新型コロナウイルスの感染拡大により、各国間の往来がほぼストップし、各国で、インバウンドに力を入れていた観光産業、外食産業への影響が顕著となっています。日本の観光庁の「GOTOトラベル」キャンペーンについては、様々な見方があり、議論もおきているようですが、これもまた旅行需要の換気を図ることが目的の事業ですよね。
台湾においても、1月末に初めての感染者が確認されて以来、内需の冷え込みが目立ちましたが、政府、関連部署による先手先手、かつ思い切った対策により、感染拡大を抑え込みました。
そして、中華民国政府は4月末、防疫対策を維持しながら市民の屋外活動を緩和、国内での新規感染者ゼロが続くなか、5月下旬には中央感染症指揮センターの陳時中・指揮官が国内各地の景勝地を訪問、さらに6月7日には、国内旅行の解禁制限を出しました。
海外旅行ができない中、特に離島や東部、南部などの景勝地には多くの人々が押しかけ、台湾では今、空前の国内旅行ブームとなっています。国際線のLCC、タイガーエア台湾が、離島、澎湖へのフライトをスタートしたことも象徴的な事柄といえます。
さらに、 政府により7月1日から「安心旅行」プロジェクトという宿泊費を補助するプロジェクト、そして15日からは消費刺激の為の振興券「振興三倍券」がスタート、夏休みも始まり、追い風となっています。
新型コロナウイルスで苦境に立たされていた観光産業が、国内旅行ブームによって潤うことは素晴らしいことですが、課題がないわけでもありません。
昨年2019年の1年、中華民国台湾から海外へ出掛けた人は過去最高の延べ1710万人でした。国・地域別では日本が491万人でトップ、中国大陸が404万人でこれに続きました。1710万人という数、台湾の人口はおよそ2360万人ですので単純に計算しますと、赤ちゃんからお年寄りまで台湾の全人口のおよそ72%の人が、昨年一年間の間に海外に渡航したこととなります。各国へ出張していたビジネスパーソン、海外旅行好きで年間複数回渡航していた人がいることを考えても、この割合の高さはすごいですよね。ある統計によりますと、昨年海外旅行に出掛けた人は、全体の47.2%でした。つまり、およそ半分です。海外旅行は台湾の人々にとって、非常に身近なレジャーであることが伺えますよね。
しかしながら、ご存知の通り、新型コロナウイルスの影響により、3月下旬以降、台湾から海外への渡航は不可能な状況となっています。ここにきて、一部の国・地域が、低リスク国の観光客受け入れを打ち出してきていますが、まだ大きな動きにはなっていません。こうした中、冒頭でもご説明した通り、政府による国内旅行の為の補助、振興券の配布、そして夏休みを迎えたこともあり、国内旅行は「爆発」と例えられるブームとなっています。大手旅行代理店によりますと、飛行機に乗って異国気分を感じられる離島や、熱気球のイベントがある南東部の台東などでは、申込み数が昨年の4倍にも達しているということです。
台湾の人々の夏休みの国内旅行、政府の取り組みに対する評価をみてみましょう。まずは人気の目的地です。統計によりますと、この夏休みの目的地として最も人気なのは、タロコなどの景勝地があり、アミ族など台湾原住民族の人が多く暮らす東部の花蓮県で37.8%でした。そして北東部の宜蘭県が33.2%、そして先程もご紹介した南東部、台東県が31.9%で続いています。台湾島の東半分、山と海、風光明媚で自然豊かなエリアが特に人気なんですね。
そして、4位はグルメや伝統ある町並みで知られる南部の台南市で27.7%、5位は中部、台中市で24.8%でした。ちなみに全体の86.1%の人は個人旅行を計画しており、団体ツアーに参加するという人は10.2%でした。
さきほど、離島と台東県で旅行代理店の申し込みが4倍とご紹介しましたが、これは元々のツアーの企画数が少なかったのかもしれません。
日程については、53.8%の人たちは3日以内の日程を考えており、このうち二泊三日が38.8%、一泊二日が12.1%でした。そして予算については全体の53.8%の人は台湾元10000万元(日本円にしておよそ3万6430円)以下と答えました。
そして、政府による宿泊費を補助するプロジェクト、「安心旅行」プロジェクトへの評価は、「旅に出る意欲が高まった」という人が88.9%、「経済的負担が減る」が89.1%、そして「国内旅行の成長、そして国内観光産業へプラスとなる」と答えた人が92.3%に達するなど、いずれも非常に高い評価となっています。
日本とはおかれた状況が違うので安易に比較はできませんが、こうした政府の政策に対する高い評価は、新型コロナウイルスの国内感染が封じ込められているということが大きそうです。
さて、このように国内旅行が盛り上がり、苦境に立たされていた台湾の観光産業に活力を与えていますが、それで全てが解決するほど問題は簡単ではありません。
冒頭でもご紹介した通り、昨年まで、台湾からは海外へ年間延べ1700万人赴き、そして海外からは、年間延べ1000万人の人達が台湾を訪れていました。このアウトバウンド、インバウンドの穴は埋まっていません。政府はこうした旅行代理店に対しても補助を行っていく方針ですが、台湾内の4000もの代理店がどれだけ生き残っていけるはわかりません。
インバウンドを専門に扱ってきた旅行代理店、ホテルは、鎖国状態の今、モデルチェンジを余儀なくされています。リストラや減給で危機をしのごうとする業者もある中、これまで日本人旅行客を受け入れてきた業者は、そのきめ細やかなサービスを取り入れたり、ディープなコース設計など商品力、企画力で差別化を図ることで、生き残りをかけている業者もあります。
台湾観光戦略発展協会の呉昭輝・理事長は、旅行業界は、政府による過去3ヶ月の補助は特効薬となったと指摘、今後半年も救済していくことになるだろうとの見方を示した上で、重要な救済とは短期的な数ヶ月単位の救済ではなく、台湾が鎖国を解く前までの期間、モデルチェンジを果たすための救済だと指摘、向こう三年間で、台湾をアジアで人気の旅の目的地に変えられるか否か、政府は補助を行う際、この点についてしっかり検討すべきだ、と述べました。
危機は変革のチャンスという言葉があります。台湾の観光関連省庁、そして関係者は、国内旅行ブームの今こそ、長期的な視野をもち、ソフト、ハードのインフラ強化、魅力的なコース計画、台湾がさらに魅力的で良質な観光地へとなるべく、改革に乗り出して欲しいですね。
Rti 台湾国際放送
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