この1週間は日本も台湾も寒い日が続きましたね…。
台湾では例年、冬でも10℃を下回ることはあまりないのですが、この1週間は台湾全土で10℃を下回る日が続き、山間部では雪が積もりました。台北の陽明山でも積雪があったので、普段なかなか雪を見る機会のない台湾の人たちの中には大はしゃぎで出かけた人もいました。
ただ、こうも寒いと、日本とは違った辛い寒さがあります。というのも、台湾の家は多くがタイルや石を使用しているうえに、暖房器具がないところも多いので、室内でも寒いところが多いのです。ですので、家や職場でもダウンジャケットやニットキャップを身に着けて過ごしているという話もよく聞きます。
我が家も小さな温風ヒーターと、日本から持ってきた湯たんぽでこの寒さをしのぎましたが、暦の上では、来週の水曜日、1月20日が「一年で一番寒い日」とされる二十四節気の「大寒」です。
もうこの名前を見ただけでも寒くなってきます…。早く暖かくならないかな~と願ってばかりいますが、でも実は、この時期“寒い”のは大事なことなんです。
中国語では、「大寒不寒,春分不暖(大寒が寒くないと、春分は温かくない)」という諺があって、もし「大寒」が寒くなければ、その後の節気が乱れ、後の天気が狂ってくるとして、「大寒」当日の天気は農業社会ではとても重要な指標とされていたそうです。
この日、北風が吹き、寒くなれば翌年は豊作を意味し、その逆で南風が吹き、温かくなれば翌年は不作となるとされています。また、もし当日雨が降った場合は、翌年の天気は例年通りではなく、作物の成長に影響してしまうとされているそうです。ですので、農家の方々は、この「大寒」の天気をとても重視していました。そのため、「大寒日怕南風起,當天最忌下雨時(大寒(だいかん)で怖いのは南風、最も嫌なのは雨だ)」とも言われています。
また、このほかにも「大寒不寒,人畜不安(大寒が寒くないと、人畜が不安になる)」という諺もあって、これは、この「大寒」のころは空気が冷たく、地面が凍ることで、害虫が凍死するか休眠状態になりますが、もし「大寒」が寒くないと、害虫が生き延びてしまい、人や家畜に災いが降りかかるとされているそうです。
このようなことからやはり「大寒」のころは、その名前の通り寒くなる方がよさそうです。
でもただこの寒さに耐える日というわけではありません。“一番寒い日”ということは、これから温かくなるという“冬の終わり”が見える日でもあります。
民間行事が旧暦で行われる台湾では、この「大寒」は1年の最後の節気。「1年がもうすぐ終わり、新たな1年がもうすぐやってくる」として、大掃除をしたり、旧正月に玄関に飾る「春聯」と呼ばれる、正月を祝うめでたい詩文を書いたり、正月飾りを用意したり、またソーセージや肉類の燻製や、鶏・鴨・魚などの揚げ物料理を準備するなど、新たな一年を迎える準備をはじめる頃でもあります。
寒さはまだ厳しいけれど、希望や活力が湧いてくる頃でもあるんですね。
そしてこの「大寒」のころに行われる台湾の習慣と言えば…「尾牙」─。日本語ではよく「忘年会のようなものだ」と説明されますが、なぜ“尾っぽ”の“牙”と書くのでしょうか。
台湾では古くから商売をしている人たちが、毎月2回、旧暦の2日と16日に「土地公」や「地基主」と呼ばれる土地の神様にお祈りをします。
これは今もお店、会社で行っているところもあるので、街中で建物の前に置いたテーブルにお肉や果物、お菓子などがたくさん並べられ、お線香をもって拜拜=お祈りしている姿を見かけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
お祈りをして、神様がお供え物を“食べた”あと、おさがりをみんなでいただきます。そのため、このお祈りの日の夜ご飯は、いつもより豪華なご飯をみんなで食べるという習慣があります。この祭事のことを「做牙」と言います。
この「做牙」は、一般には土地神様の誕生日である旧暦の2月2日から始まり、先ほども紹介したように、毎月旧暦の2日と16日の月に2回お祈りをするのですが、旧暦の12月16日が一年の最後の「做牙」となります。そこで、この旧暦の12月16日に行われる「做牙」は、最後=尾っぽの“尾”に做牙の“牙”という字を書いて「尾牙」と言います。
そのため、二十四節気の「小寒」からこの「大寒」頃になると、各会社で「尾牙」が行われます。
今では「做牙」の習慣を行うところは徐々に減ってきてはいますが、普段「做牙」を行っていない会社でもこの「尾牙」は毎年行っているというところもあります。
この「尾牙」では、みんなで豪華な食事を囲むだけでなく、社長からボーナスや賞品、紅包と呼ばれる“ご祝儀”が渡され、この一年の苦労をねぎらいます。大手の企業ともなると、「尾牙」に芸能人を呼んでコンサートが行われたり、賞品も、人気の最新型のiPhoneから、高級ホテル宿泊券、そして車や航空券などと豪華!毎年この「尾牙」を楽しみに頑張っているというスタッフも少なくないようです。
ちなみに、「尾牙」には鳥、豚、魚の3種類の肉料理のほか、必ず食べるものがあります。それは「刈包(台湾ハンバーガーとも言われる“グアバオ”)」と「潤餅(台湾風生春巻きとも言われる“ルンビン”)」です。
「刈包(グアバオ)」はお財布の形に似ていることから「財をもたらす象徴」とされ、「潤餅(ルンビン)」は、中にたくさんの食材を包んだ姿が、古代の紙に包まれたコインのようにも見えるということから、こちらも「繁栄」を表すとして、「尾牙」に欠かせない食べ物となっています。そんなめでたい伝統があるかと思いきや、ちょっとドキッとする伝統もあります。鶏料理が出てくるとみんなの間に一瞬緊張が走るんです!
…というのも、昔、雇い主がクビにしたいと思っている人がいたら「尾牙」の席で鶏の頭をその人に向けたという話があり、もし運ばれてきた鶏の頭が自分に向いていたらどうしよう…と緊張が走るんだそうです。
なお、誰もクビにしたくない場合は、雇い主は自分の方に鶏の頭を向けるか、鶏の頭を取ってしまうんだそうです。頭つきの鶏の料理が出てきたらびっくりしますが、「尾牙」で出てきたらまた違った意味でドキッとしますよね。
今年の「尾牙」は、新型コロナの影響で、規模を縮小したり、大企業では実名制での事前参加申し込みが必要だったりと、大型の「尾牙」には多少の影響は出ているようですが、一般の「尾牙」は今夜もあちらこちらで行われているようです。
「大寒」というと、とっても寒く、その寒さに耐えしのぐ…という辛そうなイメージがありますが、こうやって習慣を見てみると、寒さに耐えつつも、暖かな日に向かって前向きに楽しんでいるような気がします。
もうすぐ“冬の終わり”が見えてきそうです。
Rti 台湾国際放送
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