家兩廳院では、日常のあらゆる場面でのバリアフリーを目標としていますが、劉怡汝・芸術総監督は、「新型コロナによって生活方式が変わってしまった。台湾は防疫に成功しており、劇場は通常通り運営をしていて、世界からは優等生だと称賛されている。防疫も強化していて、入場の際にはマスクの着用が必須だ。しかし、フロントのスタッフも、マスクをしているとでコミュニケーションにおいて制限が出てきてしまうことが分かった。そこで、この台湾康匠が透明のマスクを開発するということを知ったときに、長期的に協力している蒲公英聽語協會の紹介を通して、このマスクでコラボレーションする機会が生まれた」と語っています。
國家兩廳院では台湾康匠と協力して、フロントスタッフが透明マスクをすることで、コミュニケーションの壁を減らすことができるとしています。
蒲公英聽語協會の謝莉芳・理事長によると、最初はある難聴の大学生から協会に寄せられた報告がきっかけだったそうで、オンライン授業に切り替わりスピーカーからの音は聞き取りにくく、全員がマスクをしていて視覚的な手掛かりがないために授業が困難だという話から、透明マスク誕生に向けて動いてきたとしています。
実は、台湾康匠は、この透明マスクの研究開発を始めたころは状況は深刻な時期で、工場は日夜、一般のサージカルマスクの製造を続けており、みんな疲労困憊だったそうですが、聴覚障がい者のために透明のマスクを作るという話を聞くと、みんなの目が輝きはじめたんだそうです。
現在は一般のマスク製造も落ち着きを取り戻し、新たな透明マスクの生産も量産体制が整い、1日最高1万枚の生産能力を備えていて、価格はほぼ当初の予定通り、1枚当たり台湾元8元から13元(日本円およそ30円から49円)で販売できるとしています。
今回、透明マスクの第1弾の製品は寄付し、第2弾の製品は寄付を希望する企業を募り、4月より薬局やスーパーなどでで販売する予定とのことです。
「台湾康匠」の陳勇志・総経理は、このマスクは3000人余りの難聴の子供たちのために作るものではなく、聴覚障害のない2300万人のために作ったものであるとしています。聴覚障害のない人たちこそがこの透明マスクをつけることで、聴覚障害者をサポートすることができるからです。そのため、「(この透明マスクが)もし高かったり、見た目が悪かったり、着け心地が悪かったら、誰がつけてくれますか?」と語り、多くの人に着けてもらえるよう研究を重ねて作り上げたことを語りました。
なお、この透明マスクはすでに海外からも問い合わせがあっているそうで、もし市場に需要がある場合は、それに応じてさらに多くの設備を購入することも排除しないとしています。
聴覚に障害のある人もない人も、みんなが使えて、みんなお役に立つ新たな透明マスク。これこそがバリアフリーのアイテムですね。
新型コロナによってマスクが手放せなくなった今、この透明マスクがこれからのマスクの形になっていくかもしれません。
Rti 台湾国際放送
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