先日、台湾南部の街・嘉義で1本の映画のプレミア試写会が行われました。その映画とは、「完全なる飼育」シリーズの第9作「完全なる飼育étude」─。先週末(11/27)に日本で公開されたばかりの新しい映画です。
なぜ日本の映画のプレミア試写会が、日本の公開よりも前に、台湾で、しかも台北などの大都市ではなく、嘉義という地方都市で行われたのでしょうか。
実は、「完全なる飼育」シリーズ7年ぶりの新作となる今作は、全編台湾で、しかもそのうち95%ものシーンが嘉義県大林鎮にある「萬國戲院」で行われたからなんです。
…とはいっても、実は最初からロケ地が嘉義だったわけではありませんでした。当初は日本のどこかの町で撮影予定だったのですが、クランクイン3日前に予定していたロケ地の劇場が撮影不可となり、製作中もしくは延期…という状況になってしまったそうです。そんなときに候補に挙がり、撮影を承諾してくれたのが「萬國戲院」だったんです。
この映画「完全なる飼育」は、1999年に第1作が公開され、今に続く映画シリーズ─。1965年に起きた実在の誘拐事件「女子高生籠の鳥事件」を基に書かれたノンフィクション作家・松田美智子の小説「女子高校生誘拐飼育事件」を原作に、1999年に和田勉・監督&新藤兼人・脚本で生み出された作品です。その第1作以降も、孤独な少女と中年男の歪んだ純愛を描き、この「完全なる飼育」シリーズは、日本国内だけでなく、香港や韓国、タイをはじめ世界各地で公開され話題を呼んできました。
この第9作「完全なる飼育étude」は、これまでのシリーズ作品とは異なり、女性が青年を「飼育」するという逆転のシチュエーション。実力ある舞台演出家と若手俳優が織りなす“稽古”という名の「飼育」が描かれています。
舞台という場所で物語が展開することから、そのロケ地となる場所の世界観がストーリーにもとても重要になります。そんなロケ地となった「萬國戲院」は1968に年に嘉義県大林鎮に建てられた映画館。当時は多くの観客でにぎわっていましたが、町の産業の衰退と共に来場者が減り、1988年に閉館しました。しかし、元々職業軍人で嘉義の大林で生まれ育った江明赫さんが、思い入れのあるこの場所を歴史を伝える拠点として生まれ変わらせ2012年に復活、2018年には県の歴史的建築物に指定されました。
そんな歴史ある建物での撮影に、オーナーの江さんは、ここは一時廃墟だった時期もあるので、このように撮影隊が来るようになって活気づくのが嬉しいと語っていました。
そして、「撮影が中止になるかもしれないというところを救ってもらった」と、このたび、映画の公開前にこの「萬國戲院」で感謝のプレミア試写会が行われ、日本から“オンライン舞台挨拶”も行われました。
上映後、監督とのパネルディスカッションでは台湾の人たちからの質問もどんどん飛び出し、さらにはこの日、会場に来ていた嘉義県の翁章梁・県長(県知事)もマイクを取り、「嘉義県をロケ地に選んでくださってありがとうございました。今度こちらに来るときにはぜひ案内させてください!」と呼びかけ会場を大いに沸かせていました。
撮影隊もわずかな滞在の中で触れた嘉義の人たちの温かさにすっかり虜になったようで、「完全なる飼育étude」の公式Facebookページには、映画のメイキングに関する話題や告知の他に、「台湾ガイド」というハッシュタグ付きで撮影の合間に訪れた近所のお店や廟なども紹介されています。
また、メイキング映像の中で、竹中直人さんが「いつの時代なのかわからない、別空間。今であって今でない。不思議な映像が撮れていると思う」とコメントしていますが、そんな独特の雰囲気は「萬國戲院」だからこそ、嘉義だからこそ、出せたのかもしれません。
今回、嘉義がロケ地になったことで、台湾の人もこの「完全なる飼育étude」に興味を持ち、日本の人もこのロケ地や撮影中に撮影隊が訪れた場所やお店に興味を持つというきっかけになっているようです。
Rti 台湾国際放送
Rti 台湾国際放送 
